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最強魔術師が魔法世界で無双する?!  作者: 金糸雀
一章 テルミニア帝国で英雄譚の始まり
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パート10

 


「ギィギュイギギギギュウァグァァァァア!!!」


 全員は硬直してしまった。

 なんともいえない鼓膜を突き抜けるような雄叫びに。

 その場にいる全員がその雄叫びの発生源を目で探すとそこに居たのはドラゴンだった。いや、ドラゴンであってドラゴンになりきれてない生物。人間のシルエットが微かに残るその図体はファンタジー小説に出て来るドラゴニュート(龍人)であった。

 そのドラゴニュートは身長が3メートル近くあり、顔がドラゴンで筋肉むきむき、爬虫類の尻尾のように硬そうな尻尾を垂れ下げていた。

 さらに、二本の大剣を両手にしっかりと持っていた。


「ど、ど、ドラゴニュートだとォォォォオ⁈!」


 やっとの事で声を出したのが総団長シンク・マルケニアであったが、驚愕と恐怖、絶望の感情が言葉から読み取れる。


「なんでこんなとこに居んだよ!」「なんでだよ!ここで死ぬのか?俺は」とか騎士団の連中はシンクさんの驚きに続き、絶望感に駆られていた。そんな騎士達の様子を見てヤンキーポジションの悠木と取り巻き達はより一層恐怖に陥っていた。

 無知な勇者でもレベルの違いは理解出来る。勇者でもダンさんには遠く及ばないことを理解している奴らなら尚更だ。

 この世界はレベルの違いはその生物の雰囲気からだいたい読み取れる。

 だが、ここでただ1人そんな状況を一転させる人物が口を動かした。本人は無意識だろう。彼は別段その生命体に絶対敵わないとは微塵たりとも思っていない。恐らくレベルの差に気づいてないのだろう。


「シンクさん、あそこにいる魔物のことをドラゴニュートって言いましたがいったいどんな魔物なんです?」


 この言葉で周囲の空気は一気に凍った。発言者は日頃から御都合主義のみんなのアイドルの愁だった。愁のご都合主義っぷりは、無意識に発揮されてしまうし、愁自身良かれと思い聞いてしまったが、今回の場合は状況が状況のため『ドラゴニュート』という存在を知っている騎士団と図書館の本を読み漁った零蒔はその言葉で震撼した。


「おい!そこの人間!今俺様のことを魔物とか言ったな?ふざけるのも大概にしろ!俺様は魔物じゃねぇ。龍人族のハウルだ!あんな俗物と一緒にすんじゃねぇよ」


 龍人族ードラゴニュートと呼ばれる種族。

 獣人族と同じ分類に配属されていたと聞くが、あるきっかけでうさぎや犬、猫、鳥、ライオンなどの獣人族とは違う獣人類だとわかり龍人族という新たな枠にあてがわられたと言われている。龍人族は魔物のウルファウルとコボルト、シーアンに似ていることから龍人族の存在を知らない者から魔物と呼ばれることがあり狩の標的にされてしまうことがある。

 よって、周囲から魔物と呼ばれると攻撃的になる。

 基本的に龍人族含む亜人に分類される生物は魔物と同じ枠組みにされることを忌み嫌っている。


「龍人族?それなら申し訳ありませんでした。ところでハウルさんでしたっけ?なぜボスではなくあなたがいらしたんでしょう?」


 愁は何気なくクラスの連中が知りたがっていることを少し強い口調で質問した。

 無論、この発言でも零蒔や騎士団の人たちはやめてくれと視線を送った。

 なぜなら、ドラゴニュートは獣人族という枠から外れてから魔族との交流が盛んになった。

 それでもどちらにも交流があるため良い龍人がいないということは無い。

 ただ魔界領を統治する魔王の部下にはドラゴニュートがいることもあるから決して我ら人間側の種族ではないからだ。

 そして龍人族がダンジョンの中でボス部屋という中に待ち構えていた場合、それは自らが魔王軍であると示す最もたる証拠なのだ。


 やはりこの世界に来てから【ラビア】について学ばせるべきだったと後悔したシンクであった。


「グハハハハハハァァァ!本当に近頃召喚された勇者らというのは無知だったのだな」


 と龍人族のハウルが質問した愁に対して嘲るように笑った。

 ハウルが愁とて少し恐怖から立ち直りつつあるクラスメイト達に対して「勇者ら」と言った瞬間、少し温和な空気がそこに流れていたがハウルによって緊迫した空気が漂った。


「まぁそう固くなるなよ。気軽に楽しもうぜ?

