4. 自己紹介
200ポイントありがとうございます!
「それじゃあ、みんなには今から自己紹介をしてもらいます♪」
入学式後最初にある学力テストという地獄を無事耐えぬき、高校生活始まって最初のLHRは自己紹介をすることに決定した!
ここで注意が必要なのは、相手の話を聞くことではない。いかに自分をアピールできるかだ。やりすぎない適度なジョークを挟みつつ、自分の情報を言葉通り伝えるのではなく、自分のキャラを発表時の態度でそれとなく伝わらせることが大切なのだ。
だが、ことこのクラスに於いては、男子の半数がそのような考えを捨てていた。
(((水野さんの自己紹介!!)))
(これであの子の名前が聞ける!)
対象の人物に多少の差異はあれど、目的としては同じだ。
「せ、先生からまずお願いできますか!」
ある一人のチャレンジャーがそう発言する。
「えー、でも私昨日やらなかった?」
「もう一度、今度は詳しく!お手本として!」
たしかに、宮博先生は可愛い。
これは他の男子達が先生のことを知りたがるのもわかるな…………
「んー、わかりました!じゃあよく聞いててね?」
「「はい!」」
手を胸の高めの位置に、拳を軽く握った状態です置き、首をこてっと傾ける。
癒し系の可愛い顔に甘えた声、この表情。
普通に可愛い。
みんなは昨日会ったばかりなのに息が合ってる。
「えっと………宮博奈々、25歳です。好きな食べ物はチョコのケーキとかかな…………ガトーショコラとか。他にもパンケーキみたいな可愛いやつとかは大好きです!…………あは、結構緊張するね」
((か、かわぇぇぇ!!))
緊張のせいか、若干顔を赤らめて、上目遣いで発表する。これにより、男子の半数が悶絶してしまう。
かくいう俺も、あまりの不意打ちにドキッとしてしまった。
いやぁ、結構良い一年になりそうだな………
毎日が目の保養だ。
「はい!それじゃあ次は皆さんの番!出席番号順でよろしくね?」
「「はい!」」
そうして、自己紹介は難なく進む。俺も、特に何もなく普通に済ませる。
そしてとうとう、あの子の番になった。
「じゃあ次、お願い!」
そう言われると、彼女は立ち上がり、下を向いたまま言う。
「早瀬 彩です。よろしくお願いします………………」
それだけ言うと、早々に席に座る。
(早瀬さん………かぁ………)
みんな好きなものやら何かしら付け加えるのだが、早瀬さんは名前一本で終わった。
(まぁ、名前わかっただけでもよしとするか!)
早瀬さんかぁ。
まずはどうやって話しかけるかだよなぁ………
何かしら接点があればいいんだけど。
こうして、自己紹介は無事に終わった。
ちなみに水野の番では男子達が耳に全ての神経を集中させ、発した音を光の速度で脳内に記憶していた。
◇◇◇
「ふぅ………そろそろ帰るか………」
LHRも終わり、今後の授業のやり方などを簡単に説明して、放課後となった。
「よーす!世良!」
「え?」
ちょうど帰ろうとしたとき、一人の男子から声をかけられる。
「まぁ、覚えてないか。俺は桐生 将也だ。よろしく!」
「あ、よろしく。でもなんで?」
「んー?別に深い意味はねぇけど、お前出身中学この辺じゃないだろ?だからまぁもしかしたら友達いないんじゃないかと思ってな!俺の知り合いで良ければ紹介するぜ?」
「まじか。ありがとう」
なんて気の利くやつだ。これは普通に嬉しい。
「よし!じゃあ、俺がこのクラスで今んとこ一番仲いい奴らだけど」
そう言って、桐生は俺も男子と女子が入り混じったグループに連れて行く。
「ほい!これが俺の友達よ!」
「あっ、世良くんじゃん!」
「あ、噂の水野…………」
なんと。桐生のグループにはあの水野がいた。
「ははは、やっぱ有名だよな」
「あ、俺は世良総庸。よろしく」
とりあえず改めて自己紹介をしておく。
「俺は葛城 優斗」
「俺は飯島 大輝」
「私は鬼塚 夏海!」
「私は芹田 遥花」
「おっ、これで女子男子3:4でバランス取れたな!」
「あはは〜、そうだね〜」
「グループRINE作っといたから入ってね!」
