中巻あらすじ ~天の果て~ ☆
彼女が少女に戻るとき〜大鷲の雛たち
大雨の後、都会は晴れ渡った。
改めて一致団結した誠次たちは、新崎が治める特殊魔法治安維持組織を打倒する為に、準備を行う事になる。
志藤颯介、星野一希には、それぞれ年上の女性に対して、自身の思いと信念を語る。
誠次にも、自身の魔剣レヴァテインに付加魔法を与える一つ上の先輩にして、ヴィザリウス魔法学園の生徒会長、波沢香織の存在があった。生徒会書記を務める火村の助言もあり、今後の事について、年上の先輩ならではの当然の悩みと不安を、香織は誠次には打ち明けるのであった。
打倒特殊魔法治安維持組織の為、誠次たちは新たなレジスタンス組織、フレースヴェルクを設立する。主な構成員は、本城直正が支援していた旧レジスタンスと、元特殊魔法治安維持組織メンバー。そして、天瀬誠次、志藤颯介、帳悠平、夕島聡也、小野寺真からなる、ヴィザリウス魔法学園の学生組メンバーであった。
未だ魔法戦に不安が残る学生組に対しては、それぞれマンツーマンの形で、専属の魔法戦講師がつくことになり、特訓の日々が始まる。
リーダとして気勢を張る志藤を筆頭に、着々と力と覚悟を着けていくメンバーたち。誠次の元にも、かつて蛍島で戦った蛍火の女傑、篠上朱梨が特訓相手として、はるばるやってきていた。
白黒 天下の秋を知る〜鴉を墜つ鷲 特殊魔法治安維持組織解放戦
昨年は中止された二つの魔法学園による体育祭が、晴れて開催された。誠次たちフレースヴェルグのメンバーは、来たる決戦の日に備えながら、体育祭の練習もこなし、本番に臨む。
各々の奮闘もあり、ヴィザリウス魔法学園はアルゲイル魔法学園に勝利を収める。しかしその戦いにも、新崎率いる特殊魔法治安維持組織の魔の手は襲いかかり、誠次はかつて戦った戸賀彰と再戦することとなる。更には、ガブリール元魔法博士をも、新崎は弱みを握り、操つっていた。利用するものはどんなものでも利用し、遂には魔法学園への攻撃を開始し始めた新崎へ、フレースヴェルグのメンバーは一刻の猶予もないことを知るのであった。
そんな中、志藤颯介の父親であり、元特殊魔法治安維持組織長官、志藤康大が昏睡状態からの回復を果たす。真実を知る彼の復活により、フレースヴェルグは特殊魔法治安維持組織を取り戻す為の戦い、特殊魔法治安維持組織本部解放戦に挑む。
戦局は二転三転し、学生組の奮起と、星野一希の加勢もあり、遂に新崎を倒し、フレースヴェルグは特殊魔法治安維持組織を取り戻すことに成功するのであった。
砂漠の王子と電脳の貴公子〜ワンスアポンアタイム 〜雪降る古都で〜
魔法学園で迎える2回目の文化祭。誠次が所属する2―Aは、文化祭実行委員の本城千尋の提案で、ディナーショーを行うことになる。同じく実行委員となった誠次も準備に勤しんでいたところ、魔法学園の地下演習場に、中東の王国クーラムの王子を自称する、セリムと言う青年が現れる。セリムは千尋を貰うと誠次に決闘を挑むが、誠次はこれを退ける。しかし次にセリムの口から語られたのは、自分とクーラムを含め、魔法学園までもが国際魔法教会から狙われていると言う衝撃の事実であった。セリムの腹心であったアフマドが敵に寝返り、そして電脳の貴公子とも言われるEの攻撃に、セリムと誠次は力を合わせて立ち向かう。ヴィザリウス魔法学園の仲間や、Eと名乗るユジュンとネットの世界で親交があった水木チカの奮闘もあり、危機をどうにか乗り越えた。セリムとユジュン、そしてEとアクアは、また出会う約束を交し、それぞれのいるべき場所へと戻っていく。
アフマドから狙いは自身であると告げられた、誠次もまた――。
冬のホリデーシーズンに、修学旅行で古都、京都を訪れたヴィザリウス魔法学園の2学年生たち。その中には、来季で自身が受け持つクラスの為、前もって予行を兼ねた研修で、教師である向原琴音が同行していた。
問題もなく修学旅行初日を終えたと思った二日目、警察の刑事である武田と上杉がやって来て、向原と香月にデタラメな容疑がかけられている事を教えられる。二人の無罪を証明するため、誠次は京都の街で証拠集めを行う。その最終目的地、渡月橋を渡る先にある嵐山で、誠次は二人の騎士と相見える。スヴェンとロイナス。かつてあったとされる旧魔法世界の住民で、スルトの腹心の部下であったと言う。
過去からの来訪者に戸惑いながらも、協力し、出現した゛捕食者゛を討伐する誠次。しかしスヴェンとロイナスは、誠次に魔法の力を与える香月に激しい敵意を向ける。そんな香月と瓜二つの女性の存在や、判明した゛捕食者゛の正体。
それら全ての真相を明かすため、誠次は国際魔法教会本部へ向かうことを、香月に告げるのであった。
羊飼いの財布〜天微睡むギンヌンガガプ
