その6
多人数同時参加型なりきり仮想現実遊戯。通称MMORPVRGだ。どのような過程でこう略されるようになったのかはお察しいただきたい。
べ別に知らないわけじゃないんだからね。
「ツンデレブーム到来の予感だ」
「ツンデレって何よ」
「私のパトスが」
「そのネタ、もういいから」
一時期はVRMMORPGと呼ばれていたようだが、VRGが人気を博した頃からMMORPVRGとなったらしい。
今日の昼食は天丼にしよう。
「私は海鮮親子丼にしようかしら」
「俺はカツど」
「おじーちゃん、わたしおこさまセットがいー」
「わたしもー」
「ぼくハンバーグ」
「ぼくやきにくがいいな」
「わたしあおだいしょー」
「フォアグラのスープもお願いね、パック」
「はいはい分かりましたよ。他にご注文はって何やらせるんじゃぼけぇ。俺はおじーちゃんじゃねぇって突っ込みはそこじゃねぇ、何で俺が」
じー
「お願いね」
「おじーちゃんありがとー」
「いってらっしゃーい」
「おじーちゃんお腹へったー」
じー
「はーやーくー、おじーちゃん」
「まだー?」
「わ、分かったよ。買ってくるからな、おとなしく待っとれよ」
「わかったー」
「おとなしくまっとるー」
「はーやーくー」
「でさ、お子様セットって、何だ」
私のパ、以下略。一度あることは二度ある。二度あることは三度ある。
さて、パトラッシュがあと何回パシられるか、数えていてくださいね。皆分かりましたかー。
「はーい」
「はーい」
「おじーちゃんはーやーくー」
「さ、さっさと行きなさい」
「あれ、お金……」
じー
「こんな純粋な目をした子どもたちからお金を奪おうというの! 見損なったわ、パンドラ」
「俺の名前はパックだ、もう態となんじゃないかと疑うぞ」
「気付いてなかったの。アンリスのそれは態とよ」
「ひどっ」
ひどっ。態とじゃないもん。ぷんぷん。ハインシュタインのくせに生意気だ。
「誰よハインシュタインって。まあいいわ、とにかく買ってきなさい、パック」
「突っ込み追い付かねぇ。神様仏様、突っ込み要員の追加を断固要求する」
WANTED
突っ込み要員
これでOK?
「神様仏様“が”突っ込み要員の追加を断固要求する、んじゃねぇよ。“に”だよ“に”」
パビリヨン、断固追加を要求する。
「神様仏様が突っ込み要員“に”追加を断固要求する、んじゃねぇよ。しかもパビリヨンって誰だよ、俺か、俺なのか? ……はぁぁ、もう行ってくる」
じー
「な、何だよ」
行かせねぇよ。
「行かせろよ」