その3
川の流れは絶えることなく、しかも常に同じ水ではない。昔の人は巧く言ったもので、まさしくその通りだ。
人の営みに始まりや終わりは無く、そして同じ時は一つとして無い。しかしそれでも物語や小説では始まりと終わりを決めなければ、資源や時間の問題で書けないだろう。
先程からキッズスペースで大の字になって雄叫びをあげている青年にも、過去があり未来があるのだ。あ、飛び付いてきた子ども達に倒された。グッジョブ。
彼の人生は波乱万丈だったのだ。産まれてすぐ孤児になり、教会に引き取られても直ぐには心を開かなかった。しかし同じ境遇の女の子との大冒険は彼を大人にした。精神的にも肉体的にも。大人の階段を上ったのだ。えらいえらい。
「助けなくていいの、あれ」
「大丈夫だ、問題ない」
喜んでいるようだし。小さな女の子にか、身体中を叩かれてかは知らないが。
同僚は溜め息をついた。彼の未来の心配をしているのだ。間違いない。
「違うから」
カトリヌスの突っ込みが冴えわたった。ツンデレである。
彼は初体験以降、小さな女の子にしか欲情しなくなってしまった。そして彼は今ここで発情してしまい、ドナドナされるのだ。
その後、彼の行方を知るものは、誰もいなかった。それでも世界は続いてゆく。たとえ生物がいなくなろうとも、そこに在り続けるだろう。
「そんないい話だったで終わらせてたまるかー! 俺は、俺は諦めないぞー! 地獄の果てまで追いか」
「おじちゃん、あそぼーよ」
「おじちゃん何いってるの?」
「じごく? おじちゃん、おいしいの?」
「おじーちゃんっ、うーごーけー」
「俺はおじちゃんでもおじーちゃんでもないっ。これでもな、これでも二十歳になったばかりなん」
「おじちゃん、おもしろいお話してー」
今日も世界は平和である。それがいつまで続くかは知らないが。
「変なこと言わないでよ」
「その時は守ってあげる」
とでも言っておけば好感度は鰻登り鯉のぼり滝登り山登りだろう。
「声に出てるわよ」
「出しているのだよ」
溜め息一つで幸せが逃げていく。一体カミーユの幸せはいくつ逃げていったのだろうか。
「溜め息は気持ちを切り替えてるの。それと私の名前いつになったら覚えるの。ついでにパック、見えてるわよ」
おじーちゃんの上半身に子ども達が群がり、下半身は丸見えである。もちろんふんどしを穿いている。
「見せてんのよってちゃうわ、あとふんどしちゃうわっ! これはな、れっきとした」
「ぱんつはかないの、おじーちゃん」
「おじーちゃん風邪ひくよ」
「わたちもぬぐー」
「おじーちゃんといっしょー」
「おじーちゃんじゃねーよ、まだ二十」
幼女が脱ごうとしていたが、同僚に止められた。
チッ
「舌打ちしない」
同じ時など無い。いつか見れる時が来るだろう。皆さんその時をお楽しみに。
「絶対にこないから」