第三話 それでも元気に生きています1
世界にモンスターが溢れてから2年が経った。
始まりの日からいろんなことがあった。
父も死んだし母も死んだ。
半年もしないうちに住んでいた街はゴーストタウンと化したし。
住居は金沢自衛隊基地近くの金沢大付属小学校になった。
こどもを守るためにみんな頑張ったが、それでもこの街に残ったこどもは30人ほどだ。
どれだけ頑張っても弱い奴から死んでいく。
老人は送電と流通が止まった途端にバタバタと死んでいった。
薬で元気を保っていた人間も不調の身体でモンスターから逃れるわけもなく狩られていった。
この避難区にいるのは自衛隊員400人と住民800人内未成年が100人ほどだ。
生き残れるのは最後まで走り切れたものだけだ。というのは誰が話した言葉だったか、自衛隊員さんは走れたし戦えたし守れたし強かった。
もともとの隊員さんの数が1200人ほどだと聞いた。各地に派遣している200人と駐留している400人も合わせると600人ほど、半数が生き残っていることになる。それだけで十分すごい。
金沢市の元の人口は45万人。今は分散しているとはいえ、もっとも堅牢な自衛隊周辺区で生き残っている一般人が800人なのだ。他は押して知るべきであろう。
辛い話ばかりになったが良い話もあった。
電気が止まり、水道が止まり、流通が止まり、人がバタバタと死んでいた。
お腹が空いて死ぬか、モンスターに襲われて死ぬかの二者択一になった頃だった。
無線放送で一つの情報がもたらされた。
『モンスターの魔石は電力になりうる』
それは人類の死者数を劇的に減らす情報だった。
モンスター発生初期の頃、次第に増えていくモンスターを解剖して真相を突き止めようという動きは活発であった。
『モンスターのことがわかれば大発生の原因もわかるはず』
研究者も科学者も解体業者も処理業者も、必死になって原因を探した。
探したが、『体のどこかに石ころがひとつある』こと以外は普通の動物と変わらないことがわかった。
起きて寝て、食べて糞をして、食料を探して回り、種族に応じた行動をする。
そして体の中に石ころがある。
それがわかった頃には人はどんどん死んでいたし、そのうち研究を進めるどころではなくなっていったのだろう。
モンスター発生から初めての冬が近づいてきて、暖房もなく一日中燃やし続ける薪もない冬という明確な死が近づいてきて、これで終わりかと諦めてかけていた10月の話だ。
『モンスターの体内にある石を我々は魔石と名付けた。なにもないと思われたこの石の用法を説明する。
7個以上を接触させ、コンセントを接触させる。それだけで給電が開始された。
魔石は今のところ20個しか試していないが、20個までなら問題なく家電は稼働している。
これからどれほどの時間が使用できるか確認していくが、とりあえずこれを情報としてこの電波に乗せることとする。繰り返す……』
世界に光りが差す一報がもたらされた。