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魔法世界の剣術士 下  作者: 相會応
アウトバーンに影は奔る
10/22

「読書はいいものですよ。知識は広がり、心が落ち着きます。紙の媒体がやはり好きですね」

           みふゆ

 激動の新学期初日を終えた星野一希(ほしのかずき)は、昨夜の痛みを微かに残したまま、目を覚ます。寮室には戻っておらず、結局あの後も、生徒会室横の休憩室で、一晩を明かしたのだ。


((お早うございますご主人様))


 目覚めを待ってくれていたのか、赤いソファから上半身を起こした一希の頭の中で、ベイラとビュグヴィルの声が聞こえる。

 すなわちそれは、一希の魔素(マナ)が回復したことも、知らせてくれるものであった。


「おはようベイラ、ビュグヴィル。昨日は久し振りに魔素(マナ)を使い果たしたから、二人には心配をかけたね」


 あくびをしながら、一希が声をかける。


(見ていましたけど何ですかあの性悪女と腰巾着男!? 特にあの女の、まるで全てを見透かしているような態度が腹立ちます!)


 お目覚めはベイラの悪口から。それにももうすっかり慣れた形で、一希は微笑んでいた。


「でも、これでどうやら僕は許されたらしい。……なにも出来ていないのに、この学園を退学することは、出来ないから」

「ええその通りですよ、星野くん。貴方に退学は許されない」


 聞こえてきたその声にぎょっとしたのも束の間、アルゲイル魔法学園の生徒会長である城谷光冬(しろたにみふゆ)が、すぐ隣のソファに座っていた。


「おはよう、ございます……」

「おはようございます」


 城谷は朝の挨拶を満足そうに受けとると、席から立ち上がった。


「寝ていないのですか?」


 昨日の自分の記憶が正しければ、城谷は自分が眠るまでは起きており、そして今も、とても寝起きとは思えない清潔感と佇まいで、自身の部屋でもある生徒会室を歩いている。

一希からの質問に、城谷はどこか、得意気な表情をしてみせる。


「俗に言うショートスリーパーみたいなんです、私。短くて数分でも十分な睡眠です」

「羨ましいですね。人間は生きているうちの3分の1は睡眠時間だと言われていますから」


 時々夜ふかしをして、もっと起きていたいと思うことがあるが、城谷は大して良い顔はしていなかった。


「そうでしょうか。逆に言えば、幸せな夢を見ている時間が少なく、地獄のような現実リアルを人より多く見ていなければならないともとれますよ」


城谷はそう言いながら、自分の席である生徒会長机の座席に座る。そこで何をするのかと注視していると、なんと、読書をし始める。

 少々拍子抜けする一希であったが、城谷は手元の、昔ながらの紙の本のページを捲る。


「ところで星野くん」

「はい」

「貴男、朝食モーニングは作れますか?」

 

そんな事を聞かれ、一希はまたしても、小さく驚く。

これからの、もっと実用的な事をかれるのかとも思ったが、城谷の質問は、至って家庭的だ。


「ひ、一人暮らしをしていたので、簡単なものでしたら」

「ハムと卵はあります」

「は、はあ」


あくびも忘れ、ただの生返事をした一希を、城谷は目線で促す。

その紫色の視線の先には、扉一つで繋がっている休憩室と生徒会室の中には、キッチンや浴室など、寮室と変らない区画があった。


「睡眠はそこまで必要とはしませんが、私に食事は必要です。特に、普通の人より多くの頭を使う私に栄養不足は死活問題となります」

「要するに、作ってほしいということですね……」


一希がそう言えば、城谷はまたしても満足そうに、微笑んだ。


「ええそうです。咲夜さくやがいつも率先して作ってくれるのはいいのですが、正直下手なんです、彼」

「僕は構いませんが、咲夜くんが知ったら怒りそうですよ」

「私には怒りません」

「いやだから僕が、……いえ、なんでもないです……」


ため息を堪えた一希は、手首の消毒をして、キッチンへと向かう。シャワーを浴びたかったが、まずはこの生徒会室を支配する女帝に、満足のいくモーニングを作らなければ許して貰えそうにない。


(ご主人さまは基本……女難の相がある)

