最近の都市伝説ときたら
夢に出てきた口裂け女の現代版です。
口唇口蓋裂の方とか、横顔裂の方とかを貶めたりするような内容にはしていないつもりです。
ただ、センシティブな問題なので、嫌な方がいたらメッセージなどでおっしゃってください。
取り下げます。
夕暮れ時の小学校。
女の子が一人心細げに出てくる。
居残りでもさせられていたのだろうか。
学校を出て、しばらくまっすぐ歩くと、赤いコートを着たマスクをつけた女性が何をするでもなく、地面を見つめて佇んでいた。
女の子は口裂け女の話を今日男子から聞かされたばかりだ。
怖い、怖い、怖い、怖い。
でも、普通の花粉症の女性だったら?
避けていくのもなんか失礼な気もする。
大丈夫、大丈夫、大丈夫。口裂け女なんていない、いない。
自分に言い聞かせながら、地面を見つめて歩く。
とことことことこ。
地面に赤いハイヒールが見えた。
恐る恐る顔をあげると、女がくしゃっと笑った顔でこっちを見つめていた。
「ひっ!」
女の子が後ずさる、女が前に出てくる。
また後ずさろうとしたとき、女が更に前にでてきて、マスクに手をかけながら
「私、きれ・・・」
びーーーーーーーーーーーー!
っと音がした。
女の子が泣きそうになりながら防犯ブザーをとっさに鳴らしたのだ。
その音に出てくる住民達。
「おう、どうした!」
「なんだ、あんた、その子に何をしてる!?」
「変質者か!」
「警察だ、警察」
「ほら、こっちおいで、怖かったねぇ。一回学校に戻ろう?お母さん呼んでもらおうね、ちゃんとブザー鳴らせて偉かったね」
「・・・・い?」
とマスクを外すタイミングもなく、固まる女。
間もなく自転車で警官が2名やってきた。
「あんたかい、小学生の女の子を泣かせた変質者ってのは」
「最近は女性でも変質者が出ますからねぇ」
「ほら、とりあえず交番行くよ」
「私、綺麗?」
「あん?口裂け女の真似かい?そう言われりゃ似てるわな、ははぁ、だから小学校のところで。余計に悪質だよ」
交番までの道中
「私、綺麗?」
「そういう身体的なことをいうとうるさいのが今の世の中でね、綺麗といえばセクハラ、綺麗でないといえば名誉損壊、普通と言ってもどうなることやら。だから答えられんのよね」
「私、綺麗?」
「だから答えられないんだって、ほら交番見えてきたよ」
交番で奥の部屋で説教タイムが始まった。
ドアは開けて、中年のおっさん警官が説教することになった。
「私、綺麗?」
「だからね、そういうのは答えられないのよ、この時代。というかだねぇ、マスクをしながら私は綺麗ですかって分かるわけないっつー話よ、いやマスク効果とかあるらしいけどさ、それって本当にあなたの綺麗さなんですか?って。昔の女性は猫にもすっぴんは見せられないっつーくらいの気概でもって化粧してから旦那とかの前に出たらしいじゃないの。そこまでいけばもう素顔と一緒だと思うがね、ずっとマスクしてんのかい?旦那ができても?朝起きても?そこまでの決心があるならマスクも化粧だとは思うがねぇ、そうじゃないならそういうマスク効果?とかは止めた方が良いだろうねぇ。」
「じゃあ、これなら」
とマスクを外そうとすると、
「あぁ、取れって言っているわけではないからね、言ったら言ったでまた問題になる場合もあるし、無理にとるように言われた~とかね、いや確かにマスクして隠したい物がある場合もあるとは思うがね、ただやっぱりおじさんはマスク効果とかで美人に「見えた」とか「見える」とかっていうのが良くないと思うんだよね、いや最近の流行なのかもしれないけどさ、というか小学生の女の子に綺麗かどうか聞いてどうするつもりだったのよ、聞くなら女子高生か女子大生でしょ。いやOLさんとかでも良いけど、あの年ってあれよ、セーラームーンとか見てる年だよ、あれ古いかな?最近はぷりきゅあって言うのかい、お~い、どうだったっけ?」
「アイカツとかじゃないっすか~?」
と若い警官の返事が聞こえる。
