↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永満亭の早瀬さん  作者: 塩コンブ
第零章 出会い
13/44

13. 苺大福

長めです。


「ごめん、遅れた…………!」


って……………あれー?おかしいなぁ?誰もいないぞぉ?もしかして先に行っちゃった?でもまだ五分ほどしか………


「まだ誰も来てないよ!」


声と同時に、後ろから肩をトントンされる。

俺はここで、あえて叩かれた肩とは反対側から振り向く。


───ムギュッ!


頬っぺたに指が突き刺さる。


「あはは〜、引っかかったー!」


や、やられた。裏の裏をかかれたんだ。

ていうか、


「まだ誰も来てないってどうゆうこと?水野」


俺の目の前には学年一の美少女と言われる水野が立っている。


「んー?女子に会ったならまずは私服を褒めるべきだと思うけどー?」


「え、なんかごめん。似合ってるよ、可愛い!」


「うふふ〜、でしょー?まぁ、素がいいからねー」


「それ水野以外だと嫌味だぞ」


「だから私しか言わないんだよー」


そう。水野ってクラス内では割と鈍感系というか、私なんて全然〜!というキャラを作っているが、実際はこんな感じだ。

最初はビックリしたが、『そんな上手い話あるわけないでしょ?私クラスの美少女が可愛さを自覚してないなんて。どこの童貞用ラブコメよ』と言っていた。どことなく先生とおんなじ臭いがした。あ、菊井さんとも。

とまぁ、ここまで本人に言われたら別に本当のことだし割とすんなり受け入れられた。それ以前に中学の頃ので耐性が付いているのだろう。

美少女バリア的な。

早瀬さんは普通に可愛いけどね!


「で?なんで誰もいないの?」


「いやぁ、だって私が嘘の情報を世良くんにだけ教えたもん。まさか遅刻してくるとは思わなかったけど。みんなが来るのは三十分ぐらいしてからだよ!」


この遊びの計画を立て、それを俺に教えたのは水野。

つまりこいつなら本当にそれが可能というわけだが、


「はぁ?なんでわざわざ………?」


「んー?特に理由はないかなー。ただしばらくふたりでお話したくて」


「?」


「だって世良さぁ?私のことなんか避けてない?私、嫌われてる気がするんだけど」


「え、い、いやそれは…………」


事実とも、嘘とも言えない。

一番近い言い方をすれば、限りなく事実に近い嘘。というわけわからない答えになるだろう。


「んー、ちょっとわけありで水野みたいな美少女は苦手なんだよ………」


「なに?わけって」


「いや、中学の頃にちょっとな………」


これ以上は俺の辛い記憶になるので絶対に言えない。


「てか、それだけでわざわざ?そんなの学校でいつでも言ってくれればいいのに」


「その前に謝るべきじゃない?友達と思ってる人に避けられるのって結構辛いんだよ?」


「あ、ごめんなさい……」


「ふふふ、今度からはやめてよ?何があったかは知らないけど、私は中学の頃とは関係ないんだから」


「あ、うん。ありがと。そうだよな、うん、ほんと今までわるかっ「お!世良!やっと来たか!」


「へ?」


後ろから続々と、桐生をはじめとしたいつものメンバーが現れる。

ん?やっと?


「え?桐生………お前………」


「お前が中々来ないからみんなトイレ行ったりジュース買ったりしてたんだよ」


「ん、んん?水野ー?」


「あ、あはは………」


「水野ぉぉ!こらぁぁ!」


「ごめぇぇん!」


と、こんな感じで俺を揶揄ってくるのもどこか先生に似ている。

あれ?ちょっと不安になってきた。水野って変装じゃないよな?