 今から起こる最っ高のショーをよぉ!」


 零蒔は多少なりとも可能性があると考えていたが今のでその考えを破棄した。今はどう勇者を逃がすかを考え始めた。


「シンクさん!こいつ魔王軍のやつです!」


 零蒔はすぐにまだ恐怖から抜け出せていないシンクに呼びかけた。ハウルにも分かるように無知ってぽさを晒しつつ的確に動かせるように言った。


「え…あ、ああ。確かにそうだな。淡い期待だったがそんなわけないよな。すまんな、レイジ。すぐに退避するぞ!てめーら、絶対に勇者1人殺させんじゃねぇーぞ!」


 やはりシンクはまとめることに長けていた。恐怖で固まっていた兵士たちをすぐに行動させ明確な指示を出し始めた。

 だがそんな状況で愁達は驚いていた。なぜなら零蒔が魔王軍の奴らだと言って冗談かと思っていたのだが、シンクが肯定したため事実へと変わったからである。


「ま、待ってください!なんでハウルさんが魔王軍だってわかったんですか?」


 そう、当たり前なのだ。何も知らない勇者がそう簡単に確立することができないということが。


「グハハハハハハァ!本当に無知な勇者どもだ

 なぁ。シンクお前はいや、お前らは何にも教えてないようだから俺が特別に教えてやるよ。

 龍人族がボス部屋で待ち構えている行為は自らが魔王軍ですと示す象徴でもあるんだよ」


「そんなこと、、、だってここは誰も入ることができないしボスだって倒されてないのに…」


 本には書かれていないこともあるだろうと思い俺はこっそり世界の情報を集めるために騎士の片っ端から色々と聞き出していた中に魔王に関しての情報があった。

 4人いる魔王のうち1番好戦的なのが『柳影デモイトス』という魔王でその部下の名前の中でたしかに『狂剣ハウル』が存在していた。

 俺はそれを知っていたがために無知である愁に苛立ちを覚えた。


「愁!ハウルはな魔王軍の幹部なんだよ。それもデモイトスの右手って言われてる!今は引くことだけ考えればいい!今の俺たちじゃ勝てる相手じゃねえ!」


 零蒔が愁に説得を促したがそれでも動こうとはしなかった。目の前の事実を受け入れようとしないからだ。いきなり目の前に喋る生物が現れて「強い敵だから逃げる」と言われ素直に受け止められるかって問われるなんて無理な話だ。


「ほう、そこのお前は俺のことをいや、大体のことは理解できるようだな」


 一通り指示を出し終えたシンクが血相を変えて龍人ハウルにある質問を投げかけた。シンクはいきなりのことで取り乱しはしたがハウルの存在は知っていた。


「なぜハウルがここに来るんだ?なんの目的でここに来た?」


 この場にいる誰もが聞きたがっていたことであるが、「そんなことより…」と割り込んで質問して来る愁が邪魔して来るため今は全員で抑えている。


「理由か?俺は陛下に「勇者14人の力を見てこい。場合によっては殺しても構わん」と命令をくださったからだ。勇者召喚で14人と聞いていたのに失敗したと聞いたときは嬉しく思ったがまさか15人と増えるとはな」


 淡々と述べるハウルだったが今にもこちらを襲いにこれる殺気を放っていた。


「いいか愁。龍人族固有の魔法があってだな。その魔法は迷宮のボス部屋を乗っ取ることがで来てしまう使役魔法の一種を産まれながら所持している。だからあいつはここにいるってわけさ」


 愁が気になっていることを扉に戻りながら説明している零蒔であったが愁に教える態度は周りからすれば非常に不機嫌な状態だった。

 愁の幼馴染とはいえ自分たちより弱いと思っている零蒔がそんな態度に嫌悪した女子達は零蒔を睨み付けていた。


「とりあえず俺たちはあのハウルってやつには及ぶことができねぇから必死にシンクさんが騎士達で固まっているやつを無理に運んでいる。分かったか?」


「でもなんで相手が魔王軍だと分かって逃げるんだ?」


 これでも質問を投げ返す奴がいるとは。やはり無知というのは怖いな。


「ハウルというのはな、俺自身あまり知らないけどシンクさんが名を知った瞬間、顔を青くしていたからシンクさんと同等かそれ以上ということになる。今の俺らはシンクさんは愚かダンさんにも及ばない!だから今は引くことになったんだよ」


