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第7話 騒乱の夜

 街中で起きた騒動による振動が、地響きとなって城の中心の館を揺らす。


 一応珍しくはあるものの、ここフォルセールではあり得なくはない話であり、そしてアルバトールにとっては今朝方から予想していた展開ではあった。


 そのため彼は落ち着いた様子で立ち上がり、騎士団の詰所へ向かおうとする。


 だが来賓を招いての晩餐会の最中にも関わらず、退席の挨拶をしていなかった彼は、フォルセール領主であり、父でもあるフィリップへ体を向けた。


「フォルセール騎士団、騎士隊長アルバトール。宴の途中でございますが騒動の原因を突き止める為、席を辞する事をお許し願います」


 笑顔で退出を認めたフィリップは直後に顔を引き締め、任務に際しての最優先事項を口にした。



「民の安全をまず第一に確保せよ」



 アルバトールはフィリップに承知した旨を返し、広間を飛び出して廊下を走り抜け、ホールへと辿りつく。


 そこには一人の人物が、彼の剣を捧げ持って待っていた。


「いってらっしゃいませ、アルバ様」


 それは彼が退出の許可を求めた時には、既に広間にいなかったベルトラムであった。


「鎧は馬小屋の方で」


「ありがとう。君の手際には恐れ入るよ」


「ご武運を」


「そうだね」


 珍しく任務に対して気乗りしない様子のアルバトールの返答を聞き、ベルトラムは胸中でいぶかしむ。


 しかしすぐに苦笑いを浮かべた彼は、アルバトールへ剣を渡した。


「そう言えば、今回の任務にはエンツォ様も同行されておりましたな」


「そう言うこと。機嫌次第ではすぐに戻ってこれると思う」


「それでも少し時間がかかるでしょう。その間に私は、先ほど出せなかったデザートの作成に取り掛かっておきます」


「それは励みになりそうだ。では行って来る」


 ベルトラムが開けた玄関より飛び出し、アルバトールの姿はすぐに闇の中に消える。


 それを見送った後に厨房へ向かおうとしたベルトラムが見たのは、やはり広間を辞したエルザの姿であった。


「おや、司祭様が食事の途中で退出なされるとは……いえ、デザートを食べる前、ですか」


「あらあら、貴方が私に軽口を叩くのも珍しいですわねベルトラム。執事になってからは黙々と忠実に、目の前の仕事をこなすだけの有能な人間になっていたのに」


「人間は成長するものでございますよ、司祭様。何も御用が無ければ、私はデザートの作成に移らせていただきますが」


「あらあら、それは何より優先すべき最優先事項ですわね。私もアルバトール卿に用がありますので、このまま後を追いますわ」


 エルザは言うが早いか、そのまま扉をくぐろうとして。


「くれぐれも私の分のデザートを忘れないように」


「かしこまりました」


 ベルトラムに念を押す。



 そしてアルバトールに続いてエルザも見送ったベルトラムは、いつもより広さを感じるホールで一人嘆息し、調理場へ向かった。


 まるで歩くと言うよりは、廊下の上を滑るように。




「家の中に戻るように! 大事ない!」


 アルバトールは馬上から、騒ぐ領民へ向かって叫びながら詰所へ向かう。


(魔族による陽動と言う事はないだろうが、油断はできない)