「それを信じてみたくなったよ」


頭の中でのビュグヴィルの言葉に、一希は苦笑しつつ、備え付きのエプロンを腰に巻く。

長い一人暮らしの賜物で、簡単な朝食は楽に作れるようになっていた。時には妖精の手を借りて、一希はちゃちゃっと、城谷が所望したモーニングを作ってやる。


「お待たせしました。卵とハムを焼いて塩コショウで味付けしたものと、サラダとトーストです」


生徒会長席でホログラム画像と睨めっこをしている様子の城谷の目の前に、一希が作った美味しそうなモーニングが、並んでいく。最後にコーヒーを淹れてやれば、もう文句はないだろう。

 ホテルででてくるような清潔感ある佇まいを見せる一希のモーニングに、城谷も読書をしていた目線をそちらに向け、微笑んでいた。


「見た目だけでもとても素晴らしいです。これほどの腕ならば、私専属のシェフとして、第二の人生を歩むことも可能ですよ」

「まだ僕は、僕の人生の行き先を決めたわけじゃありません。ところで城谷さん。問題がなければ、休憩室のシャワーと乾燥機付きの洗濯機をお借りしたいのですが」

「どうぞご自由に。あなたはもう、私たちの仲間なのですから」


 城谷の許可もあり、一希はバスルームへと向かった。

 

(ご主人様、これからどうされるのです? まさか、本当にあの性悪女の言いなりになるのですか!?)


 血や煤で汚れた制服を脱ぎ、また同じように、血や煤で汚れた身体で、一希はベイラに顔を向ける。


「仕方がないよ……。出来れば二度と、誰かの言いなりになってこの力を使うのは遠慮したかったけど」


 一希は鏡に写った自分の姿をじっと見つめ、呟く。

 服を脱いで上半身は裸で露になった割れた腹筋の上、血にまみれた姿をした自分が、自分をじっと見つめていた。


「おはようさん、一希」

「おはよう、武」


 別室で眠っていた様子の武も起き、シャワーを浴び終えた一希は彼の分の朝食も用意してやっていた。


「それで、これからどないするんや? 生徒会長さん?」


 パンを租借しながら、武が城谷に問う。

 城谷はこちら側からは見ることができないホログラム画像を見つめており、その仕草のまま、答えた。


「そうですね。まずは演習場に行き、避難民の皆さんに不足しているものを()いて周り、適時配給をお願いします」

「寮室に行っては駄目ですか?」


 結局、新年度初登校から、寮室には行けていない。……個人的な感情を含めてあまり行きたくはない、しかし行かなければならない、理事長室にも。


「申し訳ございませんが、まだ()()には戻らないで下さい。貴男方は表向きは退学していることになっていますので。なにより星野くん。禁じられている魔剣を堂々と使用した貴男はもう、学園中の嫌われものですから」

「そうは言われても、俺らはセミの幼虫とちゃうで」


 二枚目のトーストを頬張りながら、武が物申す。


「勿論、学園退学の話は取り消しますとも。私の言うことに従って頂ければ、ですけれども」


 城谷はそう言いながら、優雅にティーカップの紅茶を啜る。


「わかりました。地上には出ずに、そのまま地下演習場に向かいます」


 一希は素直に頷くと、起立をする。


「やる気やな、一希」


 武が慌てて水を飲みながら、一希を見つめあげる。


「……僕は、僕の責任を果たしたいだけだ」


 そう言った一希と、それを慌てて追いかける武の背を、城谷は椅子に座ったまま、面白げに見つめていた。


「結構な気合です。すでに咲夜さくやりん大和やまとが現場にいますので、お二人とも挨拶をするように」

「はい」


 重厚な木製の生徒会室を後にした一希と武は、地下の廊下を歩く。


「ごめんよ武、まだ寮室にも戻れないなんて」

「一希のせいとちゃうやろ。こうなったのは昨日俺が後先考えずに飛び出したせいもある。おあいこ様やろ?」

「ありがとう、武。そう言ってくれて」


 一希はそして、前を向く。

 昨夜、城谷が言った言葉を、ふと思い出したのだ。


「゛捕食者イーター゛が人間を計画的に滅ぼそうとしている、か」

「信じんのか?」

「まだ分からない。でも、昨日の映像がフェイクでなければ。今まで゛捕食者イーター゛は、人間を食料として餌の為に捕らえているのだと言われてきたはずだ。それが急に知恵をつけて、ただ食べるのではなく、生命線を断って意図的に殺しにきた。朝にも出現することと同じで、それは今までの奴らの行動とは明確に違う点だろう」

