パート1
テルミニア帝国とシッカ王国の国境にはある集落がある。集落の正確な位置はシッカ王国の領内にある。国境というよりシッカ王国の王都が、そもそもテルミニア帝国との国境にあたるラインに隣接しているためシッカ王国の領内にあるとなっている。
その集落は迷いの森と呼ばれる場所にある。その森に侵入すれば忽ち元の場所に戻ってしまう不思議な森となっていて、そういった森があれば森の中にエルフがいるといわれている。
エルフは普段人里から離れているところに住処として暮らしている種族であったが、国際法のによるエルフを強制的に奴隷にすれば罪に問われると法が定められておかげで人里に近い森に暮らすようになった。
エルフは魔法との関連性が高い精霊族と深く関わることができると言われている。
そのため「エルフは精霊族の血が流れているとも言われていため」と「エルフで生まれてくる男女は必ず美男美女で生まれてくるため」という二つの長所によって、貴族やソロの冒険者にとっては奴隷の標的で奴隷商人からすれば需要が高く、さらに高い金額で売ることができるので攫うといった非人道的な行いをするようになったため国際法によって強制的に奴隷を搾取する行為を禁じる法を定めたと言われている。
迷いの森と呼ばれるがエルフが森全体に結界を張るためその結界が人々を迷わせる原因となっている。この結界を外すことは国際法では定めておらず、これからも定めることはないだろうと思う。
エルフは実際、冒険者として活躍するため冒険者ギルドに加盟している者が多くエルフの街や村には経験者が大勢いる。それぞれの街や村にはエルフを治める長老がいて、各地にいる長老をまとめる『リヴェル』と呼ばれるエルフの頂点がいるとも言われている。
迷いの森に結界が張られているためなのかわからないが、エルフの街や村がある森が神秘的な森になっている。空気が澄んでいて魔物の森とは違って陽気に思える森だと一目でわかるらしい。魔物こそいるが凶暴な魔物はおらずエルフの狩猟として狩られる程度の強さなので、よっぽどの戦闘経験皆無の者以外であればそんなに困るほどではない。
話を戻そう。シッカ王国の王都のはずれにはあるエルフの村がある。そこの村と王都は友好的な関係で非常に仲が良いとされている。
そこのエルフの村はラントと呼ばれ、ラントと帝都の距離はものすごく離れている。
国境といっても、帝都から王都まで早馬でも3、4日は掛かるため情報が入ってもその情報が遅れて耳に入ることが多々ある。
災害などの情報はエルフに渡るにはまず王国を通してからじゃないと情報は入ってこないのだ。王都に稼ぎ行っているエルフや親密な関係にある商人や冒険者から情報を得てラントに持ち帰るという手間を掛ける必要があるため、王国は緊急時特例としてラントとに繋げる転移門を開設しその問題を解消した。
ラントに住むエルフの少女は王都にあるギルドから帰宅するためにラントを囲う森に入るところだった。いつも通りの道のりを歩いていると普通の人間でも浅い森にしか入れないのにラントに近い、森深くまで迷い込んでいた人間を見つけてしまった。
その人が男だとすぐわかり商売目的のために侵入してきたのかわからないが監視することにした。ラントに住む仲間達を守るためとして。
よくよく見てみるとその男は左に剣に貫かれたような傷と全身に斬られた痕があった。また流血がひどく彼がふらふらと歩いていた場所に血痕を残していた。
男は少しばかり周りを見つめ何か安堵したかのように息をつくと近くにあった大木に倒れこんだ。
その様子を見ていた少女は、すぐに近くに行き無事であるのか確認をした。
「大丈夫ですか⁈何があったんですか!」
男は意識を手放しているのに気づいた少女は急いでラントに住む力のあるエルフに助けるようにお願いした。
☆
「知らない天井だ」
零蒔は眼が覚めると見知らぬ部屋の天井を眺めつつふかふかのベッドを堪能していた。
するとそこへ琴音と同じくらいの身長の女の子が入ってきた。
『この女の子エルフなのか?』
零蒔は心の中で入ってきた少女はエルフなのかと考えていた
「あら、お目覚めですか?ラントの森に血だらけで倒れていたので私の家で勝手に治療させていただきました」
丁寧な口調で説明されて、はっ!と零蒔は気づいた。自分がどう行った状況かであったのか疑問に思っていたがというより、考えることを忘れていた。
ラントの森と聞いて、どこだ?と疑問に思い顔をしかめていると少女が何を思い気づいたのかわからなかったがすぐに理解できた。