◇◇◇



「あ、苺大福………」


皆、何かと用事があるようで少し早いが遊びも終盤に差し掛かった頃、たまたま駅前を通ると、例の早瀬さんが好きと言っていた苺大福があった。

売れ残ってるなんて滅多にない。ラッキーだ。これをプレゼントすれば更に好感度アップも狙えるかも……


「あれ?お前苺大福好きなの?いや、たしかにあそこのは美味いけどさ………ちょっと高くね?そこまで?」


「あぁ、いや早s……………俺好きなんだよー」


危ない危ない。ここで早瀬さんの名前を出せば、同居してることで冷やかされ、さらには俺が早瀬さんのことを好きということもバレる可能性が出てくる。


「早?」


「いや!なんでもないよ?」


「あ〜、そっかー。世良って彩ちゃんのこと好きだもんねー」


「へ?」


俺と桐生が話しているところに、水野が割り込み、爆弾を投下した。


「ナニイテルノ?」


「えっ、バレでないと思ったの?教室でも隙あらば彩ちゃんのこと見てるし、頻繁に話しかけるし。顔に出まくってるよ?」


「え?そうだったの?」


「うちらのグループじゃ気付いてないのはあんたぐらいだよ」


桐生はたしかに色々鈍感なところはある。こいつにバレてないし、大丈夫だろうと高を括っていたが、まさかバレていたとは。

ていうか俺ってそんなに顔に出てたのか…………


「あー、いや。別にクラスのみんなにはバレてないと思うよ?よく見たらわかる程度だし」


「あ、そう………」


よかった。のか?いやよくないでしょ。


「いやいや、マシな方だと思うよ?」


そうかな?まぁそうだよな。こいつらだけならまだ。


「そうそう!」


……………………あれ?


「ん?どうしたの?」


いやなんかおかしいなって。


「何が?」


いやだから………


「ん?」


「あれ!?なんで俺の脳内の会話してんの!?ん?思考読むのやめてくんない?」


「いやいや、顔に出てたよ?そういう顔してたもん。ほんとわっかりやすいよねー」


「いやそれ水野が察しいいだけでしょ………」


「て、そんなことより苺大福いいの?無くなっちゃうよー」


「あ、やっべ」


水野に言われ、急いで苺大福を買いに行く。

店に近づいてただけで甘い匂いが体に広がり、食欲をそそられる。

そうまでして食べたいとも思わないが、これだけの値段の価値は間違いなくあるのだろう。匂いだけでもわかる。

お釣りをもらい、みんなが集まってるところへ戻る。

すると、すぐさま興味津々って感じで水野が聞いてくる。


「苺大福、早瀬さんが好きなの?」


「……………」


「顔、出やすいから正直に言った方が見苦しくなくていいと思うよ?」


まぁ、もうほぼほぼバレてるだろうし、別に同居つってもそんなごりごりの同居じゃないし。共同スペースがあるだけのアパートみたいなものだ。なんの問題もないだろう。人に言いふらすような人でもないしな。


「そうだよ。早瀬さんが好きなの、苺大福」


「でもさ、いつ渡すの?2人が話してるとこは見るけど、そんなに仲良くは………どっちかっていうと世良が一方的にって感じだけど……」


「う、やかましい!」


俺は、いろんな経緯があって早瀬さんとその他と同居していることを説明した。

みんなからは一目惚れってとこがアホらしいなぁみたいに言われたけど。


「はーん。なるほどそれで………」


「でも同居までしてんのにあそこまでなんとも思われてないのは可哀想だよねー」


「そうそう!もうちょっと頑張らないと横からどっかのイケメンに取られるよ?」


「う、うるさいなぁ………」


「たまーにめんどくさそうな顔されてるしね!」


「わかってるよ!でもそれぐらい強くいかないと………あの人、基本的に人と話すことに興味ないから…………」


でも、やっぱりしつこいとか思われたら嫌われるのかなぁ…………

早瀬さん、結構露骨に嫌な顔すんだよなぁ………


と、世良が悩んでいる間、水野は笑いながら考えていた。


(まぁ、あそこまで露骨に感情を表に出すのってクラスじゃ世良にだけなんだけどね。良い意味でも悪い意味でも特別なんだろうね。あとはそれが良い意味に転がるのを待つだけだけど……………彩ちゃん、性格に難あるし、あそこまで顔に出てるのに好意に気づかないってことは超鈍感なんだろうなぁ。多分自分の気持ちにも。これはちょっと本気で頑張らなきゃだねー)


「ま!頑張ってね!応援してるから!」


「水野…………ありがとう…………!」


(なんか健気で可愛いから、しばらくは様子見しーとこ!)



