9. 魅惑の生徒会室
「親睦会?」
「そう!親睦会!」
放課後、いつものように帰ろうとしていると、水野が急にクラスの前に立ち、親睦会とかいうのを提案してきた。
「ほら!私たちって、まだ会って一ヶ月も経ってないでしょ?体育祭もそろそろ近づいてきたし、ここで1つ、みんなの仲を深めるってことで!まぁ、ただの遊びだよ!みんなで遊びに行かない!?」
「今日?」
「ううん。それだと予定が合わない人だっているかもしれないし。今週………だと、急すぎて無理かな。来週の土日どっちかにどうかな?」
「まぁ、いいんじゃない?なぁ世良?」
「ん?あ、まぁ……」
桐生がそう答えると、皆それに同意していく。
俺も来週まではバイトは入ってない。
遊びに行くなら持ってこいだな。
そうして、クラスみんなの同意が得られたとこで、今日は解散となった。
ということで、俺は早速帰路に着いた。
そうして、しばらく歩いていると、前に早瀬さんが歩いているのが見えた。
俺は周りを見て、誰もいないのを確認すると、早瀬さんの下まで駆け足する。
「早瀬さん!」
「…………………なに」
「一緒に帰りません?」
「…………………別にいい」
(よっしゃ!)
早瀬さんに見えないように、ガッツポーズする。
「あ、そういえば早瀬さんって親睦会参加するんですか?」
「…………………本当は……参加したくない」
「そ、すか…………」
「…………………でも、多分みんな参加する…………空気読まないって思われたら嫌だし……………一応参加する………」
「まじすか!」
早瀬さんは絶対参加しないと思っていたが、参加するならちょうどいい。早瀬さんのことをより深く知ることができるチャンスだ。
「…………………でも……………退屈…………」
「え?」
「…………………ご飯とか、カラオケとか、ボーリングに行ったりするんでしょ?」
「まぁ、親睦会っつったら………」
「…………………私、友達いないから………きっと退屈になる。だから本を持っていって、一人で読んでおこうと思うんだけど…………それもきっと、空気読めないやつって思われる」
「それは…………」
「…………………友達とか、だから嫌い。私はただ一人で、平穏に過ごせていればそれでいい。良い意味でも、悪い意味でも目立ちたくない…………」
「そうなんですか……」
早瀬さんはそう言うと、どこか悲しげな顔をしている。
俺!行け!
ここで行かなきゃ男じゃない!
「じ、じゃあ!俺が話し相手になりますよ!」
「え?」
「俺相手なら、そんな気を使わずに話すこともできるでしょう?だから当日は、俺が話し相手になりますよ!」
「…………………」
(って自惚れだったかな…………)
軽い気持ちで言ったが、これって早瀬さんが俺だけに心を開いてるみたいな言い方だよな。
早瀬さんは全然そんなこと思ってなかったら、これ超気まずい。早瀬さんにより気を使わせてしまう。
「…………………」
(沈黙が痛いー!)
「…………………ありがと………」
「あ………はい!!」
早瀬さんは一言だけそう言うと、すぐに顔を晒す。
よかったー。どうやら気は使われてないみたい。
その後は、お互い何も話さずにただ歩いた。
◇◇◇
「あ、そういえば仁美ちゃん明日帰るって電話があったわよー」
夕食中、フミさんが思い出したようにそう言う。
すると、すぐさま先生が反応する。
「え〜!私あの人きら〜い!」
「へー、その仁美さんってどんな人なんですか?」
「まぁ、詳しいことは明日にわかるけど、私と同じ旅館、悠面旅館の従業員よ」
「へー…………」
「あー、でも世良くん気をつけた方がいいよ」
「え?」
「そうそう!あの人ってほんとに…………」
先生は先程から嫌悪感剥き出しだし、シュンさんは面白そうに笑ってる。
なんとなくわかる。
多分めんどくさい人なんだろうなぁ…………
俺は早瀬さんに近づき、耳打ちする。
「どんな人なんでしょうね」
「…………………多分変な人」
「あはは………やっぱり?」
どうやら早瀬さんも同じことを考えてたみたいだ。
「…………………あの2人で十分。これ以上変人はいらない……」
早瀬さんはシュンさんと先生を見ながらそう言う。
そう言うなら早瀬さんも変人の部類に入ると思うけどなぁ、と喉まで出かかった。
危ない危ない。
しかし、本当にどんな人なんだろうな…………
◇◇◇
それから数時間経ち、今は学校の昼休み。
桐生は今日は用事があるらしく、学食で一緒にご飯を済ませた後は早々にどこかへ行ってしまった。
そういうことで、俺は暇になってしまったので、とりあえず暇になったので、水野達のグループとでも駄弁ろうと、教室に向かっている。
そうして、廊下を歩いていると、横の曲がり角から、急に人が出てくる。
その女の子は、大量の紙を持っていて、こちらにうまく気付いておらず、反応が遅れる。
そして俺も、下を見ていたため、反応が遅れる。
となれば、ここで衝突し、大量の紙を落とすのも必然となる。
「「うわぁっ!」」
2人とも、声を揃えて尻餅をつく。
「いてて………あ、ごめんなさい!」
「う………いや……」
俺は急いで大量の資料らしき紙を拾う。
「あ、ありがとう………」
中々の枚数で、全て拾うのにだいぶ時間がかかってしまったが、幸い紙にこれといった傷はなかった。
俺が集めた紙を渡すと、その女の子は再び重そうに持ち上げる。
なんだか見てられない。
俺は咄嗟に、その紙の三分の二を取る。
「重いんでしょ?またこんなこともあるかもしれないし、俺、手伝いますよ」
「でも………」
