第四十二話
三月二十日。四大公爵連合軍は、ザカリー・グラッドストン討伐の軍、総勢二百万を以て中央に向けて四方から攻め込んだ。
それに呼応して、不死の軍団が動き出した。中央から迎撃に出てきたアンデッドの大軍は、連合軍の予想をはるかに上回る数で押し寄せてきた。
そして兵站部が築いた後方の連絡線では予期せぬ事態が起こっていた。セイセス・セイセスの集団が補給ラインに襲い掛かり、これを脅かさんとしたのだ。
連合軍は予備兵力からこの後方の混乱を鎮圧すべくそれぞれ十万規模の部隊を差し向ける。
前方からは不死の軍団が迫りくる。
南部戦線。
オーガストは騎士団とともにあって、迫りくるアンデッドと交戦に入っていた。アンデッドの群れはアクロバットに飛び交い、騎士たちを混乱させた。
「怯むな! 奴らの頭を叩き潰せ!」
騎士団長ガーランドの怒声が飛ぶ。騎士たちは奮戦するも、徐々に押されていく。
ブライアン、コーディともに激戦の中にあって、アンデッドたちを相手にしていた。
「お前たちは死ぬのだ! 全てはザカリー様のために!」
「邪悪なるものが大層な口をききやがって!」
ブライアンはグールの首を刎ね飛ばした。
コーディも激闘し、死人を何体も切り捨てていく。
「公子様に続け! アンデッドの進撃を許すな!」
騎士たちはまた盛り返し、アンデッドを押し返す。しかしそれも一進一退。
不死の軍勢は予想以上に頑健であった。のろまなゾンビの群れとは違った。さらに知性を有し人語を放す。騎士たちの部隊を各所で寸断し、公爵軍は苦戦を強いられた。
それでも、戦線を立て直した騎士たちは今度は逆襲に出る。徐々にではあるが、騎士たちは各個撃破によって死人の群れを駆逐し始めた。
西部戦線では。
クリストファーは騎士隊長のエイベルや団長エリオットらと陣頭に立っていた。
止むことなき強力な死人の群れは騎士たちを怯えさせたが、彼らの勇気が勝った。
クリストファーは更に前進し死人の頭部を撃砕する。
「貴様らに大陸は渡さぬ!」
しかし死人は笑った。
「無駄なことだ人間よ! あのお方に人間が勝てるはずがないのだ!」
「グラッドストンのことなら見込み違いだな! 奴は死ぬ!」
「馬鹿め!」
死人は踊りかかってきた。クリストファーはその首を刎ね飛ばした。
「貴様らに何が分かる!」
クリストファーは剣の血を払った。
「公子様! 前に出すぎです! 後退を!」
エイベルがやってきて、死人を切り捨てる。
「すまん! やつらの挑発に乗ってしまった!」
「人語を解しますからな。気味の悪い連中です」
エイベルとクリストファーは後退する。
エリオットがそこへ合流する。
「公子様! ご無事でしたか!」
「すまん!」
クリストファーは言った。
「何の! まだまだですぞ! 奴ら、害虫のごとく湧いてくる!」
エリオットも死人の頭部を破壊する。
クリストファーは立て続けに二体の死人を殺す。
フリートウッド家の騎士たちは果敢に死人の群れに相対する。徹底して頭部を狙い、死人たちの前進を許さない。
「くそっ、一体どれだけの数がいるというのだ。中央の民全員と言っていたな」
クリストファーはエイベルと駒を並べて毒づいた。
「とんでもない数です。かつての王都には百万単位の人がおり、中央全体には何百万という民がいましたからな」
エイベルは言いつつ死人の頭部を切り捨てた。
「畜生、これではライアンウォードに到達するまでに味方は消耗するぞ」
「公子様、我々もこの日のために備えはしてきました。とは言え、敵は予想外のタフさですが」
「全くな!」クリストファーは言って飛び掛かて来た死人の頭部を破壊する。「ゾンビどもが。人間の言葉を話すかと思うと反吐が出る」
クリストファーは苛立たし気に言って、次なる死人を切り捨てる。
西部でも人類は善戦していた。死人の群れを次々と刈り取っていき、前進する。しかしいつ終わるとも知れぬ死人らの群れに恐怖を覚える騎士もいた。それでも、勇戦するしかないのだ。フリートウッド家の騎士たちはそれぞれに勇気を出して結束し、密集する死人の大軍を削り取っていく。
クリストファーは陣頭に立って騎士たちを鼓舞する。
「騎士たちよ! 今こそ我らの名誉を発揮する時だ! 死人は冥府に返してやろう!
奴らに後れを取るなよ! 本当の敵は己の中にある! 恐怖を恐れるな! 我々は必ず勝つ!」
「おお!」
騎士たちは奮い立って、勇気、果敢、闘志を総動員してこの戦に立ち向かう。




