第四十話
「剣が話す?」
エイブラハムはリオンの言葉を聞いて、信じられない様子だった。
「本当なんです父上。ローザは、ローザンフェインは、確かに生きているのです。生きているという言葉が適切がどうか分かりませんが」
「ふうむ……。だが、お前のあの力を見た後だ。説得力はあるな。そいつは味方なんだな?」
「ええ。グラッドストンを倒すのにやる気満々です」
「そいつは頼もしい」
エイブラハムは肩をすくめた。
「そのことを誰かに話してみたくて。ではこれで失礼します」
「ああ。今日はもう休め」
「そうですね」
リオンはそれからお風呂に入った。そして自分に充てられた部屋に入ると、ローザンフェインをベッドの横に立て、ベッドに潜り込んだ。
(おやすみローザ)
ローザンフェインの意識はどこかへ行ってしまったのか、返事はなかった。
翌朝、一同は朝食を共にした。救出された婦人たちの表情は心なしか明るかった。
リオンは、昨晩エイブラハムに話したことを全員に聞かせた。
「そいつは……」エヴァンが言った。「ほんとに俺たちの味方なのか?」
「信じるしかないだろう」クリストファーが応じる。「謎の異界人からのギフトとは言え、アンデッドバスターはグラッドストンとの戦いの切り札だ」
「そうだな」ヴィクターも言った。「この戦況を左右するのはかつてグラッドストンの封印に手を貸した神々ではない。俺たち自身の手でグラッドストンを倒すしかない」
「何にしても、神出鬼没のグラッドストンをどうして捕らえるか、だが」
ブライアンの言葉に、コーディが応じる。
「ヒュレイガンが言っていた、中央は既にアンデッド化していると。中央を総攻撃すれば自ずと奴とぶつかることになりましょう」
「我々の総兵力は二百万だ。いかにアンデッドとは言え、これに対抗できるとは思えんがな」
ベネディクトが言うと、エイブラハムが応じた。
「まさにその通りだ。アンデッドは問題ではない。死人の化け物は兵士たちでも対処できる」
「やはりグラッドストンとの一戦に全てが掛かっている」
セオドリックが言うと、ヴァイオレット夫人が口を開いた。
「とは言え、未知数なのは確かよ。アンデッドといってもピンキリでしょう。強力な個体がいるかも知れない。まあ……私などが言うことではないかしら」
「いやヴァイオレット、君の言葉は正しい。油断は出来んよ。中央が今やグラッドストンの本拠地と化しているならば」
応じたのはエイブラハムであった。
それから連日にわたって、一同は中央への攻撃作戦の日程を確認した。攻撃はおよそ二か月後、三月二十日と定められた。それまでの間、中央を監視し、敵の動きに注視すること、敵に動きあらば直ちに情報共有すること、敵が攻勢に出てきた場合速やかに迎撃に出ることなどが盛り込まれた。
「では二か月後、みんな、武運を」
ヴァイオレット夫人が皆を見送った。
「では戦場で会おう」
ほかの公爵たちもそれぞれに挨拶を交わして、一同帰路に就く。
一方、ザカリー・グラッドストンは暴れ回っていた。ウィリアムズ家の屋敷のあちこちに波動を打ち込んで破壊しまくっていた。
「畜生! 畜生! 畜生があああああ!」
グラッドストンは花瓶に波動を打ち込んだ。花瓶は粉々に砕け散った。
「あの野郎……リオン・ウィリアムズ……まさかアンデッドバスターを……一体どうやって……なぜだ? なぜあんな小僧にあんなパワーが……おのれえええええええ!」
グラッドストンは屋根を突き破って上空に舞い上がると、雄たけびを上げて波動を打ち込んだ。大爆発が起こって、邸は崩壊した。
「殺してやる……殺してやるぞ……リオン・ウィリアムズ! 小僧っこが。俺を舐めやがって! その報いは受けさせる! このザカリー・グラッドストンの恐ろしさをとくと味わうがいい!」
グラッドストンは高笑いを発した。自分が敗北するはずがない。グラッドストンには絶対の自信があった。なぜなら、ザカリーは人間を捨てた闇の世界の住人であり、人間などに己を倒すことなど不可能だと確信していたのだ。