 そして詰所に飛び込んだ彼が見たのは、当直たちが血相を変え、慌しく動き回る姿だった。



「この騒ぎの原因と、現在起きている案件を簡潔に教えてくれ!」



 その叫びを聞いた隊員たちが次々に表情を緩め、報告を始める。


「ランクAA、場所は城壁の第一から第二の南東。そして城壁第二から第三、北北西の酒場で喧嘩です」


 "隊員たち"から受けた報告内容は、ほぼ予想通りだった。


 だがそれは隊員たちの情報をまとめ、指揮をとる者がいないということでもあった。



「アラン殿はどこだ!」


「アラン隊長は通報を聞いた直後に、一人で現場へ向かわれました!」


 先ほど報告してきた隊員が告げた内容に、アルバトールは浮かない顔で答える。


「次からは体を張ってでも止めてくれ。これが陽動の可能性もある。詰所で指揮をとるものがいなければ、残された者が団ではなく、隊員としてしか動けなくなるからね」


「申し訳ありません……」


 アルバトールは自分より年長である騎士が悄然として答える姿を見て、領主の息子でもある自分の立場を思い出し、軽く頭を下げた。


「すまない、アラン殿を君たちだけで留める事は難しいだろう。この町の情報をきちんと伝えなかった我々にも落ち度はある」


「エレーヌ小隊長がいらっしゃれば良かったのですが」


 アルバトールはそれを聞き、溜息交じりに答えた。


「エレーヌ小隊長は時期的にアレだ」


「アレですか」


 騎士は先ほど叱責された時より落ち込んで体をよろめかせるが、それを励ます時間的余裕はアルバトールには無かった。


「団長が来るまでに、君たちの手に負えなさそうな通報があれば続けて待機。先ほどの酒場などのちょっとした騒ぎであれば対処してくれ。ただし最低限の人数、十人ほどは詰め所で待機しておくように」


「隊長はどうされるのです? 」


「僕はランクAAの現場へ向かう。自警団の者が来たら三人一組で市中を回り、領民を安心させるように言っておいてくれ」


 そしてアルバトールは再び馬に乗り、現場へ向かう。


 衛兵に開門を命じ、不審者の有無について報告を受けた彼は、目の前の暗闇に馬首を向けた。


 普段は演習場に使われる事もある、延焼防止のための広大な空き地へ。



(上手く立ち回ってくれていれば良し、そうでない場合は……)


 これからの行動を考えていたアルバトールの横に、いきなり光の玉が舞い降りる。


 そして自分に着いてくるように並走を始めるのを見て、彼は即座にその光について看破していた。


(飛行術。しかも馬に追いつけるほどの使い手は国中を探してもそうは居ない)


 結論を出した彼は、光の玉に向かって呆れたような声で警告をする。


「使用に際して光り輝く故に、夜間の飛行術は領民の不安を煽るとして禁止されておりますよエルザ司祭」



 言葉に咎める雰囲気はない。


 初歩の初歩とも言える法令を、エルザが知らないと言う事は有りえないからだ。



「ただし緊急時には例外、でしたわね」


 その返答を見るに、エルザにも騒動の原因が分かっているのだろう。


 そのままアルバトールに着いてくるが、珍しくその口数は少なかった。


(無駄口を叩く時間すら惜しいって事かな? その裏には何の思惑がある事やら……まぁデザートが早く食べたいとか、そんな理由なんだろうけど)


