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永満亭の早瀬さん  作者: 塩コンブ
第零章 出会い
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6. 無表情で無愛想

300ポイントありがとうございます!


「いってきまーす!」


「「いってらっしゃい!」」


土曜日に早瀬さんが来て、2日経った月曜日。


みんなに見送られながらいつもどおり学校に向かう。

※先生は先生なので2人より早く出てる。


ただ1つだけ、いつもと違うとこと言えば…………


(今日から早瀬さんと登校できる……!)


別に狙ってるとかじゃなくて、出る時間も、出る場所も、行き先も同じなので、一緒になってしまう。

この中でずらせそうなのは出る時間ぐらいだが、朝食の時間が一緒なので必然的に被ってしまう。

そもそも無理してずらす必要がない!


(昨日は早瀬さん、自室にこもりっぱなしで全然話せなかったからな………今のうちに色々聞いとこう!)


仮に悠面荘で話せても邪魔される気がするし………


「は、早瀬さん!」


「…………………なに」


「早瀬さんはどうしてここに?」


「…………………別に」


(別に…………!)


「…………………特に理由…………ない………。親が転勤でせっかくだから社会勉強って……………」


「へー、じゃあ元はこの辺に住んでたんですか?」


「…………………いや………一応違う県………」


「へぇ。じゃあそっちの友達とか寂しくてないですかね?」


「…………………友達いないから大丈夫」


(……………ミスったぁぁ!)


2回目だよ!ミス2回目だよ!

すぐにフォローしなきゃ…………


「な、なんかすみません…………」


「…………………別に」


(き、気まずい!)


なんなんださっきからこの空気!

なんで俺の質問答えるときいちいち…が入るの!?


うぅ…………アピールって難しい。


早瀬さんの場合どのくらい踏み込んでいいのか。

横を見るが、相変わらずの無表情。

全てをつまらないと思ってる目だよこれ。


はぁ………、そもそも俺が見た笑顔は入学式のときの一回だけ。それ以来は学校でもちっとも笑ってくれない。すでにクラス内ではグループができていて、昼休みも1人でご飯食べたかと思うとすぐに本を読み出す。こちとらついつい敬語を使ってしまう。


思わず口を歪める。


ここは大人しくして機会を待つべき?


いやいや!同じ場所に住んでて、一緒に登校。

これ以上の機会がどこにある?いくんだ!男だろ!?


「あ、じ、じゃあ……………俺が最初の友達とかどうすかー?…………………………なーんて……」


(最後チキったぁぁ!)


いや、でも言った!言ったぞ!

いきなり異性としては無理でも友達からなら!


チラリと横を見てみる。

すると、早瀬の歩みはなぜか止まる。


「…………………そういうの………もういい」


「へ?」


「…………………無理に仲良くしようとか…………そんなの別にいい………」


「いや別に無理してるわけじゃ」


「…………………じゃあ私と話してて楽しい?」


「えっ………いやそれは……」


「…………………ほらね」


(あぁぁあ!俺のバカ!)