一刻の猶予もない。相次いで明らかになりつつあるこの魔法世界の真実を明らかにするため、誠次は八ノ夜や朝霞、クリシュティナの反対も押し切って、国際魔法教会本部へ向かう。
そのために協力者となったのは、かつて幾度となく敵対し、分かち合うことはないと思われていた日本の首相、薺紗愛であった。
しかしその協力の条件として薺は、誠次にヴィザリウス魔法学園を自主退学するように迫る。世界の平和のため、守るべきもののため、誠次はヴィザリウス魔法学園を退学することを決意し、薺の元へ下る。その最中、生徒会の仲間を救うために行動していたかつての親友の志藤と、偶然にも雪の山の中で誠次は再会する。
誠次を連れ戻そうとする志藤は、魔法を使い、誠次と対峙する。誠次も志藤と戦うが、友を傷つける戦意を喪失し、志藤にその身を託す。
唯一の家族である、国際魔法教会の長官、ヴァレエフ・アレクサンドルに会いたい。そんな誠次の願いを聞いた志藤は、遂に彼に止めをさせず、誠次を国際魔法教会本部へと向かわすのであった。
マンハッタンに向かう航空機機内で誠次は、反国際魔法教会を掲げるハイジャックの現場に遭遇する。身分を明かすことの出来ない薺の忠告もあり、堪らえようとする誠次であったが、偶然にも乗り合わせていた国際魔法教会幹部のギルシュ・オーンスタインの暴走を前に、遂に戦う事を决意する。
ギルシュの部下とギルシュの暴走をどうにか喰い止めた誠次であったが、航空機はギルシュによって穴を開けられ、制御不能となってしまう。
薺の秘書である芹澤と協力し、どうにか機体を立て直し、滑走路に着陸させようとする誠次であったが、度重なった戦闘の影響かすでに身体は限界を迎えており、意識を失ってしまう。
最後の付加魔法〜エピローグ
意識を失っていた誠次は、国際魔法教会本部で目を覚ます。幹部であるマルコスから、航空機は結局墜落し、自分のみが奇跡的に生き残ったと告げられ、激しく動揺する。自身の身体も激しく損傷し、失意の中で誠次は、ようやくヴァレエフと再会する。しかし、そのヴァレエフは偽物であり、誠次は罠に嵌められ、誤解された国際魔法教会幹部たちから追われる身となってしまう。満身創痍の身ながら戦い、最後の家族を追い求め、辿り着いた楽園の果てで誠次を待っていたのは、磔にされたヴァレエフであった。
ヴァレエフを磔にし、影で国際魔法教会を操っていた、世界で初めて魔法をこの世で使ったヴィル・ローズヴェリー。彼と戦う誠次であったが、世界は夜になり、現れた゛捕食者゛に為す術なくヴァレエフを喰われかけてしまう。
゛捕食者゛に対抗するためにヴィルの誘いに乗った誠次は、9つ目であり、最後の付加魔法を使用する。
その直後、誠次の身体にスルトは復活し、誠次は意識のみの存在となりながら、ヴィル改めロキとスルトから語られる魔法世界の真実を知らされる。
レヴァテインの本来の能力、命を燃やし尽くす炎によって、ロキを倒したと思われたが、ロキの意識はすでにヴァレエフの身体に宿っていた。
今ロキを倒せばヴァレエフごと死ぬ。スルトはそれでも構わず止めを刺そうとするが、誠次が土壇場でスルトから身体の所有権を取り戻す。スルトの赤い炎とは対の、青い炎に身を焼かれながら誠次は最後の力を振り絞り、ロキが宿るヴァレエフの元へと向かう。
最後の最後で、ロキの意識が消滅したヴァレエフは、誠次にある願いを託し、誠次はそれを聞き受ける。
それは、誠次自身の手で、誠次の両親の育ての親の命を断つと言う、残酷な行為であった。
魔術師たちの王として、永きに渡る役目をようやく終えることが出来たヴァレエフは、最後に誠次に感謝と謝罪をして、誠次の青い炎によって焼かれた。
最後の家族をこの手で殺し、呆然と偽の天を見上げた誠次もまた、ヴァレエフを失った国際魔法教会幹部たちによって、処刑されたのであった。
日本の学生によるヴァレエフ殺害の知らせは、瞬く間に世界中に拡散される。偉大な魔術師の王を殺害した誠次の罪は重く、日本は国際的にも孤立してしまう。
同時に首相も失踪し、リーダーをも失った混乱状態の極東の島国を守るため(ただし裏の狙いは、国際魔法教会による支配力強化)、スカーレット率いる新体制の国際魔法教会が直接統治するために来日する。大勢の報道陣や、日本政府高官が見守る中、しかし。早朝の空港で、遂にその時は起こる。
夜にのみ出現していた゛捕食者゛が多数出現し、新たなリーダーであるスカーレットを、干渉しなかった構造物ごと捕食してしまう。
人間がこの世界に適応して知恵をつけていったように、彼らも進化したのだと、スカーレットの秘書、エドモンドは語る。
もはや人類に安息の場所も時間もない。新たな時代の幕開けは、そんな地獄の知らせから始まるのであった。