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序章

 聖暦一二八五年、アラドメキア大陸は動乱の中にあった。


 衰退の兆し著しいエッカート朝の先王が崩御してこの方、王位は一年もの間空位であり、王朝は要石を失って崩壊寸前であった。それと言うのも、三人の王子が己こそが次期国王に相応しいと主張し、王座を争って譲らなかったためである。先王は王国を三分割して王子たちで分け合うように遺言を残していたが、彼らには父の言葉を守るつもりはさらさらなかったのである。王子たちは最高法院に王の遺言は無効であると提訴し、判事連もそれを認めてしまった。この権力闘争に判事連までもが結託してパワーゲームのプレイヤー気取りであって、政争に首を突っ込む有様であった。貴族たちは言わずもがな、三人の王子の後ろ盾となって宮廷において政争はますます混乱していった。地方では小競り合いが頻発し、市井の人々にとってはいい迷惑であった。混乱によって治安は悪化し、無法者たちが町や村に襲い掛かって略奪横行が放置されていた。そしてこの混乱は最悪の事態へと発展することになる。三人の王子が相次いで不審死を遂げたのだ。エッカート朝の血は断絶し、ますます情勢は収集がつかぬ有様であった。宮廷貴族から市井の人々まで、これには大貴族が背後で糸を引いていて、王子らは暗殺されたのだと誰もがまことしやかに噂し合った。かくして、大陸は次代の王座を巡って貴族たちが争うことになる。宮廷貴族たちも己の領土に戻っては万事いつでも戦闘状態に入れるように軍備を整え始めた。王都ライアンウォードからは貴族たちの姿は消え、かつては連日のように開かれていた夜会も音沙汰なく、都は静かで寂しくなった。しかし何れにしても、戦乱の足音は確実に近づいていた。ハンマーで打たれる灼熱色の剣の音とともに。

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