「このぐらい、気にしないでください!俺が勝手にやりたくてやりたいんで」
「え、あ、ありがとう………」
その女の子は小柄で、なんというか、癒し系の可愛さを持っている。
ていうか、上履きを見たら一つ先輩だった。
「で、どこまでですか?」
「あ、生徒会室までお願い………」
「はい、わかりました。しっかし重そうですねー」
なんてことを言いながら生徒会室まで歩く。
「あ、着いた……」
「へー、ここが生徒会室ですか………」
俺はまだこの学校の生徒になってほんの二、三週間。生徒会室になんて当然行ったことないわけだが、こうして見るとかなり大きい。
「じゃ、じゃあ………」
そういうと、先輩は俺の手にある資料を取ろうとする。
「って、別にいいですよ。ここまで来たんですし、中まで入ります」
「あ、でも………」
「困ったときはお互い様ですよ。こんなの男として当然のことです」
と、ちょっと言ってみたかったけど言う機会がなかった言葉をこれでもかと言ってみる。
すると先輩はしぶしぶそれに承諾し、中へ入れてくれた。
生徒会室は会長用のでかい机が一番奥にあり、後はテーブルと2つのソファがあるだけだった。
「じゃ、じゃあここに置いといて………」
先輩はテーブルの上に資料を置く。
俺もそれに合わせて置く。
「じゃ、俺はここまでで」
「あ、ありがと……」
「はい!」
そうして、帰ろうとしていたとき………
「君、一体誰だ………」
ドアの方から声がする。
俺は咄嗟に振り返ると、こちらを女子生徒が睨みつけている。もちろん一つ上。
「ここで何をしている………」
「え、いや、この先輩がこの資料を重そうに持ってたんで手伝おうと………」
睨みが怖いので、必死に説明する。
「そうか…………その子はうちの書記で、私は会長」
「そ、そすか………」
「ところで君。この生徒会室には私の許可がないと生徒会以外のものは入れないのだが?」
「いや、それは………」
「まぁ、ここに資料を運ぶためなら仕方ないよな………」
「は、はぁ…………」
「ただね。その前に夏恋………この資料を運ぶときは私に言えと言った筈だ。一人で運ぶには重いから手伝うと」
「咲ちゃん忙しいから………」
「そうか………まぁその心遣いは感謝する。だが、だからといって彼に頼るのか?」
咲ちゃんと呼ばれた子はさらに睨みつける。
俺はその緊張感に咄嗟に口を開く。
「あの、どうしてそんなに………?」
「そもそもその資料。極秘資料なんだ。君みたいなただの生徒には絶対に見せちゃいけないんだよ」
「えっ!?」
まじか…………
なんでそんな大事なこと先輩言わなかったんだ……
「あ、いや…………私も断ろうとしたんだけど………気にするなって、人として当然って押されちゃって…………」
俺のせいかーい!!
あれ遠慮してたんじゃなくて断ろうとしてたの!?
じゃ、じゃあ…………
『このぐらい、気にしないでください!俺が勝手にやりたくてやりたいんで』
『困ったときはお互い様ですよ。こんなの男として当然のことです』
(うっ…………)
自分の言葉が脳内を反芻する。
断ろうとしているのを知らずに俺はなんて恥ずかしいことを……………
クククッ…………俺はカッコいい気になって、一人で自分に酔って踊り狂うピエロだったということか……
「ぷははっ、なんだその気色悪いセリフ!お前はカッコいい気になって、一人で自分に酔って踊り狂うピエロだったってことだな!」
「うわぁ不思議!人に言われると腹立つわぁ………」
「ぷくく……………お前は……「先輩まで乗らなくていいですから!」
書記の先輩まで乗ろうとしていた。
これ以上俺に恥ずかしい思いをさせないでほしい。
「んー、まぁ、今回は仕方ない。許してやろう」
「あ、ありがとうございます。じゃあ………」
そう言って、出て行こう歩き出すと、腕を掴まれる。
「まて、ここで会ったのも何かの縁だ。名前を聞いておこう。ちなみに私は露崎 咲だ。君は?」
「あ、俺は世良総庸って言います………」
「世良総庸……………どこかで………」
露崎先輩は手を顎に当て、何かを考えている。
「気のせいじゃないですか?俺たちどこでも会ってないですし、そんな話題上がるような何かをした覚えもありません」
「世良……総庸……………………ッ!そうか、そうかそうか!君だったか…………ふっ!」
「はぇ?」
すると、先輩は急に俺の胸ぐらを掴み、押し倒す。
するとそのまま上で、ヤンキー座りのようにしゃがむ。
俺は下なので、当然見上げるようになるわけだが、先輩は俺の体を跨いでいるため足を広げている。
そのせいで白いパンツが見えてしまっている。
「あの………………先輩パンツ………」
「なんだ、そんなにジロジロ見て………興奮しているのか?」
「い、いや………あの………」
「君、面白いな…………私の下僕にならないか?そしたらパンツくらい、毎日見せてやるぞ?体はガチガチになっているみたいだしな………」
「いや、あの…………」
「パンツごときでこの反応とは………」
先輩は一瞬、俺の下半身に触る。
「ほら………下僕に………」
「な、なりません!!」
「うおっ!」
俺は咄嗟に、先輩を跳ね除ける。
「はぁ、はぁ………」
「ほう、やるではないか…」
「も、もう失礼します!」
それだけ言って、急いで生徒会室を出て、教室へ向かう。
俺のこと知ってるみたいだったし、エロいし、なんなんだあの人〜!!
「うわぁぁぁ!!」
うはは〜、お色気回だー!
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