◇◇◇



「ただいまー!」


「…………………おかえり」


その後、共同スペースに戻ると早瀬さんが本を読んでいた。1人で。

これはラッキーだ。邪魔が入る前に早く渡してしまおう。


「早瀬さん?」


「…………………なに」


「なーにー!?せーらー。残念だったなぁ!」


「あーもう!わかってましたよ!」


後ろから突如現れた菊井さん。

わかってたよ、なんとなく。どうせ邪魔入るんだろうなって、こんなうまい話あるわけないからね。


「はぁ………早瀬さんにちょっとしたプレゼントですよ」


「プレッ………………」


「文句があるなら目じゃなくて口で言ってください」


菊井さんは明らかに引いた目をしている。


「キモ」


「正直で素晴らしい!」


「…………………プレゼントって何?」


「あぁ、今日ちょっと、駅に寄り道して………」


そう言って、早瀬さんの前に苺大福を出す。

早瀬さんはそれを見るや否や、驚きと嬉しさの入り混じった顔をする。


「好きだって言ってたでしょ?だからまぁ、せっかくだしってことで。どうですか?」


「…………………あ、ありがとう………」


早瀬さんは珍しく微笑む。

あぁ、眩しいなぁ!


「いえいえ、こんなの大したことないですよ」


「そーだよなぁ?大したことないよなぁ?なのになんでそんなにドヤ顔してんのかなぁ?あれ?なんで私にはないのかなぁ?」


「ほんっと、汚い性格ですね」


俺と早瀬さんが2人の世界に入りかけたところで、当然のように割り込んでくる。

すると、その声を聞きつけて、みんながやってくる。


「なになに〜?どうしたの〜?」


「あ、お前ら。喜べ。世良が駅前の苺大福買ってきたらしいぞ。彩ちゃんにはもう渡したって。私らもいただこうぜ。まさか彩ちゃんだけとかもないだろうしなぁ?」


うわ、この人ほんと性格終わってるわ。

値段的にみて、俺が早瀬さんの分しか買ってないのなんてわかりきってるのに。


「もー!仁美ちゃん?そういうの良くないわよ!?」


フミさんの譴責。しかし仁美さんには通じない。


「ふんふふーん、何がですか?世良はもしかして彩ちゃんを特別扱いしてるのかなー?なんでかなー?んん?そういうのダメじゃないかなー?」


「…………………あ、いや………だったらこれ、返す…………」


「しゃおら!!」


早瀬さんに返却される。


菊井さんを睨むが、ニヤニヤした顔でこちらを見ている。くっそ腹立つ。


はぁ………本当はこの手は使いたくなかったんだけどな…………


今日の俺はいつもと違う。いつもならこのまま菊井さんの策略にハマって終わりだっただろう。だが今回はそうはいかない。


「いいですよ、もらってください。せっかく買ったんですし」


「…………………でも……」


「あれあれー?おかしいなぁ?懲りないなぁ世良くんはぁ?特別扱いかなー?」


「やっぱり…………」


「いいですって、別に」


「んん?あれあれー?」


俺は早瀬さんに無理やり渡したあと、後ろを振り返り、満面の笑みで菊井さんを見る。


「いやだなー、菊井さん。特別扱いなんてしてないですよー。だってほら…………」


俺はカバンから、さらに取り出す。


「みんなの分の苺大福も買ってるんですもん。菊井さんの言った通り、全員分ね」


「なっ………テメェ!」


「今日、入居者が2人来るんでしたっけ?その人たちの分も買ってますよもちろん」


「うわくっそ…………」


菊井さんは悔しそうに顔を歪ませる。


かなり手痛い出費になったが、俺はこんなこともあろうかと全員分買っていたのだ。まぁ邪魔さえ入らなけ

れば俺と早瀬さんで分け合おうと思っていたのだが。


完全勝利。俺は勝利の喜びに笑顔が絶えない。


「………………そこまでするか普通…………流石にキモくね?なんかいかにも童貞って感じで。うわ臭っ」


「くっ、てめ…………」


菊井さんの反撃。

とはいえ、痛いとこを突かれた。俺も自分で考えてみたが、プレゼント1つ渡すのになんかこんな回りくどいことやって、たしかに割とキモい。キモいが!キモいけども!でも!渡すことに意味があると折れたのだ。ここで余計なプライドなんていらない。全ては早瀬さんからの好感度のためだ。