 そんな失礼なことを考えていた彼は、エルザが彼の顔を半眼で見つめていたことに、しばらく気付かなかった。


「淑女の顔をジロジロと見るのは非礼ですわよ、アルバトール卿」


「これは失礼しました。ひょっとして御助力いただけるのですか、エルザ司祭」


「まぁそれほど頻繁に起こるものではありませんし、騎士団だけで解決する事はなかなかに難しいですからね」


「確かに。ところで先ほどの聖別の事ですが」


 その質問を聞き、エルザは不思議そうな顔をして答える。


「天使化した貴方に地上の食べ物を与えるために、聖別を行ってニンジンとピーマンを聖変化させた。つまり天上に住まう者を満たす食物に変えたのですわ」


「ニンジンの方は味が変わりませんでしたが」


 聖変化しなければ口に合わないのであれば、ニンジンだけ美味に感じられたのは確かにおかしな話である。


「理由はいくつか考えられますが、最も考えられるのは貴方が未だ天使化の途中であると言うこと。だからニンジンはそのまま食べることができた」


「なるほど」


「後は、ニンジンが赤色である事に起因するかもしれませんわね」


「赤色? 色が味に関係あるのですか?」


「全く無いとは言い切れません。色は人や世界のありように深く関係しています。まぁこの場合は別の理由ですわね」


「と、言うと?」


「天使は炎を基に生み出された存在です……と言われています。ニンジンの赤が炎を連想させる色だから、貴方の波長がニンジンと同調したのかも知れませんわね」


「……もしや、子供の頃の僕にも聖別したピーマンやニンジンを?」


 苦い顔をしながら質問をするアルバトールに、エルザはコロコロと笑ってみせた。


「あの頃の貴方には口に合わなかったようですわね」


「なるほど、僕に食事を残すことを許さなかった訳だ……しかし立派な幼児虐待ですね。早速告発の準備を整えなければ」


 悪戯っぽい笑みを浮かべ、冗談を言うアルバトールを見たエルザの顔は、なぜか寂しげなものに見えた気がした。


「魔女として処刑されるのはぞっとしませんね。まぁ余程の実害が無い内は放置されるでしょうが」


 その物言いに、アルバトールは自分が冗談では済まない領域に踏み込んだことを察し、即座に非礼を詫びる。


 直後に城で聞いたものとは比較にならない轟音が聞こえ、更には前方で炎の竜巻が巻き起こる。


 そしてその竜巻に巻き上げられた人影が落ちていくのを、彼らは見た。



「今日も派手にやっていますわね」


「吹き飛ばされたのがアラン殿でなければ良いのですが」


「あの堅物は一度痛い目にあった方が良いのですわ。何にでも真正面から当たっていくのは愚の骨頂です。……何ですかジロジロと人の顔を何度も見て」


「いえ何でも」


 逆に貴女はアラン殿の生真面目さを少しは見習ったほうがよろしいのでは、とは流石に言わなかった。


 状況が差し迫っている今、余計な騒動を起こすことはエルザの言葉ではないが、愚の骨頂と思えたから。


 それでもあえて言うのであれば、一瞬で始末がつく類のものであっただろう。


「夜なら顎のラインも見えにくいから、出歩くには最適の時間……とかね」



 ごぁん。


 ぼてっ。


 ごろごろごろ。



「ああっ! 市民の血税で買った支給品の鎧がッ!」


「飛行術の制御に手一杯で力の加減が出来なかったようですわ」


「それでは仕方がない」


 ニッコリと笑いながら答えるエルザを見て、押し黙るアルバトール。


 独り言を言う癖を無くす術はないかなぁ……などと考える彼は、落馬してボロボロになった体で現場に着いていた。



 目の前には燃え盛る一軒の家とエンツォの姿、そして満月を背に浮かぶ一人の女性。



 若干紫色が入った真っ直ぐな黒髪を長く伸ばし、数々の光点を背中に従え、エンツォを見下ろすその姿は、まるで伝説にある戦乙女、ワルキューレのようであった。


「み、みず……」


 そして燃える家の脇には、丸焦げになったアランがパタリと倒れていた。


「しっかりして下さいアラン殿! クッ、私がきちんと貴方にこの町での注意点を伝えていればこんな事には!」


 嘆くアルバトールの姿を見て、エルザは一つ溜息をつき。


「はいはい、少し離れてくださいませねアルバトール卿」


 気絶するほどの火傷を負っていたアランをあっさりと治癒して、エンツォを見る。


