俺の気持ち
あの日の翌日福井さんから改めて
「ありがとう、これからも何かあったらよろしくね!」
と笑顔で言われた。俺は、その『何か』がずっと気になっているが、彼女が話してくれるまで待つことにした。
せっかく出来た二人の秘密。少し変わった絆。俺は、そんなものが出来たと思っている。
でもその次の日から福井さんとは、全然 話したりすることも無くなった。
それでも俺は、時々視線を感じる。自意識過剰かも知れないし、本当に勘違いかも知れないけど俺が感じる視線は、いつも福井さんが居るところから感じる。
そんな自分がおかしくなってしまったと思い、これ以上酷くならない様に福井さんの事を考え無いようにしていた頃、授業中に福井さんが保健室に行ってしまた。顔色も普段から白いのにそれ以上であまり目に生気を感じられなかった。
クラスの皆も心配していた。
「あんな優芽ちゃんは、初めて見た」と。
俺は、一人思っていた。
あの日見た顔だ、、、、!
あの事件の日。窓からこっそり見ていた時。そぅ、福井さんがたった一人で泣いていた時の顔。
俺は、背中に冷や汗をかいた。
また、一人で泣いているのかも知れない、、、と。
俺は、授業が終わった瞬間教室から飛び出した。
俺は、福井さんの変化に全く気づかなかった。今、もし本当に泣いているならどんな思いで、どんな風に泣いているんだ。
そばに居てやりたい、、ずっと、、、、守ってやりたい。
俺が、
あいつを一人にさせない。
バンッ!
勢い良く保健室のドアを開いた。運良く先生は、一人も居ない。
保健室の端っこ。たった一ヶ所だけカーテンの掛かったベッドがある。そのカーテンを俺は、ゆっくり開いていく。
徐々に見えてくる彼女の姿。その後ろ姿は、小刻みに震えていた。
「おい!大丈夫か?」
サッと一気にカーテンを開けると俺は、彼女に飛びついた。
その瞳に涙は、無かった。ひとまず安心したのも束の間俺は、ギョッとした。彼女の瞳には、俺が写っていない。
目の輝きがなく、視界に入るはずの俺が居ない。
「おい!しっかりしろ!」
彼女の肩を強く握りながら揺らす。
彼女の瞳に俺が写る。
「北見、、、君?」
声にも張りがない。かなり深刻な状況だ。
「どーしたんだよ?」
「、、、、北見君、ギュッてして」
「え?」
「あのね、、涙も出てこない位悲しいの。、、、涙という形で北見君の目に見せることは出来ないけど、あたしの心、ボロボロなんだ、、」
うつむきながら語る彼女の話を俺は、聞く。
「良いよ。ゆっくりで良いから。」
その言葉に福井さんは顔を上げた。
必死に伝えてくる。
「誰かに助けて欲しい。一人は嫌。寂しい。北見君、、私を助けて。支えて。もぅ一度あの日みたいに抱きしめて。
その温かさで私の心、、、癒して。
だっ、、抱き、、しめ、て、下さい。」
ふらふらしながらこう言った彼女の事を俺は、ゆっくり、優しく抱き締めた。
彼女の体が俺に寄りかかる。胸に顔をうずめ、少しすると体の震えも収まってきた。
そのとき俺は、思った。彼女を守って、支えるのは俺なんだと。
俺は、自分の胸に体を預けて寝てしまった彼女をベッドに降ろした。
固い意思を胸に秘めながら。