第四十四話
南部戦線でようやく戦局を優位に進めるソーンヒル公爵家であったが、まだアンデッドの戦列を突破するには至らない。
先行させた偵察部隊からは、いまだに大軍が中央から溢れ出ているとの知らせがあり、騎士たちを苛立たせた。
オーガストにブライアン、コーディともに前線にあり、この無尽蔵の亡者を相手に激戦の中にある。
「それにしても、グラッドストンの兵隊は豊富だな! このくそったれが!」
オーガストはグールの頭部を破壊する。返す剣でゾンビの首を切り飛ばす。戦場は修羅場だ。
「全くだ。いつになったら亡者の戦列を突破できるんだ」
ブライアンも悪態をつきながら死人たちを葬り去っていく。
コーディは偵察からの知らせに信じ難い思いであった。
「中央からはまだ大軍が出てくるといいます。これが最後であることを祈るばかりですよ!」
言って、コーディはゾンビの首を刎ね飛ばした。
「一体どうなってる。本当に敵の戦力は無限なのか?」
オーガストはブライアンとコーディのもとへ駒を寄せた。
「分かりません。しかし、これがグラッドストンの仕業であることは確かです」
ブライアンは言ってゾンビの頭部を叩き潰す。
「それにしたって、これは全て中央の民なのでしょう? そう考えれば、いつかは終わりが来るはずです」
コーディは飛び掛かってくるグールの首を切り落とした。グールの頭は軍馬に踏み潰された。
「だといいがな!」
オーガストはゾンビの頭部を破壊する。
「フフフフフ……お前たちは終わりだ! 終わりなんだよ! 我々を本気で倒せると思うのか? 馬鹿めが!」
哄笑を上げるゾンビの頭を軍馬で踏み潰す。
「人間の言葉を話すところがまた胸糞悪い。亡者が!」
それから中央を包囲した人類とアンデッドとの戦いは一週間に及んだ。そして、遂にアンデッドの増援が止まり、連合軍はライアンウォードへ向かって包囲の輪を詰めながら前進することが出来た。四人の公爵は連絡を取り合い、それぞれにライアンウォードで合流することを確認する。
リオンはローザと話していた。
(ローザ、ザカリーは?)
(相変わらずね。ずっと玉座の間から動かないわ。そうだ。ライアンウォードにはもう誰もいないわよ。本当に、人っ子一人残っていないわ)
(よし分かった)
リオンはエイブラハムにローザンフェインの言葉を伝える。この公爵は頷くと、言った。
「いよいよお前の力が必要になるぞ。リオン。我が子よ」
「はい」




