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私が詩織についての小説を書き始めたのは人間関係に疲れ始めてた時。バスケ部を怪我で行かなくなってしまって、折角でき始めていた友達とも疎遠になってしまって。だからといって遊んだりするグループに加われるほど要領の良い感じでもなく。何となく空いた時間でネット小説の投稿サイトを閲覧していたら、自分でも書きたくなってしまったのだ。
正直、詩織には自分の理想というか願望入っているところがあって。こんな女の子になれたらいいなというかこんな子と知り合いになれたらいいなというか。優しくてほのぼのしていて、だからちょっと頼りない女の子って感じもあるけど。そこは姉である主人公がしっかりしていて詩織を支えてあげるっていうそんな居心地の良くて温かな小説になる予定だった。あいつが現れるまでは。
詩織が高校に入学してしばらく経った頃から急に隠し事めいた態度というかよそよそしいそわそわした態度をとるようになり始めて。姉妹間の会話の中にも、男の子って、とか、こういう時男の子だったら、とか耳にしたくないような単語が割り込んでくるようになったのだ。
誤解しないで欲しいのだが、私は特段男子が嫌いというか苦手というわけではなく、異性特有の分かり合えなさというかそれはちょっとどうなのみたいな気持ちにならないわけでもないが、基本的に話したりはできるしライトな一ファンとして男性アイドルや役者さん、漫画・アニメなどを楽しんだりすることもある。しかし詩織は違ったはずなのだ。昔、可愛いが故に意地悪されていた経験から、詩織は男子が結構苦手なはずだったのに。そんな詩織から事もあろうに、男子の生態に関する学術的な意見表明を姉に求めてくるであろうような展開を私は全く予想していなかった。
何度姉からからかいまじりに確認されても詩織は絶対に口を割らなかった。単に興味があっただけ、ちょっと聞いてみたかっただけ。そこが可愛いんだけど。そんな可愛い詩織の心を何処の馬の骨ともしれない生物学的男性が占めているのかもしれないと思うと私は嫉妬で気が狂いそうだった。あるいは詩織は本当に、単に興味があっただけ、ちょっと聞いてみたかっただけなのかもしれない。それか男性アイドルや漫画のキャラクターに気になるタイプでもいたのかもしれない。私はそう思い込むことにして、でもそう思い切れるわけもなくて、そんなある日偶然にも謎を解く鍵のようなものを手に入れてしまったのだった。