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最強魔術師が魔法世界で無双する?!  作者: 金糸雀
二章 シッカ王国からの旅立ち
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死とは報われない…。

「ーーーベルク・スペア!!!!」

そう唱えられた水の概念魔法は大気にある水分をかけ集め1つの巨大な柱を作り標的の方向に向けて解き放たれた。標的とはもちろん焔龍のことだ。標的に命中するとその柱は焔龍に突き刺さり、貫通したあと破裂した。

破裂した水柱は焔龍を囲うように水球ができ、焔龍を飲み込んだ。しかし、焔龍の体質上体から発せられる鋼鉄をも溶かす熱量の前ではすぐにその水球は蒸発させられてしまう。

この術者はこれを織り込み済みであった。

世の中には水蒸気爆発というものがある。

水蒸気爆発とは水や海水などがマグマのような高温物質に触れることにより急冷され破砕すると同時に気化し膨張することによって発生する爆発のことを指す。

【融点に達している水(液体)によって作られた水球】と【鋼鉄をも溶かす熱量を発する焔龍】。水蒸気爆発を起こすのに充分なものだ。

そして焔龍は悲鳴を上げ地に落ちた。

誰もが驚きを隠せなかった。その場にいる騎士も銀楼の団員も。

一体誰がこれを行い、これは一体なんなのかと。

水蒸気爆発なんて本来この世界には存在しない。いや存在していてもどういうものかなんて分かりはしない。なぜならこれは科学を知ってないと分からないものなのだから。

だからクラッゾは気づいた。この世界にはないことを実現できる存在がいることを。そしてその者は自分がつい2、3日前に会い、話したことがあるということを。


「今のは…レイジ、か?あいつがやったのか?」


そのか細い問いかけにレイジと言われた人間は堂々とした歩みで近づき、「そうだ」と答えた。

血だらけになって戦っていたクラッゾは零蒔が来た安心感か、焔龍が地に落ちたという安堵感のどちらかもしくは、その両方からか仰向けに倒れた。


ーーーほんの数分前


零蒔が息を切らし王都に戻った時には既に遅かった。

もう焔龍が通り過ぎた後だったのだ。否、焔龍はまだ王都にいる。その姿ははっきり見えるが焔龍の通った後の傷跡よりも何者かによって破壊された傷跡の方が強くはっきりと残っていた。

零蒔はそこで疑問に思う。この街にはアリアとクラッゾがいるのではないか?と。あの二人がいるのであればこれ程までの被害はなかったはずじゃ…。

零蒔は嫌な予感を振り払うと焔龍のいる方にいると薄い希望を持って駆け出した。


「嘘…だろ?この惨劇は焔龍だけじゃない。だとしたら一体誰が?」


そこで零蒔はふとある時のことを思い出していた。それは零蒔とフェンリルが火竜の巣窟の頂上に登ったところにいたある人間を思い出した。あの狂気じみた人間は消え去ったあと一体どこに行ったのか零蒔にはさほど興味はなかったが、もしあのあとこの王都に来てこの惨劇を行った張本人であれば納得してしまう。納得せざるを得ないからだ。

そう考えながら通常の3倍のスピードで移動していると焔龍が移動しながら誰かと交戦しているのが見えた。騎士のような統一された鎧を来ている者達の中見たことがある者が見えた。


「あれは…王国の騎士達か?それと…クラッゾか?!」


それにしてもあの巨体を一瞬で黙らせる方法なんてあるか?本では焔龍はその体に3000℃を有に超える熱量を持っているって聞いた。だとしたら生半可な魔法は通じない。

いやひとつあるな。やつのその体、性質を使えば一瞬で黙らせられる。俺の何でもできる力を使えば。


「ーーーベルク・スペア!!!!」


ーーーそして今に至る


「ッ?!」


零蒔がベルク・スペアを放ち焔龍が地に落ちたあと零蒔はある違和感を覚えた。

その違和感の正体が一体何なのか気になったがそれよりもまず前のことを考えなければならなかった。

そう零蒔が切り替えると前で倒れているクラッゾのもとに歩み寄った。


「死にそうだな?助けて欲しいか?」


零蒔はクラッゾに上から問いかけた。

クラッゾはそこで心の底から零蒔に頼りたいという感情の他に怒りがこみ上げてきた。

零蒔がなぜこの問いかけをしたかクラッゾには理解してしまったからだ。そして零蒔には理解されたくなかった。


「お前の彼女に対する感情がどうとかは興味はねぇが、彼女は今ここにはいないんだろう?」


ここでの彼女はクラッゾだけに分かるような言い回しだった。零蒔は気づいていたのだクラッゾがアリアに向ける感情、そしてその劣情に。だからここは敢えて特定の人物の名を伏せて彼女と指したのだ。