「そんなん()()()じゃなくて、侵略者やん」

「そうだね。少なくとも奴らは、賢くなっているのは間違いない。ただただ無意味に人を喰っていた頃とは、まるで状況が変わっているんだ」


 二人が向かったのは、アルゲイル魔法学園の地下演習場。そこには、昨日一希が救出した大勢の避難民で溢れていた。

 彼ら彼女らへの配給のため、見慣れたはずの演習場沿いの地下廊下には、箱に入った物資が、ところ狭しと並んでいた。


「さしずめ、難民キャンプってわけやな……」


 とても朝から気分は上がらず、武は細い目をして言う。


「――たいそうな身分だな。どこぞの誰かのせいでこうなっていると言うのに、遅れてくるとは」


 二人を廊下で待っていたのは、昨夜戦った、生徒会副会長の同級生、津山咲夜(つやまさくや)であった。昨日の敵は今日の友と言うが、生憎そんな便利な言葉を、使えるような間柄ではまだないようだ。


「おうおう、こっちは連戦()()で疲労困憊なんや。ちっとは堪忍してもらおうか?」


 一応、勝負には勝っているので、武がにやにやと笑いかける。

 対して咲夜は無表情で、ふんとそっぽを向いていた。


「貴様らは第一演習場の避難民に配給をしろ。第二はボランティアが。第三は俺と黒羽(くろばね)岸野(きしの)がやる」

「ボランティア?」


 一希が首を傾げていると、今まさに、後ろの方から足音が三人分、聞こえてきた。


「かずくん! 武田くん!」

「おはよう!」


 他でもない、同級生のはるかと(あや)であった。


「おはよう、二人とも」


 取り敢えず、二人の顔を見ることができてほっとする自分を自覚し、一希は微笑んでいた。


「お前ら、ボランティアしとんのか?」

「人手不足なんだし、困っているのはお互い様でしょ? 助け合わないと」

「かずくんと武くんだけに、大変な思いをさせたくないから」


 武に、理とはるかが揃って答える。


「なんだか、大変なことになっちゃったみたいだけど、頑張ってね、二人とも。取り敢えずなんとかなりそうでよかったわ」


 退学の危機であった等、詳しい話は聞いていないだろうが、二人の健在を、理は嬉しそうにしていた。


「ありがとう、はるか、理」


 第二演習場担当の二人と別れ、一希と武は、第一演習場の中へと入ろうとする。

 すると、理とはるかの後ろを歩いていたもう一人の少女、生徒会会計の黒羽凛(くろばねりん)と目があった。


「……」


 黒羽の方からすぐに視線を反らし、彼女は一希たちの横を素通りしていく。


「なんやねん。挨拶もなしかいな」


 武が文句を垂れるが、一希は気に留めず、それよりも、


「思ったより沢山いるね……」


 第一演習場の中に足を踏み入れた瞬間、一希が呟く。

 簡易教室は愚か、無色のタイルの上に簡素な段ボールや毛布を引いただけの床の上に、一定の間隔毎ではあるが、ところ狭しと人が大勢いた。普段は動き周り走ることすら何ら区ではない大きな室内も、これでは身体どころか、息が詰まるすし詰め状態だ。

 空調は効いているが、多くの人のざわめきと、そこに赤ちゃんが鳴く声が加われば、あっという間に周囲の人は不機嫌そうであったり、不安そうな表情を浮かべる、避難所の負の連鎖も、起こっている。


「……俺は赤ん坊のところ、行ってくるわ」

「頼んだよ、武」


 武と部屋の中で散開し、一希も個別で人々の話を()く。


「とにかく食料が少ない。医療品も不足しているし、どうにかしてくれ」

「子供の鳴き声がうるさいんだ。空いている教室に纏められないのか?」


 等と言った、不満そうな声をあげる者が大多数であった。さすがに理不尽を感じそうになるが、自ら蒔いた種であるだけに、なにも言い返すことはしなかった。

 なによりも、一般の人が思うような代弁者はすでに、一希の頭の中にいた。


(逃げて来たくせに偉そうに……!)