こうして、ひとまずの友達作りは上手くいった。
◇◇◇
「あ、世良くん友達できた!?」
夕食の時間。シュンさんが思い出したように聞いてきた。
「あ、はい。ちゃーんと出来ましたよ」
「へー、いいな〜」
シュンさんが羨ましそうな目で俺を見る。
「シュンさん友達いなかったんですか?」
「いやいたよ?」
「じゃあどうして?」
「友達ができたの、夏休みが過ぎてからなんだよね〜。自己紹介のときに俺の自慢のギャグかましたら何故か誰も話しかけなくて」
「あはは〜。本当に強メンタルですねー」
自己紹介で一番やってはいけないことを堂々とやっていくスタイル。
しかもこの人のギャグは壊滅的に面白くない。
「そんなことないよ。俺だって流石に凹んだよ。なんていうだろうね、あの年頃って、自分とタイプの違う人間は避けがちじゃない?」
「まぁ、たしかに」
「だからかな…………陰で悪口言われることもあったし…………物を隠されることもあった………自己紹介でたまたますべっただけなのに………」
なんだろう。絶対にたまたまじゃない気がする。
「それで………陰口言われて………変なあだ名つけられたり………もう俺も限界で………なんとなくクラス自体が暗い雰囲気になっちゃって………」
「シュン、さん……………」
そっか。この人も自分では面白いと思ってやってるし、変わってるっていってもほんの一部だけ。普通の人となんら変わらない。結構、キツいよな…………
「みんな暗い笑い方しかしないから、これじゃダメだって思って…………」
「………………」
「俺の爆笑ギャグを目の前で見せてあげたよ!」
「一瞬でも可哀想と思った俺に謝ってください」
「雰囲気変えなきゃと思ってね!」
「一ミリも変わってねぇよ」
「なのに全然笑わなくて、なんか笑い堪えてるみたいだったから」
「素で笑ってないんだと思います」
「だって若干顔引きつってたし」
「引いてんだよ」
「これは勝負だっ!って思って、毎日付き纏ってギャグしてたね」
「もうあんた勝ってるよ。死体蹴りしてんだよ」
「あ、やっぱりみんな本当は俺の見てないところで爆笑してたと思う?俺もそれ疑ったんだよねー」
「ごめんなさい、やっぱ負けてました」
そうやって、俺とシュンさんが言い合っていると、フミさんが思い出したように、手を叩いた。
「そういえば、高校と言えば彼女、帰ってくるって。今日の夜にでも」
「えっ、本当!?それは嬉しいなぁ」
「ん?朝言ってた人ですか?」
「そうよ〜。もうそろそろじゃないかしら」
「へー………どんな人だろ」
───ピンポーン
ちょうどそのとき、家のチャイムがなる。
「どうやら噂をすればってやつね。私出てくるわ〜」
そう言って、フミさんは玄関に消えていく。
お姉さんってことは歳上だよな。もしかして卒業生とか、先輩かな?でもお爺ちゃん属性持ちだから二十歳は超えてるか……………
「そういえば世良くん、好きな人できた?」
「ぶふぅぅーっ!……………ゲホッゲホッ……」
不意に聞かれてしまったため、思わず味噌汁を吹いてしまう。
「あ、図星か」
「な、何言ってんすか!ち、ちちち違いますよ!」
「まあまあ、隠す必要ないでしょ?どうせ知らないんだから」
「ま、まぁ…………」
「で?どんな人?名前は?」
グイグイ食いついてくる。
とはいえ、この人の言う通り、シュンさんはどうせ知らないんだから別にいっか。
「同じクラスの、早瀬さんって人です」
「へー…………」
そう言うと、2つの足音がこちらへ近づいて来て、フミさんがドアを開け姿を見せる。
「それじゃあ、紹介するわね!」
そう言って、壁の向こう側にいるであろう人の腕を引き、俺に姿を見せる。
「えっ」
「えっ」
(嘘だろ、この人が…………?)
その人は、俺が見たことのある人だった。
「彼女は宮博奈々ちゃん!世良くんと同じ高校の先生よ〜」
「先生……………」
「世良くん………」
メインヒロインが全然出てきませんね。ごめんなさい。次回辺りから増えると思います。
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