「…………………別に友達が欲しいと思ったこともない。だからそんなふうに気を使わなくていい。………互いに疲れるだけ………」


「いや、俺は別に気を使ってるわけでは」


「…………………使ってる……………それに、私も別に辛くない………世良くんは楽しくないんでしょう?私もそう。誰かと話すのを楽しいと思ったことないから」


「…………あー、そっ……すか………」


やめてくれ。


「…………………もう、話しかけなくていい」


そんなこと言うの、やめてくれ。


「…………………やっぱり、今度からちょっと時間ずらそうか」


俺は、あなたともっと………


「そう、ですね…………」


「…………………それじゃあ………」


楽しくない、か………



◇◇◇



「もー!なんなんすかあれ!!」


「ぷははっ、一週間!一週間経ったのに進展なしなんだ?」


「そうですよ!」


あれから、一度断られた手前、中々アプローチをかけずらく、特に一週間経ったこの金曜日まで、特に進展はしなかった。


さりげなーく、さりげなーく話しかけたりするが、最近は大体無視。

いい加減心折れそう………


「全っ然相手にしてくれないし……」


「そう?私には割と話してくれるよ?」


「あんたは教師だからでしょうが」


「フミさんにも」


「管理人」


そういう何かしらの特権というか、親しみやすい役職みたいなのがあればいいんだけど。


いや、あるよ?正確にはあるんだよ、クラスメイトという最高の役職が。でもそれは早瀬さんの前ではニートのようなもの。全く効果なしだ。


「あぁぁ!もうすぐバイトも始まるのに!」


「あ、そういえば!なんで3人ともバイトしてないの?」


「あぁ、なんかちょっと改装してるみたいで、店長とまどかさん以外は長期休みなんだよねー」


「えっ、今休業中だったんだ」


「うん。ていっても後二、三週間で再開だけど」


シュンさんの答えに納得したように先生が頷く。


そう、バイトはあと三週間もすれば確実に始まる。

バイトとなればそれなりのコミュニケーションも必要だろう。

そのためにはまず、せめて言葉を交わせるぐらいの仲にはなっておきたいという使命的な理由もあるのだ。


「はぁ…………どうにか距離を縮める方法ありませんかね?」


「んー。あっ、そういえば自作でスゴロク作っててさ、ちょうど今日終わったんだー!」


「暇人か!」


「それ、みんなでやらない?」


「スゴロク…………いやですね」


「私もパスかなぁ」


「えぇ!?結構頑張ったのに!」


「あ、じゃあ私もー」


「フミさんまで!?」


「さすがにもうスゴロクの歳じゃないですよ」


「でもこれなら彩ちゃんとの距離を縮められるかもよ?」


「そんなうまい話………」


「罰ゲームも設定しちゃったりして」


「やらいでか!」


罰ゲーム。

例えば一位の人は何々〜とか、最下位は何々〜とか。


これであわよくば早瀬さんの恥ずかしいこととか………


「いやらしいのはなしだよ?」


「わ、わかってますよ!」


「じゃあ、罰ゲームは後で考えるとして、世良くんちょっと彩ちゃん呼んできてよ」


「えっ、でも女子寮………」


「私もついて行くから大丈夫だよ〜」


「なら、わかりました……」


先生がいるのなら問題はないだろう。

それにぶっちゃけ好きな女の子の部屋というのは気になる。すごく行きたい。


こうして、先生同行のもと、早瀬さんの自室訪問となった。


──コンコンッ

とドアをノックすると、中から「はい」と声が聞こえる。


「あーやちゃんっ、ちょっといい?」


「…………………あ、先生………わかりました」


先生が声をかけると、しばらくして早瀬さんはドアを開け、不審そうな顔を見せる。


「…………………なんですか?」


俺がなんと答えようか戸惑っていると、先生が仕方がないといった表情で、進める。


「今、何してたの?」


「…………………本を読んでいただけですが」


上手い。

ここであえて何をしていたかを聞くことにより、暇であることの言質をとる。

これにより、後の質問で、暇?とか、遊ばない?などで、忙しいという言い訳を取れなくなる。

それに、暇であることが証明されているため、お誘い自体断りにくい。

早瀬さんはおそらく、普通に誘っても断られる可能性が高いので、ここで外堀を埋めておくのは大事だ。


この先生、可愛い顔して色々と計算高い。

やはり猫を被っているのか………


「ふーん、じゃあ今暇なんだ?」


「…………………まぁ………本を読むくらいには」


よし来た!

これで誘いは断れない。


「じゃあみんなでスゴロクしなーい?暇でしょ?」


「…………………すみません。本を読むほど暇ではありますが、スゴロクをするほどの暇ではありません」


そう言って、早々にドアを閉める。


(でぇすよねぇぇ!)


そりゃそうですよねー!

だってスゴロクだもん。しかも自作だもん。


本を読むのが有意義といえるが、スゴロクは違う。


「せ、先生………どうしましょ……」


「はぁ…………大丈夫、手はあるから」


先生はやれやれと首を振ると、そのままドアに向かって話し続ける。


「彩ちゃんの好きな物ってなに?」


「…………………甘いものは割と好きです」


すると、中から返事をしてくれる。


「えー、例えば?」


「…………………駅前の……苺大福………」


「あー、あの高いやつかぁ………」


俺は行ったことないが、桐生達が美味いって言ってた気がする。

なんでも、数量限定とかは特にしてないのに売り切れがひどいから、値段を高くしたんだとか。


「んー、わかった!彩ちゃんが一番になったらそれ、買ってあげるよ!」


えっ、んな物でつられるの?


大体好きって言っても………どのくらいかは──


「──わかりました。やります」


(つられるんかい!)


「うわーい!やったぁっ!」


早瀬さんは、すぐさまドアを開け返事をした。


この程度でこんなに食いつくとは………

俺のこの一週間の努力は!?


なにはともあれ、これで俺たち5人のスゴロク大会が実施されることとなった。





次回はスゴロク!



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