「あっ、そういえばまだ自己紹介していませんでしたね。私は王都近郊にあるエルフの街ラントに住むレナウラ・シープと言います。軽くレナと呼んでください。種族は見た目通りエルフですが精霊とのハーフです。年齢は普段教えしないのですがこう見えて18なんですよ?」
エルフの少女はレナウラではなく、レナと呼んで欲しいらしい。彼女が精霊族とのハーフだと知り驚いたが、何より驚いたのは彼女の年齢だ。普通エルフは見た目通りの年齢ではない。つまり、見た目20歳、実年齢50歳とかあり得るのだ。エルフは0歳から20歳までは人間と同じ成長過程を過ごすがそこからは成長というより見た目変化がほぼ停止するためである。
零蒔は今は自己紹介をされたから今度は自分が返さないといけないと思い自己紹介をした
「俺はレイジ・ヤカギ。レイジって呼んでくれ!俺は一応17で、勿論人間族だ」
とにかく情報が必要だった零蒔はなるべくレナウラと仲良くなろうと思い気軽に行こうと行った感じでいた
「レイジ・ヤカギ、、、東洋の和国の出身なんでしょうか?」
レナウラは零蒔の名前の響きから言い伝えで聞いたことのある極東の国、和国出身なのかと疑問に思った。
「和国ではないな。似ているといえば似ているが根本的には間違っている」
和国は江戸文学や明治文学などの近代までの日本を映し出したような国だ。零蒔は日本に似ていることを伝えたがレナウラはそんな国あるのか疑問に思っていたがあることを思い出して零蒔に聞き入った。
「そういえば最近テルミニアで勇者召喚が行われたと聞いたんですが召喚された人達は和国の人に似ていたって聞いたんです」
零蒔が異世界の人間で勇者召喚に巻き込まれたというのか迷ったがレナウラが勇者のことを話したことで、ここである程度教えておけば後で困ることはないだろうと思い教えることにした。
「まぁ、信じてくれるかわからないが、その勇者召喚で1人多く召喚してしまったって情報も入ってると思うんだが、俺はその巻き込まれた勇者と言っていいのかな?」
「誤召喚があったという話は耳にしました。ではレイジさんは巻き込まれた勇者ということなんですね」
なぜか少しがっかりしてるように見える表情のレナウラであったがすぐに元に戻った。
そんなに勇者であって欲しかったのだろうか?そしたらなんかショックだな
零蒔は内心そう思っていたが実際、レナウラががっかりしたのは勇者召喚に巻き込まれた関係のない方が魔獣の森などに使われる現実にショックを受けていた
「それに俺のことは軽く零蒔とでも言ってくれ
巻き込まれの人間に丁寧にあたることなんてないから」
零蒔はレナウラに巻き込まれは何も偉くないと伝えたがレナウラはそれを拒否した
「それはできません!巻き込まれだといえど勇者様であるには変わりません。ですのでこれからはレイジ様と呼ばせてもらいます!」
レナウラは零蒔の申し出を断りレイジさんとは呼ばずにレイジ様と呼ぶようになった
〜〜〜20分後〜〜〜
零蒔はレナウラにラントの森に血だらけでいた理由を話し、大まかな内容をレナウラは知ったところでレナウラからある提案があった。
「それではレイジ様はもう少しばかりここにいてはどうですか?ラントの皆んなにはレイジ様を運んでもらっているので人間族がいるというのは知っていますので」
レナウラは零蒔の話を聞いていたりラントの街に運んだことなどを話したので堅い丁寧口調はなくなり、零時はレナウラの呼び方を愛称のレナと呼ぶようになったが相変わらずレナウラは様付けで呼んでいた
「まぁこのまま居座ることは駄目だと思うからエルフのみんなが良いって言ってくれたら残る」
「では確認していきましょう!」
零蒔はさすがに勝手に居座ることは駄目だろうから街のみんなに了承を取りたくて、レナウラと一緒に確認して回ることにした。
「おう!レナ、そちらは確か森で見つけた人間の男か?どうだあんたこの肉食べて行くか?」
零蒔は屋台にいるおっちゃんに話しかけられ肉まで貰ってしまった。急な展開すぎてレナウラでさえ固まってしまっている
「そうだ!おいあんたなは何という?俺はダインって言うんだ!肉屋のダイン、ダインのおっちゃんとでも呼んでくれ!」
自己紹介を先にされてしまい戸惑ってしまったがすぐに自己紹介を返してあげた
「俺はレイジ・ヤカギ、レイジと呼んでください」
ダインに零蒔は和国の出身なのか?と聞かれ、レナウラに説明したものを要約して教えると「辛かっただろう、苦しかっただろう。俺らはレイジのことを歓迎するぜ!」と言われ本所の目的を勝手に解決されてしまった。