「あん?アイカツ?アイカツねぇ、コンカツだったり、シュウカツだったり、~カツって皆好きだよね、メンチカツかっていうの。メンチといえば、この通りのメンチカツが美味いんだわ、帰りにでも買うと良い、あれ何の話だったっけ?あぁそうそう綺麗かどうかってやつだ」
ようやく話に割り込めるとばかりに
「じゃあ、これなら綺麗かどうか判断つくでしょ!どうよ、私、綺麗!?」
とマスクを思い切り外した女。
そこには口の両端が耳まで裂けている姿があった。
口の中が見える、メイクなどではない本物である。
「いやぁ、だからね、職務上綺麗かどうかとか言えないのよ。ただ、なんだね、本当に口が裂けているとは大変だったろうに、産まれつきかい?怪我?」
「手術の失敗よ!どうよ、醜いでしょう?なんとか言ったらどうなのよ!」
「いやぁ、おっさんねぇ、仕事だからね、手を出せないけど、プライベートなら頭にチョップかましているよ、綺麗だ?醜いだ?そんなことの前に大切なことがあるんだよ、性根さ、性根。なるほど、あんたは大変な人生を送っているのか送ることになったのかは知らんがな、それで小学生に八つ当たりっていう性根が腐っている。そんな奴にだれが綺麗だどうだって言うんだい。なぁおい?」
声のトーンが下がっていく
「それになぁ、そうやって産まれつく子もいるんだよ、程度の差はあるだろうがよぉ。その子達は醜いか?あぁ?その子達の前でもっぺん言ってみろや、仕事止めることになっても殴り飛ばしてやるよ。甘えてんじゃねぇよ、産まれついての子達だってそれでも懸命に生きている。指がくっついて生まれた子は醜いか?四肢が欠損して産まれた子は醜いか?いいや、彼等にだって連れ合いができている、ってことは醜くなんかないんだよ、だからこそ人の辛さが分かるという人もいる。その心に惚れる人がいる。心に惚れたら、外見なんて二の次だって奴だっているだろう、目が見えない人は何で人を好きになるんだ、声だけじゃないだろう。もう一度言う、綺麗だどうだ言う前にその甘えた心を叩き直せってんだ、なぁ?」
まだ声のトーンが下がる
「それになぁ、お前さんが現代の口裂け女現る!とかで新聞とかで取り上げられてみろ、一番辛いのはお前と同じ苦しみを持つ人達だぜ?特に幼稚園、小学校の子は大変だろうよ、あの辺の世代が一番無邪気で残酷だ。お前さんが面白がってやったのか、八つ当たりだったかは知らねぇが、そこらも考えろ!」
「っち、お前さんの事情は分かったよ、今回はおまけでこの説教だけで帰してやる、そりゃそんな怪我すりゃ八つ当たりだとかってのも分からんでもないからな、だがな二度とすんじゃねぇぞ、小学生だ中学生だは多感な時期なんだよ、あの子だってしばらくトラウマになるかもしれねぇ、分かったか」
「私、」
「二度とすんじゃねぇぞ!分かったか!???」
「・・・・は、い」
びくりとする女
「じゃあ、これ書いて」
「?これは?」
「あん?住所とか名前とかだよ、もっぺん同じことしたら次は叩き込むからな、そん時のためだよ」
「・・・・ありません」
「はぁ?おいおいおっちゃん、耳遠くなっちまったよ、なんだって?」
「ありません」
「ありませんってことぁないだろう、どこに住んでたんだ?」
「気づいたら、いて、うろうろと」
「はぁ!!?じゃ、名前も、マジに覚えてねぇのか?」
「はい、あるかどうかも」
「おいおいおい、あぁ、監禁とかで見世物とかか?トラウマになって記憶喪失?」
ぶつぶつぶつぶつ言い出す警官。
「本当の本当に、覚えてないんだな!?」
と上を向いて、目をつぶりながら叫ぶおっさん。
「はい、あるのかも、、、分かりません」
「わ~ったよ、まずはお前さんが行くべきはまさに病院だ、脳の方のな、んで口のことも聞かなきゃな。俺は尋ね人だとか探すよ、んでも見つからなかったら、市役所かぁ?もうここまできたら全部抱え込んでやらぁ!!」
その後、脳の検査で何も写らないとか、尋ね人でも見つからないので新規にマイナンバーが取れるのかとか、戸籍はどうするとか色々問題が発生した。
しかし、数年後にはおっさんが赤いコートを着た女性と道端で話している光景が見られるようになったということだ。