(本来はいちゃいけないはずなのにね)


 ベイラとビュグヴィルが次々にブー垂れるが、一希はそれを笑って受け流す。

 悪いことばかりじゃない――。


「昨日はありがとう。本当に助かりました」

「格好よかったぜ、坊主」


 傷つけたのではなく、しっかりと守った事で、人々からは感謝の顔を向けられる。それを見ることが出来れば、昨日から続いている身体の重たさも、少しは和らぐ気がした。


「何をしているんだい?」


 床に広げた紙にせっせと鉛筆をはしらせる女の子を見つけ、一希はしゃがみ、目線を合わせて問いかける。


「あ、昨日のお兄ちゃんだ!」


 女の子はまだこの状況をよく理解はしていない幼さをそのままに、天真爛漫な笑顔を、一希へと向けてきた。


「塗り絵してるの。これ、昨日のお兄ちゃんだよ!」


 どうやら、ただの鉛筆だと思っていたものは、色鉛筆だったようだ。


「完成したら、お兄ちゃんにあげるね。えっとね、すっごく格好よかったよ!」

「ありがとう。とても上手だ。これは空を飛んでいるから、赤い色かな?」

「うんそうだよ! 魔法の光が、きらきらしてた!」

「……とても綺麗だ。僕には、描けないほどにね」


 少女が一生懸命描いている描きかけの絵をじっと見つめ、一希はそう言っていた。

 一通り配給を終えた六人は、一度廊下に再終結する。


「やはり、全体的に物資も食料も不足しているみたいだね」


 どこの演習場も、避難民には我慢をしてもらっている状況で、一希は言う。


「食堂もメニューを絞って対応しているみたいだけど、いつまで()つかよね……」


 ツーサイドアップの髪をしゅんと沈ませ、理が言う。


「全ては今夜の物資が無事に送られてくるか、になるのかな……?」


 はるかが心配そうに呟くが、果たして彼女の予感は、悪い方に流れてしまう。

 食料を始めとした物資の供給が゛捕食者イーター゛によって阻まれていることは、二人にももう教えられているのだろう。この場にいて少ない物資を分け与えていることからも。


「……っち」


 咲夜が舌打ちをして、腕時計型のホログラムデバイスから出力された画像を見た。


「学園だけじゃない。他の施設でも、夜間運搬車が"捕食者(イーター)"に襲われているようだ」

「つまり、"捕食者(イーター)"をどうにかしない限りには、この事態は好転しないと言うことですね」


 黒羽が周囲の面々にそう告げる。


「どうにかするって、どうするつもりやねん? "捕食者(イーター)"にトラック襲わないでくださいって、一回一回言いに行くんか?」

「――それもいいかもしれません。もっともそれは、聞き分けのいい()()相手に限りますけれど」


 武の言葉に、新たな女性の声が割り込む形で聞こえてきた。

 城谷である。


「あ、生徒会長さん……」

「おはよう、ございます」


 はるかと理が次々に声をあげ、咲夜と黒羽は頭を下げる。一希と武は、やって来た彼女をじっと見つめた。


「作戦、出来上がりました。つきましては話をするために、生徒会メンバーは生徒会室に集合をお願いします」

「え、普通の授業は……?」


 今日は平日で、通常授業が行われるはずだ。

 一希の問いに対し、城谷は肩を竦めていた。


「ただ教室に座って教材を眺めているだけでは事態は好転しませんから」


 城谷の言葉に、一同に緊張感が奔る。

 とりわけ、はるかと理は、心配そうな面持ちを、一希と武へ向けていた。


「はるか、理。教室に戻って、普通の授業を受けるんだ」

「でも一希……」


 理が追いすがってくる。

 理の気持ちは、痛いほど理解できる。それはかつて自分が、二人を見て見ぬふりをしながら、己の道へと突き進んでしまったからだ。

 理はその時のことを、未だに悔いているのだろう。

 一希はそんな理の肩に手を添え、力強く頷いた。


「大丈夫理。僕はもう間違えたりはしない。正しい道を()くよ」


 そうして一希は、はるかにも視線を送る。

 いつもは理が気弱なはるかを引っ張っている印象が強いが、看護師の娘としても、こういう状況では気丈に振る舞えるのは、はるかの方であった。


「頑張ってね、かずくん。ファイト!」

「ありがとう」