 走りながら零蒔は中央にいるハウルに目をやるとこちら側を見てニヤニヤしていることに疑問をもった。確かにこちらを見ているが実際見られているのは別のやつだからだ。

 その目線の先に目をやるとそこにいたのは、なんともおぞましいオーラを放つ金井がいたのだ。そして、最も当たってはいけない嫌な予感が的中してしまう。


「そこの小僧、悪魔と契約しているな?」


 唐突な質問と急に勇者にはありえない事象のことを言われてシンクはキョトンとしてしまった。

 ハウルが話しかけたのは金井で質問の理由が悪魔との契約についてだったからだ。運がいいのか愁達は悪魔に関することには知識を入れられているためシンクと同じ表情をしていた。


「な、なんでぼ、僕が悪魔と契約してると分かったんですか?」


 愁達は否定して欲しかっただろう。この質問には今は否定して欲しかった。金井はそんな願いを簡単に打ち砕いた。

 ハウルは悪魔と契約しているとわかると口角を上げて金井にある提案を投げかけた。


「如何してかは教えないが、まだその力を存分に発揮することができてないみたいだなぁ。その力を陛下の元でさらに扱えるようになるが、どうだ俺様と来るか?」


「僕はあなた達魔王を打ち倒すべく、悪魔と契約しました。勇者である以上あなた方らの元には降りません」


 金井が拒否してくれたことに全員が安堵することになったが裏切られることになった。


「何、別に入ってくれとはいわねぇよ。その力に飲まれ悪魔と化すと陛下であっても殺すのは困難なんだ」


 零蒔は嘘だと直感した。

 金井に取り憑いた悪魔は明らかにデモイトスが寄越した悪魔と勘付いたからだ。


「その力に飲まれず、逆に利用することができるようになれる。どうだ?お前の望む全てが手に入るぞ?」


「全て…ですか?」


 何やってんだ俺は!なんで体が動こうとしない!いますぐに金井を連れて行かないといけないのに口も動かなければ体すら金井に向かって伸びることはなかった


「全てだ。ほら、この俺様の手を握れ」


「本当に全てが手に入るのなら、僕は付いていきます」


 金井が付いていくと言った瞬間金井は黒い光に包まれその場から消え去った。誰もが絶句していたが、そこでただ1人口を動かせた者がいた。

 クラス全部に気が回る愁だった。


「ハウルと言ったな、遼くんをどこへやった?

 返してもらおうか」


 ナイスだ愁!おかげでみんな硬直から覚めたよ。

 簡単に心内で感謝した零蒔は絶対返してもらえないことを分かっていたので、足を止めた愁に近寄り手を引っ張った。


「愁、今は諦めろ」


 声を低くして言った。


「どう意味だ?零蒔は遼くんが連れていかれてもなんとも思わないのか?」


 すでに扉に到達することができていないのは愁と零蒔だけであり、扉にいるクラスメイト達は橋の途中でハウルに相対した2人に早く来るように呼びかけた。

 零蒔はそんな状況でクラス最高戦力である愁が足を止めてしまっては逃げられる可能性がなくなってしまうと考えた。


「今使われたのは転移魔法で、転移先が固定されているものだ。恐らくデモイトスがいるとこだろうが。簡単に言えばな、転移魔法が発動し転移が成功すれば、こちら側から元に戻す方法がないわけ。召喚魔法の下位魔法って感じ」


「それでもどうにか取り…「今は逃げることだけ考えればいい!金井はともかく愁、お前までがなんかあればあそこで待っているやつをどうすればいい?」…そ、そうだな。わかった。今は下がることにするよ」


 これで全員が助かると思われたが、それは杞憂に終わった。

 本来勇者を殺すために待ち受けていた龍人が簡単に勇者を逃がしてくれるわけがなかった。


「おいおいおい!俺のことを忘れてもらっちゃ困るんだけどなぁ?」








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