「んー、私的にはぁ、たしかに割とキモいけど〜、さっきまでのしつこい仁美さんの方がなんというか無様かなぁ………」


「なっ!」


おっとー、思わぬところから援軍。


「十代の微笑ましい青春をぉ、ここまでしつこく邪魔するところっていうか、その必死さが(笑)そこまで嫉妬て(笑)やっぱり歳取ると心狭くなるのかなぁ?あれ?でも別にそんなこと邪魔する必要ないよね?なんでだろ?あー!自分が連休中何もないのに、こういう若いこの青春見るのが辛いんだー!」


「自分が失った若さって感じだよね!三十路が懐かしむだけならまだしもそれを邪魔するってのはねー」


「いくら嫉妬とはいえ、無様よねぇ………」


「あ、いや、くっ…………」


先生、シュンさん、フミさんからの三連攻撃。

流石に効いたようで、かなり落ち込んでいる。


とはいえ、ここまで出費だ。少し痛い目を見てもらおう。俺は苺大福を1個とり、笑顔で菊井さんの前に立つと、優しく肩に手を当てる。


「苺大福です。どうぞ………………これで元気出してください(笑)」


「く、クッソォォォオ!!」


菊井さんは苺大福を奪い取ると、すぐさま悔しそうにかぶりつく。


「あ、皆さんもどうぞ」


「ありがと〜」


1人1個渡し、俺も自分の分ともう1個だけ取ると、早瀬さんの隣に座る。


早瀬さんはどうやらもう食べ終わったみたいだ。


「美味しかったですか?俺、食べたことなくて……」


「…………………うん。ありがとう」


「へへ、好物なんですよね?」


「…………………うん」


「じゃあこれ。内緒ですよ?」


そう言って、早瀬さんにさらにもう1つ、苺大福を渡す。


「え、でも………」


「いいんですよ。元々早瀬さんのためですし」


「…………………ありがとう」


「どういたしまして」


「…………………お金渡す……」


「あぁ、いいですって別に!」


「いやでも……」


「大丈夫ですよ」


「…………………でもこれ、高い………」


「んー、じゃあ今度俺に何か奢ってください」


「…………………何を?」


「んー、じゃあ今度一緒に遊びいきません?そこで喫茶にでも入ってなんか適当にデザートでも奢ってください」


「…………………それなら……わかった……」


よし!作戦成功!


これでさりげなく一緒に遊びに行くという約束をこぎつけた。

早瀬さんは気付いてないだろうが、これってデートの約束だ。


なんか、今日の俺来てる。俺来てるよ!何もかもが上手くいってる!


「えっへー!それは流石に私も引く〜」


「んー、俺もそれは…………」


「童貞臭っ!」


当然のようにバレてるんですよねこれが。

そうでしょうとも。そんなうまい話ないでしょうとも。


「あ、もちろん私達も同行しまーす」


「んー、別にいらないですよー?」


「いやいやー、ほんのお礼だよー?」


「ぐっ…………!」


「ざまぁ!」


「くっそ腹立つぅ!」


ま、でもいっか…………


早瀬さんと遊べること自体は事実だし。

2人きりはまたいつか…………な。





だんっっだん…………近づいてきましたね。同居してるだけの他人からランクアップできそうです。


次回は2人の新キャラ登場!これまた癖が強い!



ブックマーク、高評価、ご感想、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! いやあの、仁美さんの邪魔スキル高すぎません? 辛辣っていうか。世良くん、仁美さんの攻撃に耐えるのは大変だけど反撃は楽だからガンガン反撃して潰そうぜ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。