火山の巣窟 part4
「フェン!後ろは頼んだ…俺はあのデブ共を集中して討伐する」
零蒔は殆どの防御を捨てた。いや、正確には自分に攻撃してくるものを全て跡形もなく消すという意味だとフェンリルは察した。
さて、これからどうしようかな?こんな狭いところで魔法でも使えば俺やフェンにも影響が出る。
刀で斬るにしても少しでも攻撃を休めばこっちが動けなくなる。
やっべぇ…まじで戦い方どうしよう。何にも思いつかない!
ガァァァァ!とキングゴブリンが吠えるだけで十分だった。それだけで零蒔はおろか、フェンリルでさえ目の前にいる敵が自分達に対して恐怖を与えることが出来た。
咆哮だけで2人に戦慄を与えたということは戦えばどうなるか、など零蒔は武術を修めてるから容易に汲み取ることが出来る。一方、フェンリルは野生の勘と言えば分かるだろうか?いくら零蒔によって創られたとはいえ、獣であることには変わらない。その獣の勘が目の前にいるキングレットゴブリンが危険だと知らせている。
だが、この恐怖を与えたことがゴブリン達にとって最も悪手だった。
「俺は……こんな所で折れるようじゃあいつらを、春を琴音を守ることなんて出来ない!だからいくらお前らが立ちふさがろうとも、吠えようとも俺は止められねぇ!」
今ここにキングレットゴブリン3体 対零蒔の死闘が幕を開ける!
零蒔からは異様な雰囲気が漂っていた。今まで感じたことのないオーラが零蒔から溢れ出していた。零蒔はフェンリルに背中を見せ、キングを守るゴブリの下に歩き出していた。
キングは零蒔が相手だと感じたのか何やら周りのゴブリン達に指示を出していた。その内容はゴブリンの鳴き声だから聞き取ることは出来ないが指示を受けたゴブリンの行動に大方の予想はついた。
ゴブリンは零蒔が自らの大将に向かっていくのを拒むどころか道を開け、3体のキングのところまで障害がないように零蒔を避けていった。
キングは周りに一騎打ちをしたいと思えるように零蒔は感じていた。これにより零蒔はなにか安心したような気持ちになったが、キングからはただならぬ違和感を覚えた。
零蒔とキングの間合いが丁度いいところに来たところで4人を中心に広いスペースができるように囲み、零蒔が歩いてきた道をゴブリンが塞いだ。
「レイジ様!大丈夫ですか?!今そちらに…!!!」
フェンリルはゴブリンに囲まれた形にいる零蒔に不安を覚えて群れの集団の元に駆け寄ろうとしたら後ろから背中を鈍器で殴られたような痛みが走った。後ろに振り返ってみると4人を囲んでいるゴブリンよりも数倍多いゴブリンがフェンリル目指して向かってきていてそのうちの一体が木の棍棒を投げつけていた。
「クソ!こいつらを先に始末しないと!それにレイジ様がくれた指示を早く片付けないと」
圧倒的に数が多いのは明らかにフェンリルの方であり、ゴブリンに対して最も怖いのは数による敗北だ。ゴブリンの群れが1人に対して数十体の多さなら確実に1人の方が不利だ。故に、フェンリルの方が零蒔より厳しい戦いになるのは一目でわかる。否、それはキングがいない時である。キングがいるのであればその戦局は簡単に変化してくる。
キングが一体いるだけでゴブリンの群れの団結力はぐんと跳ね上がり、群れの攻撃力、瞬発力も高くなる。もちろんキング自体ランクAの熟練冒険者と軽く渡り合えるほどの強さ。いわば、群れにおいて最強の部類に入るゴブリンにランクAの熟練冒険者がいると考えればいい。
今回はキングが3体いる。つまり、目の前には熟練の冒険者が3人がいるという事だ。故に、今圧倒的不利な立場にいるのは零蒔なのだ。
「フフフハハハハ!貴様ら害悪共はこの私が屑へと返してあげましょう!」
フェンリルは不敵な笑いをこぼし、口調が荒くなったが、フェンリルの今の雰囲気からはゴブリンたちを怖気ずかせることは容易に出来た