「まるで死にに行く前のようなやり取りですね」


 三人の様子を見守っていた城谷が薄く笑いかける。


「違うのかい?」

「まあ、地獄に向かうことには変わりはありませんけれど」


 城谷はそう言いつつ、紫色の瞳を流し、演習場の方へと向ける。


「地獄はこの魔法世界、どこでも、ですが」

「「……」」


 そんな呟きを残した城谷を、理とはるかは、どこか不気味なものを見るよう目で、見つめていた。


 城谷の召集により、他の生徒会メンバー三人と、一希と武を加えた計六名が、アルゲイル魔法学園の生徒会室に集った。

 そこで始まったのは、ブルーライトのホログラム画像を中心とした、作戦会議であった。


「さて、皆さんもよくわかっているように、現在アルゲイル魔法学園に蓄えられている物資は非常に乏しい……いや、もはや空と言っても過言ではありません」


 青い光に照らされる城谷の言葉を、この場の全員が真剣な表情で聞いている。


「今夜も物資が届かない事態となれば、私たちは飢餓に苦しみ、避難民の中でも暴動が起きてしまう恐れがあります」

「飢餓って……ほんまかいな?」


 いまいちまだ想像が出来ない事態に、武が口を挟む。

 むっとした表情を見せる咲夜をよそに、城谷はこくりと頷いた。


「残念でしょうが、()()()、です。私たち魔法生が、自給自足やどこかで物資を調達する必要が出てきます。その限られた物資の対価は身体で、支払うとか?」

「……っ」

「城谷様、それは……っ」


 微かに微笑みながら言った城谷に、武と、咲夜が微かに顔を赤くする。咲夜くん、純情……。


「え、えっと。俺たちの物資は、神戸にあるセンターから運ばれてくることになっています」


 この場では唯一の後輩である岸野大和(きしのやまと)が、変な方向へ行きかけた空気を、戻す。


「ちょっと待ってください。今、思い至ったのですが、夜間にトラックが"捕食者(イーター)"によって襲われるのであれば、配達する時間をずらせばよいのでは?」


 一希が挙手をして発言すると、答えたのは咲夜であった。


「すでにしている。そして、それもまた"捕食者(イーター)"に襲われている」

「もう、夜にしか出現しないと言う認識は改めた方がいいかもしれませんね」


 異常事態が続く中、 端の席に座る黒羽がそう言う。


「とどのつまり、やはり、"捕食者(イーター)"をどうにかしないと道は開けないと言う事ですね……」

「だからそうは言っても、アイツらは無限に出てくるんやで? どないせぇっちゅうねん。交代交代でずっと監視でもしろっちゅうのか?」


 武が背もたれに背中を寄り掛けて、吐き捨てるようにして言う。

 自分たちが交代で毎日トラックを護衛するなど、どだい無理な話だ。

 しかし、作戦立案者である城谷は、我々の想像をはるかに越えることを、言い始めた。


「どうにかしましょう。主な出現場所である、高速道路(アウトバーン)上に現れる"捕食者(イーター)"を、私たちの手で討つのです」

〜人間超進化論〜


「捕食者がこれ以上知恵をつけると大変なことになります」

みふゆ

        「間違いありません」

         さくや

        「ただでさえ、魔法でしか対処出来ない人間に比べ」

         さくや

        「奴らは多くの部分で人間に勝っています」

         さくや

「人間はその魔法が唯一の武器」

みふゆ

「捕食者は進化していると言うのに」

みふゆ

「人間はいつまでもそのままです」

みふゆ

「嘆かわしい」

みふゆ

         「城谷様の仰る通りでございます」

          さくや

「そこで咲夜」

みふゆ

         「はい」

          さくや

「人間はどう進化すべきでしょうか?」

みふゆ

         「え」

          さくや

「ちくたくちくたく……」

みふゆ

         「ええと、目から凄いビームをだす!」

          さくや

「そう言う進化の仕方……?」

りん

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