3. 朝から
あっという間に100ポイント。ありがとうございます!
「ふあぁぁぁ…………」
朝、大きく手を広げ、背中を伸ばす。
高校生活2日目。昨日は色々あったが、気にすると負けだろう。
(とにかく、あの女の子と関わりを持たなきゃな!)
そう考えていると、ドアがコンコンっとノックされる。
なんだろう。と思い、ひとまずドアを開ける。
「はいはい、なんで「おはよう!変態仮面だよ!」
「ぎゃぁぁぁ!」
ドアを開けると、パンツを頭に被った男が出てきた。
「どうどう?面白かった?」
「怖いだけですよ!朝から脅かさないでください!」
「えー、結構自信作だったのに……」
そういうと、江藤さんは笑いながらパンツを頭から外し、ポケットに突っ込む。
よかった、今日はきちんと服を着ているみたいだ。
「で?何か用ですか………江藤さん?」
いまいち呼び方が定まらないので聞いてみる。
「あぁ、俺のことはシュンさんって呼んでいいよ」
「あ、そうですか。わかりましたシュンさん」
「いやぁ、そう呼ばれると小○旬さんになったみたいで朝から気分がいいよね!」
「今すぐファンの方々に謝ってください」
「あ、そっか。自分を持たなきゃダメだよね。ごめんね、ファンのみんな!俺は俺だよ!」
「あんたのじゃなくて、小○旬さんのだよ」
この人、やっぱり普通の思考回路じゃない。
たとえボケでやってたとしても朝からこのテンションはすごく疲れる。
「で用件ってのは?」
「あぁ、フミさんがもうすぐ朝ご飯できるから着替えたら来てだって」
「えっ、朝ごはん作ってくれるんですか?」
「ん?そうだけど、知らなかったの?」
「えぇ………」
「朝夕は毎日作ってくれるよ。ていうか、今日はどうするつもりだったのさ」
「あ、そういえば………」
「じゃ、また後でねー」
「あ、はい。ありがとうございます」
朝ご飯、作ってもらえるのかぁ。
旅館の人が作ってくれるのだから、きっとめちゃくちゃ美味しいのだろう。
心配ごとはあるが、だんだん慣れてきたし、大丈夫だろう。
そんなことを考えている間に、とりあえず準備は終わり、昨日案内してもらった共同スペースの和室へ向かう。
「おはようございまーす」
ドアを開け、挨拶をする。
「あ、おはよう」
「改めて、おはよう!」
「もうご飯はできてるわ。さ、座って?」
見ると、テーブルの上には美味しそうなご飯が並んでいる。
朝から豪勢だ。
「わぁ、美味しそう!」
「ふふ、それはよかったわ。それではいいだきましょうか」
「「「いただきまーす」」」
みんなで手を合わせ、ご飯を食べ始める。
ご飯はいい感じに暖かく、味付けもすごく美味しい。
一人暮らしをするにあたって、諦めていた美味しい食事っていうのが、しっかり叶えられるのだから幸せだ。
「あ、そういえば気になってたんですけど……」
「あぁ、俺がどうしてこんなにイケメンなのか?」
「いちいち話をそらすな」
「それはね………秘密!」
「結局かい!……………そうじゃなくて、他の同居人とかはいないんですか?」
「あー、なるほど。いや、今はみんな色々あっていないけどいっぱいいるよ」
「へー、そうなんですか」
「そうそう。そういえば世良くんと同時期に、バイトが決まってここに住む女の子がいるんだよね。しかも世良くんと同級生!」
「へー、そうなんですか」
「後一週間ぐらいしたら来るんじゃないかな?あ、そういえば世良くんはどこの高校なの?」
「あぁ、ここの近所の春宮高校ですよ」
「えっ!春宮!?」
そう答えると、シュンさんは驚いた顔をする。
この辺は初めてなのだが、そんなに有名なのだろうか。
たしかに進学校ではあるが、そんなに注目されるほどの偏差値ではなかったし、部活も目立った成績は残してないような気がしたけど。
「驚いた…………その女の子も春宮なんだよ」
「えっ、そうなんですか……」
「それと、その学校には知り合いがいるのよねー」
「あぁ、あの2人か。咲ちゃんはまだしも、あっちはいつ戻ってくるんだろうねー」
「そうねぇ、もう一週間経つしねぇ…………」
「へぇ………何してるんですか?」
「んー、なんせ気まぐれな人だからね。フラッと出て行ったりするんだ」
「何すかそのおじいちゃん属性」
「あら、本人は若いお姉さんよ」
「へー…………あっ、もう行かなきゃ!」
「お、いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
そうして、歯磨きをすぐに済ませ、悠面荘を出る。
◇◇◇
「おはようございまーす」
一応挨拶は手短に済ませておく。
まぁ誰も聞いてはいないだろうけど、ここで何も発言せず、根暗なやつと思われたら友達作りが一気に難航する。
入学直後などの、初対面同士の空間では、スタートダッシュが肝心となる。
ここで、いきなりギャグをして滑っても友達は作れないし、何もしないのもそれはそれで友達は作れない。
ちょうどいい引き際を見極めることが大切なのだ。
「あっ、おはよう!………えっ…と………」
「うぇっ!」
びっくりした。
誰も聞いてないよなと思い、席に座ろうとした瞬間、目の前に美少女が現れる。
例の注目を集めていた子だ。
「うふふ、どうしたの?そっちから挨拶したんじゃん」
「あ、それもそっか。俺は世良総庸。よろしく」
「私は水野 真希。よろしくね♪」
へぇ、水野っていうのか。
おそらくクラス中の人、それも受け入れ態勢ができている人全員に話しかけているのだろう。
ああいうタイプは、人によって違うパーソナルスペースを天然で見抜き、話しかけるので恐ろしい。
顔だけじゃなく気配りもできるなんて………
「おーい真希〜!」
遠くから、女子に呼ばれている。
「あ、じゃあいくね!よろしく!」
「よろしく〜」
水野は女子の輪の中に入っていく。
さすがに絶世の美少女。ほんの少しの業務用の挨拶程度なのに、ドキドキする。
(でも今はそんなことより…………)
あの女の子を探す。
いた。
普通に席に着いて本を読んでいる。
相変わらずの無表情だが
(可愛い………。は、話しかけたい!)
でも初対面で急に話しかけるのはいいのだろうか?
いや!ここで弱気になったらダメだ。
ここは覚悟を決めて頑張らないと!
そうして、立ち上がろうとした瞬間………
「はいみんな席について〜」
(んっ!!………)
先生登場だ。
はぁ………タイミング失った。
まいっか…………まだ始まったばかり。まだまだチャンスはあるだろう。
まだまだ増えます、変な人!
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