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第二十七話

 西方フリートウッド家においては、宮廷に住まうクリストファーとブリジットの双子、アルフレッドとアレクシアが単語を発するまでに成長していた。パパ、ママ、好きと言った言葉を聞くと、クリストファーもブリジットも喜んで双子を抱き寄せた。


 そんなところへ、ベネディクトからの招集命令が届いた。


「ブリジット、戦だ。行かないと」


「あなた、無事に帰ってきて」


「ああ、もちろんだ」


 クリストファーはブリジットを抱き寄せるとキスを交わした。


 それからクリストファーは招集に応じて会議室に入った。すでに諸将も居並んでいる。


 ベネディクトは程なくして入室してくると、上座に立った。一同立ち上がり敬礼をする。ベネディクトが頷いて席に着くと諸将もそれに倣った。


「いよいよ西方最後の大戦になる。スネリングは軍備を増強しているようだ。敵の総数は二十万を越えよう」


 微かに諸将がざわめく。


「だが我が軍はその倍以上の戦力を有する。私は全軍を以てスネリングを叩くつもりだ。もはや兵力を温存しておく必要はない」


 一同頷き、出陣の命令を待つばかりであった。


「アーロン、アーサーズ、ピカリング、エリオット、ランサム、マクロフリン、ダンヴァーズ、キャロウ、キンバリー、ロウ、卿らは前線にあって指揮を取れ。配置は敵の布陣を見て決めよう。みな出兵の支度を急げ。冬の前に勝負をつけねばならん。では解散とする。出陣!」


「ははっ」


 一同慌ただしく歩き去って行った。


 クリストファーはベネディクトに歩み寄った。


「父上」


「うむ? どうした」


「これで西部は我らが手にしたも同様ですな」


「最後まで何があるか分からんぞ」


「はい。子供たちのためにも、死ぬわけにはいかないのです」


「もう言葉を話すそうだな。愛おしくて仕方なかろう」


「いや……まあ」


 クリストファーは笑った。


「死ぬなよ、我が息子よ」


「はい父上」


 クリストファーはそうして自身も出兵の支度に取り掛かった。

 スネリング侯爵軍は各地の貴族たちが合流しながら兵を増していき、二十万余の軍勢に至っていた。


 対するフリートウッド軍は五十万を越える大部隊であった。


 両軍はレガッドバレイ平原にて布陣した。敵軍は中央を厚く、両翼にもそれぞれ部隊が展開していた。


 ベネディクトはそれを見て諸将に鞍上から指示を出した。


「アーロン、アーサーズ、ピカリング、卿らは敵左翼を抑えよ。エリオット、ランサム、マクロフリン、卿らは敵右翼に当たれ。ダンヴァーズ、キャロウ、キンバリー、ロウ、卿らは私とともに敵中央を突破する。西部最後の戦だ! みなの者! 勝利は目の前だ! 行くぞ! 掛かれ!」


 フリートウッド軍から雄たけびが上がり、全軍が動き出す。


 対するスネリング侯爵軍も整然と動きだした。


 両軍ともに譲る構えを見せず、レガッドバレイにおいて激突する。


 クリストファーは最初の一撃で敵騎士の首を刎ね飛ばした。続く敵騎士も十合ほど打ち合って叩き伏せる。しかし、スネリング軍の勢いはこれまでの敵とは比較にならぬほど強く、クリストファーも突破できずにいた。周囲も一進一退。


 一時間ほどして戦線が膠着し、ベネディクトは両翼の部下たちに伝令を出し、敵陣の側面から側背へ兵力を展開し、包囲の構えを見せるように指示を送った。


 これは一定の効果を発揮し、味方の遊兵を敵の背後に回り込ませた。側面と背後を突かれてスネリング軍の陣が乱れたところを、ベネディクトは正面の敵軍の中心に兵を集中させ、一挙に突破を図った。


 クリストファーはまさにその最前線にいた。前後から挟撃される形となったスネリング軍は隊列を乱し混乱し始める。そこでさらにベネディクトは中央に密集隊形で突進した。これによってスネリング軍の中央は崩壊し、フリートウッド軍は中央を突破した。ベネディクトは自軍に伝令を送り、これよりスネリング軍を包囲するとともに、降伏勧告を適時行うように指示した。


 そこでもう一度スネリング軍は態勢の立て直しを図るが、フリートウッド軍の容赦ない攻撃が続き、それは容易なことではなかった。


 そこでさらにフリートウッド軍から降伏勧告が何度となく出され、実際に降伏する騎士たちも続出した。これではもはや戦にならぬ。


 フリートウッド軍は包囲の輪を崩さず、スネリング軍の動向を見守っていた。包囲の輪を崩さんとするスネリング軍の騎士は容赦なく切り捨てられた。


 それから数時間が経過し、両軍は包囲するフリートウッド軍、身動きの取れないスネリング軍となって戦線は膠着した。


 そして、やがて戦意を喪失したスネリング軍から、ロイド・スネリング侯爵その人が白旗を掲げて姿を現した。


 ベネディクトは前に出ると、剣を鞘に納めた。スネリング侯爵は言った。


「ベネディクト、どうやら勝敗は決したようだ。貴殿らの降伏勧告を受け入れようと思う」


「ロイド、決心したか」


「ああ。致し方あるまい。軍神は我々を見放したようだ」


「よろしい、戦はこれにて終結だ。ダンヴァーズ、全軍に触れを出せ」


「はっ」


 ダンヴァーズ伯爵は部下たちに命じて戦の終結を全部隊に送った。


 ベネディクトはスネリング侯爵に言った。


「では正式に汝らの降伏を受けれよう。ロイド、卿の都まで案内してもらおう。そこで正式に合意文書を交わすとしよう」


「承知した」


 そうして、スネリング侯爵も友軍を後退させる。侯爵はフリートウッド軍を自身の都まで案内した。


 民は不安そうであったが、そんな中、ベネディクトと諸将は宮廷に通された。そこで正式に調印が為され、民にも布告が出された。


 スネリング侯爵の領土は安堵されたが、フリートウッド家の一員として忠誠を誓うことになる。侯爵の家臣たちは改めてフリートウッド家に登用されることとなり、ほとんどの者は現地に再任となった。スネリング侯爵や一部伯爵らはファレンイストへの転属を命じられ、フリートウッド家の中枢を担うことになる。


 かくして西方の覇者はフリートウッド家となった。



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