金魚
父「まったくなんなんだアイツは!母さん塩もってこい塩!」
母「はい。どうぞあなた。」
父「よし、早速撒くぞ!そりゃっ!二度とくんな!汚らわしい!……母さん。これ塩なんだけどさ、ここ一回目醤油でボケるって昨日の夜打合わせしたよね?」
母「……」
父「なんとか言ったらどうなんだ。そんなんじゃプロの芸人にはなれないぞ。」
母「…あなた昨日が何の日だったか覚えてる?」
父「昨日…しまった。スマン母さん。」
母「そうやってあなたは毎年忘れるのよね。金魚のキンちゃんの命日。」
父「って金魚かい!うん。母さん今のはなかなかいいボケだったぞ。」
母「……」
父「あれ?本気で怒ってる?いや、だって金魚だよ?犬とか猫ならわかるけどさ。」
母「金魚だって大切な家族の一員よ。思い出してごらんなさいよ。あなたが毎日エサやって話しかけて水槽の掃除も世話も全部あなたがやってたじゃない。」
父「お前何もしてないじゃないか!」
母「そうね。でも美味しかったわよ。」
父「ん?美味しかったってお前まさか。」
母「金魚って意外とイケるのね。」
父「食べたの?そういえばあの日帰ってきたら金魚鉢既にからっぽだったけど…何があったのって聞いたら死んでたから片付けたって言ってたじゃない。あれウソ?食べたの?」
母「あの品種はあれぐらいが食べごろらしいのよ。」
父「金魚の食べごろって何、聞いたことない。さっき家族の一員って言ってなかった?家族食べたの?」
母「私達のお腹の中に入ってやっと家族になれたってこと。」
父「それってあり?それがまかり通るならうちの家族メチャクチャ増えるよ?」
母「あなたも美味しいって言ってたじゃない。」
父「俺も食べたの?いつ?」
母「冗談よ冗談。金魚食べるわけないじゃない。」
父「ははは。そうだよな。母さん演技うまいから騙されちゃったよ。」
母「ところで次に飼う金魚はこれにしようと思うんだけど。成長するのが早いらしいの。」
父「やっぱり食べたね?そしてまた食べたいと思っている!」
母「ところであなたが撒いたこの塩。誰が掃除すると思ってるの?」
父「いや、でも今は金魚の話が途中だし…」
母「ごまかさないの。」
父「ごめんなさい。」
母「わかればいいの。じゃあ掃除しておいてね。」
父「え?」
母「何か?」
父「なんでもないです。ほうき取ってきます。」
母「じゃあ私は金魚注文しておくから。」
父「お願い観賞用にして。」
母「飽きたら食べるって理にかなってると思うの。料理は見た目も大事って言うでしょ?目で楽しんでから食べるのよ。」
父「なんか違う。」
母「そうね。じゃああなたは食べなくていいわ。」
父「こっちからお断りだよ!」