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第二十二話

 フリートウッド家のクリストファーは、今日も騎士団本部にあって剣の稽古に精を出していた。相手は天剣のエイベルである。この数年でクリストファーは実戦も経験しかなり鍛え上げられた。エイベルと互角に打ち合うまでに成長しており、これには天剣の騎士も驚嘆していた。


 エイベルの流れるような動きに合わせて、クリストファーも流れる。そして静から動への変化。クリストファーは加速して打ち込んだ。エイベルはそれを回避し、三連突きを繰り出す。クリストファーはバックステップでかわしながらエイベルの剣を弾き返した。反撃に転じたクリストファーは鋭い突きを見舞う。それを回避するエイベル。と、クリストファーの剣が宙を叩いてエイベルを追跡した。エイベルはそれを受け止める。


「若様。大したものですな。私とここまで渡りえるとは……驚きです」


「俺もお前のおかげで強くなれたのだ。エイベル、お前に感謝せねばな」


 そこへ使者がやってきた。ベネディクトからの伝令である。軍議を行うので至急宮廷に出仕せよとのことであった。


「戦か……いよいよだな」


 クリストファーは武者震いした。

 ベネディクトは一同が集まるのを待って、全員が揃うと言った。


「ウィリアムズ家がブロドリック侯爵を屈服させた。今年は我々にとっても大きな戦を覚悟せねばならん。この西方にも二つの侯爵が勢力を保っている。知っていよう。一人はベイリアル侯爵。もう一人はスネリング侯爵だ。いずれを討つかはもう明らかだ。ベイリアルは騎士団十万余。スネリングは十五万を越えよう。兵だけではない。人材を見ても、我々はまずベイリアルを叩く。みなも異論はないな」


 沈黙が答えであった。諸将は頷き、ベネディクトの言葉に従う。


「ではアーロン、アーサーズ、ピカリング、エリオット、ランサム、マクロフリン、卿らは私とともに戦場にあれ。残った者はスネリングの動きに警戒し、いざという時は本土を防衛せよ。ではよいか。みな出兵の準備に取り掛かれ」


「ははっ」


 かくしてフリートウッド家はベイリアル家に攻撃を開始する。その兵力は二十万に達した。

 ベイリアル侯爵軍は都を進発し、それはフリートウッド軍の騎兵スクリーニングに探知されることとなる。


 両軍はビリンウェル平原に展開し、その時を待っていた。


 クリストファーはエイベルとともにエリオットの部隊にあった。


 ベネディクトは全軍の前に出ると、剣を高らかに突き出した。


「恐れることはない! 汝らの力を以てすればベイリアルの手勢など物の数ではない! 一息に蹂躙して蹴散らすまでだ! アーロン! アーサーズ! 右翼にあって敵の側面を突け! ピカリング! ランサム! 左翼にあって同じく敵の右翼を突け! 残るは敵の中央を正面から粉砕する!」


「ははっ」


 指揮官たちが持ち場に付く。


「軍神の加護があらんことを! 行くぞ! 全軍突撃! 我に続け!」


 戦の角笛が鳴り、フリートウッド軍が前進を開始する。徐々に加速していく。人馬の大部隊がベイリアル軍を恐れさせた。フリートウッド軍は半包囲隊形でベイリアル軍に突撃する。ベイリアル軍は密集して防御を固める。


「愚かな! 打って出ぬとはそれは失態よ!」


 クリストファーは言って突撃した。


 そしてフリートウッド軍の騎兵突撃がベイリアル軍に襲い掛かる。


 激突。


 最初の衝撃でベイリアル軍の密集隊形は易々と打ち砕かれた。そもそもベイリアル軍はフリートウッド軍に対する恐怖から前に出ることが出来ず、密集してしまった。これは騎兵の機動力を殺す最悪な選択であった。


 フリートウッド軍は勢いのまま突き進み、ベイリアル軍を蹂躙していった。 


 クリストファーは敵騎士を十人近く殺していた。


 勝敗は呆気なく決まった。わずか一時間ほどでベイリアル軍は総崩れとなり、フリートウッド軍によって包囲された。


 ベネディクトは敵の前に出ると、言った。


「ベイリアル侯爵! 生きているならば出てくるがよい! 私はベネディクト・フリートウッド! 汝らに降伏を勧告する!」


 ややあって、敵軍を割って、豪奢な装備を身に着けた人物が現れた。


「ベネディクト」その人物は言った。「降伏を受け入れよう」


「チェスター、久しいな。だが今回は相手が悪かったようだな」


 ベネディクトは侯爵のファーストネームを呼んだ。


「全くだ」ベイリアル侯爵は肩をすくめた。「兵力も、騎士の練度も、何もかもが負けていた。どうやってそれだけの兵を」


「よし、チェスター、お前には我が軍の麾下に入ってもらう。領地は安堵しよう。部下にも寛大な処遇を約束する」


「承知した。公爵閣下にこの身をお預け致します」


「よろしい。では戦はこれまでだ。皆の者、ファレンイストへ凱旋帰還するぞ!」


 フリートウッド軍から歓声が沸き起こる。実に予想を超える大勝であった。

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