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かえるといもむしの友情?

作者: 楸 椿榎

とある雨の日のことでした。

「げろげろげろげろぐわっぐわっぐわ~」

かえるさんは葉っぱの上で気持ち良さそうに歌っています。

「かえるさん、今日もいい声ですね」

茎を登って話しかけてきたのは、いもむしさんでした。

「やあいもむしさん、ほめてくれてありがとう」

いもむしさんとかえるさんは、とても仲良しです。

「今日もやろうと思うんですが、これから空いてますか?」

「ああもちろん、空いてるよ」

かえるさんの返答を聞いて、いもむしさんはにっこりしました。

「じゃあ、さようなら、かえるさん」

「ああ、さようなら、いもむしさん」

お別れの挨拶を終えると、かえるさんはまた歌を歌いだし、いもむしさんもまた登りだしました。

うんとこしょ、どっこいしょ。

いもむしさんはがんばって、一番上の葉っぱにたどり着きました。

「いちばん上の葉っぱが、一番おいしいんだ~」

それは、下の葉っぱよりも日光が当たりやすく、光合成によりたくさんの栄養分が作られているからです。

「いただきま~す」

むしゃむしゃむしゃ。

「う~ん、おいしい~」

むしゃむしゃむしゃ。

いもむしさんは夢中で葉っぱにかぶりつきます。

いもむしさんが食事に夢中になっている間に、後ろから怪しい影が迫ってきていました。

「へっへっへ、こいつはうまそうないもむしだ」

その正体はかまきりさんです。いもむしさんを見てよだれを垂らしながら、両手の鎌を研いでいます。

抜き足、差し足、忍び足。

一歩、また一歩と、いもむしさんに近づきます。

抜き足、差し足、忍び足。

そしてとうとう、いもむしさんのすぐ後ろまで来てしまいました。

「いただきま~す」

かまきりさんの振り上げた鎌が、いもむしさんの胴を切り裂く!

と、そのときでした。

ペロン

「へっ?」

かまきりさんの鎌は、ぬめっとした太い紐にからめとられました。

いや、正確には、それは紐ではなく。

「こ、これはかえるの!?」

そう、それはかえるさんの舌だったのです。舌は掃除機のようにキュルキュルとかえるさんの口まで巻き取られました。当然、鎌を捕まれているかまきりさんも一緒に巻き取られ。

バクン

かえるさんの口にすっぽり入ってしまいました。

「おや、かえるさん。また会いましたね」

先程まで自分の後ろで起きていた命のやり取りなぞ露知らず、いもむしさんは後ろのかえるさんに気づき、陽気に話します。

「おや、いもむしさん。奇遇だね」

かえるさんも、さっきのことは言わないようです。知らないことがいいことも、あると知っているからでしょうか。

今日もかえるさんといもむしさんは、とてもとても仲良しです。

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