そして零蒔はここに彼女がいない理由を理解した。いやほとんど勘ではあるがわかってしまった。


「テメーに助けてもらう必要はない!これは俺の俺たちの問題だ!!!!」


クラッゾには見えていた。

あの時この王都を半壊させた張本人である狂人がアリアに過去の話をしたのを。そしてそれをただ声を掛けることもなくただ黙ってどうすればいいのかを考えていた情けない自分がいたということに。「お前には俺がいる」と伝えることも出来ず彼女は狂人の向かう場所に付いていくことに止めることも出来なかった。

彼女の後ろ姿からは悲壮で残酷な気持ちが伝わってきた。

そしてそれを零蒔に理解されたくなかった。だから助けを求めたくても関係の無い人間を巻き込みたくなかった。アリアの過去を知る人間はアリアと自分だけでいいと。

だからあの狂人を殺してアリアを楽にしてやりたいと心からそう思った。

しかし、自分にはその資格はないと自覚してしまった。あの時、自分が黙って見ていることしか出来なかったのはその証拠だ。だから頼りたくなくても頼りたいというこの矛盾が彼を深く蝕んでいた。


「なぁ、レナは森にいるんだよな?」


零蒔が唐突に話しかけた言葉が混乱していたクラッゾを現実に引き戻した。


「あ、あぁレナなら報せを聞いた瞬間に街を出て森に向かったと聞いた」


「そうか。ならそこにアリアはいそうだな。教えてくれてあんがとな」


「ッ!なんで?!」


これは一種のハメだ。零蒔は既にアリアがいないという時点で狂人と一緒にいるということが分かっていた。そして狂人は今回の騒動で王都の壊滅を主としてなかった。王都の壊滅は二の次で本当の目的はラントの森に隠された秘密を独占することだ。もしくはその破壊を企てていた。


ーーー大体2週間ほど前

零蒔が夜な夜なラント周辺を散策している時


零蒔がラントの森で1人真夜中にさ迷っていると、とある場所に辿り着いた。そこには1本の木が植えられていた。

その木は地球ではないような太さをしていて、噂で聞くエルフの国『ヴェルニスフィア』の中心部に存在していると言われる世界樹のような姿をしていた。そしてその樹には扉がありこの樹自体が何かを隠しているように思えた。


「なんじゃ、誰かと思えばおぬしだったか。ここはエルフの者でなければ辿り着けないはずなんじゃながな」


と、やれやれと言いながらその樹の扉を開けながら話してきたのは長老だった。


「なんだよ。爺さんか」

「なんじゃ?とりあえずここで話すより中で話そうや」


零蒔は驚いたよと言いながら長老に促されるままに中に入るとそこは正しくツリーハウスだった。しかし窓がないツリーハウスだった。そして長老はその椅子に座りなと言い紅茶を淹れ始めた。零蒔はその椅子に腰を下ろした。

そこで零蒔は当然の疑問としてここはなんなのかと問い掛けた。


「ふむ、ここは何か、か。ここは代々このラントの森に住むエルフ村の長老が守り続けなければならないものなんじゃ」


零蒔は顔を顰めた。疑問に対しての答えになってないからということもあるが、ヴェルニスフィアが守るではなくラントの森の住人が守るということに。


「答えになってないという顔となぜラントが守らないといけないのかという顔じゃな?」


「この木は世界樹とは違う木が使われている。世界樹は陽樹という種類じゃがこの木は陰樹というものじゃ。陽樹は世界に2本。陰樹は世界に5本存在する。陰樹は主に封印に使う依代などに用いられる」


零蒔はここで1つの仮説が思い浮かんだ。

この樹には災厄が封印されているのではないか?というものだ。

本ではある組織がかつて作り出した災厄というものは初代勇者と【7人の使徒】が封印したと書いてあった。そして長老は零蒔のその考えを的を突くかのように答えた。


「お主の考えているとおり、陰樹というのは災厄を封印するために存在していると考えていい。そのうちの1本がこれじゃ。そしてこの樹が破壊されればその災厄は世に降りかかる」


「その確定的な言い方からするに5本あるうちの何本かは破壊されているということか?」


「現在残っている陰樹はここを除いて2本。既に2本破壊されている」


「言い回し的に故意に破壊されたと見ていいのか」


「破壊を行ったのはある組織だ。目的は分からないがある組織は陰樹を破壊しにやってくる」


「そのある組織とは一体なんなんだ?名前はないのか?」


「ある組織というのは名前が分からないのだ。ただ世界政府はその組織のことをある組織と呼んだ。名前がわかればすぐに組織の名前で呼ぶだろうが、何かあるのか?」


「済まない、少し気になってな。話を戻してくれて構わない」


「前回陰樹が破壊されたと聞いているのは約17年ほど前のある小さな国だ。その陰樹はその国が管理してきてその城の庭にあったのだが、ある組織はそこにやって来てその国を壊滅させた。その樹を燃やすと共に。確か生き残りはいたと聞いたが詳細はわからない」


17年ほど前だと案外その歴史を知ってる人は多そうだけどな。でも陰樹や陽樹とかの情報をあの図書館からは得られなかったということは案外秘匿されていることなのかもしれないな。


「つまるところ長老、あんたはこの樹を護り続けているってことだよな?何のためにだ?災厄を降り注ぐことでその組織は一体何をしたいんだ?」


災厄を世界に振り撒かないようにするならこの陰樹を守るという理由は合点はいくけど、でもそれは陰樹を見守るという言い方であっているはずだ。それなのに護ると言った。災厄とは一体何なのか?

恐らく長老やその他の陰樹の守護者も一体何を護っているのかは定かではない筈だ。だけどその組織とやらはその災厄というのを何が起きて5つの災厄を解放した時に何が起きるかも知っていることになる。

だってそうじゃないと組織が何の目的で災厄を降り注ぐのか理由が分からない。目的を持って行動しているのは定かであって組織の最終的な目標に必要な条件と考えられる。

そして今の俺の問いの答えは聞かずとも分かっていた。だけど確認せざるを得ない。


「済まない。ワシを含めこの樹を護る者達誰もがその組織から護るようにと伝えられてきた」


ーーーーーーーーーーーーー


零蒔はラントでの記憶から1つの答えを導き出した。長老の言っていた組織というのは十戒だということ。


だけどあいつらは表だって行動するのは俺らが召喚されてからだ。

いやあいつらは表だってとは言ってたけど何かをしていないとは言ってない。あいつらは十戒という名前で行動しているのを表だとして名前を開示せずに行動しているのを隠れてやっていたと言うことか。シウバの発言からして犯行声明はするみたいだしな。勝手な憶測になるが…。

奴らが名前を開示せずに行動しているのは俺らが召喚されるまでに素性が割れるのを恐れた。そして今回初めてその素性を俺にバラしたということだ。

シウバたちの狙いはその陰樹を破壊することだ。

長老を含めあの村で戦闘できる人達はみんなあの陰樹について知っているはずだ。レナは…知っている。いや知っていてほしい。あれだけ強いんだ。長老が何も伝えてないわけがない。

レナが仮に知らなくても今回の騒動をいち早く聞きつけている。だとすると、もうラントに着いていて事情を説明し終え、ある程度の対策は練れるくらいの時間は過ぎている。


シウバ本来さっきの焔龍を単なる時間稼ぎとしか考えていない。本命は自分で陰樹を破壊することだけ。焔龍だけなら長老たちだけでなんとか出来たと思う。だけど流石にシウバが相手は武が悪すぎる。シウバをレートで表すとSSS級を越える。そしてシウバ以外の十戒のメンバーも同等以上だ。

「いくら単独で強くても数には勝てない」と言うがシウバに対しては当てはまらない。あいつは強すぎる。あれはあの時シウバに見えた雰囲気からは死を1度味わったことがあったかのように思えた。そしてそれは俺よりも濃い『死』というのを味わったことがある目だった。

この力を完全に把握出来てない俺ではシウバからの攻撃を防ぐことしか出来ない。出来ても浅い傷をつけられる程度。どう戦えばいい?どうこの力を行使すればあの狂人と渡り合える。


零蒔の錯乱した感情の中でただ一つ確たる願いは、願望は零蒔を極限までに奮い立たせた。

『レナを死なせてはならない』という願望が彼の心の底に強く鼓動していた。



ーーーーー$^〆×*¥


1人の老人は直感した。

1人の老人は理解し受け入れた。

1人の老人は『死』を悟った。

かつて全てを失った老人はまたしてもその絶望を味わおうとしていた。

何も残されていなかった老人に光を与えてくれた異世界の若者たちは世界の理不尽な理由で死を遂げた。

希望のない目を持った老人は時が来るのを待った。

老人は見た。それが、彼女こそがこの世界に祝福を齎してくれることを。

だから老人は託した。その全てを未来を救えると信じられる希望が現れたから。

だから老人は最後までその樹で護り続けた。

その樹が既に無くなっていようとも。

そこにいつか待人が現れるまで………。

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