「今夜は何がバレましたの? エンツォ様」


「ハッハハ! それがさっぱりでしてな!」


「つまり何がバレたか判らないほどやらかしている、と言うことですわね?」


「然り!」


 そのエンツォの声を合図にしたかのごとく、上空から無数の光の矢が彼に向かって舞い降りる。


 それらの矢を避け、剣で打ち落とし、それでも避けきれない攻撃を皮一枚でしのいだエンツォは上空へ叫んだ。


「うむ! 近所迷惑ゆえ、そろそろ機嫌を直してくれんかエステル!」


「……」


 エステルと呼ばれたその女性は、月を背後にしているために顔は良く見えない。


 だが肩を小刻みに震わせ、うつむいているその姿は泣いているようにも見えた――



 ――のだが、エンツォの要望に対して返されたのは、明確な攻撃意思。



 つまりエステルの頭上に巨大な氷塊が、右腕を振り上げる動作と同時に生まれ。



「あらあら、これではエンツォ様も逃げられそうにありませんわね」


 落ちてくる氷塊を見て、一人でスタスタとその場を離れるエルザ。


「え? ちょっ!? エルザ司祭!?」


 それに続いてアルバトールも慌ててアランを担ぎ、逃亡を図る。


「エンツォ殿は!?」


 離れたアルバトールが振り返ると、そこには信じられない光景が広がっていた。



 体から土色の光を発しながら、氷塊に向かって剣を突き出すエンツォ。


 何の変哲もない剣先に集中した光は、巨大な氷塊をあっさりと粉砕していた。



(なっ!? エンツォ殿は魔術が苦手だったはず! だとしたらあの光は一体!?)


「まったく、はた迷惑な事この上ありませんわね。他人に迷惑をかけずに、粛々と言い争う程度に留められないのでしょうか」


「それを聞いたすべてのこの世の者が、貴女だけには言われたくないと思うかと」


「あらあら、それではこの世の者では無くなれば万事解決ですわね。それでは手始めに貴方から……」


「今日はいつにも増して綺麗ですね~。エステル夫人はまた新しい術でも開発したのでしょうか?」


 力が籠められたエルザの右拳を見て、アルバトールは慌てて話題を変える。


 そして三白眼で見つめるエルザも先ほどの皮肉を追求するつもりはないのか、あっさりとアルバトールの話題の切り替えに乗ってきていた。


「エンツォ様が懲りずに何度も浮気するから、そろそろ新しい責め苦を試すつもりなのかもしれませんわね。しかし本当に綺麗ですわ。さすが当代きっての術士」


「エステル殿の背後に浮かぶ色とりどりの玉……動物のようにも見えますが……赤、緑、青、黄……四大精霊の召喚? でしょうか?」


「そうだとしたら、彼女の魔術は既に人どころかエルフの技すら超越していますわね」


「そうなんですか?」


「種類が違う精霊は互いに干渉しあうもの。なのに同時に自らのしもべとして召喚し、使役することは基本的に不可能ですから」


(では、あの玉は? それに人の身では成し得ぬ事象を知っているエルザ司祭は、一体何者なんだ)


 思いも拠らぬ経緯から湧いた疑問に愕然とし、アルバトールはエルザに質問を返そうとするが、丁度その時にアランが目覚めたために、彼の意識はそちらに向いてしまう。


 もともと皮肉を誤魔化すための話題転換であり、深く掘り下げるつもりも無かったからだが、その会話は予想外の展開を引き起こすこととなっていた。


(エルザ司祭が人間でなくても不思議ではない……だけどここで正体を確かめるには、状況が逼迫ひっぱくしすぎている。まずは目の前で起こっていることの解決だ)


 そう考え、アルバトールはアランを見つめた。


「う……私は一体」


「気が付かれましたか。詰所の指揮を放り出し、単独で来るとは叱責は免れませんよ」


「う、しかし現場に来なければ判らない事実もあろう」


「確かに。ですがこの日に起こる異変が一つと言う事もありますまい。詰所では皆が右往左往していましたよ」


 なおも反論しようとするアランを見て、アルバトールは更に苦言を呈した。


「連絡を密にして現場からでも指示を出せる体制か、残された者にそれなりの対応策を残すべきでした。騎士団はアラン殿お一人ではないのですから」


「……わかった」


 アランが承諾したのを聞いたアルバトールが顔を上げると、そこには何故かエルザのニヤついた顔があった。


「あらあら、任務先の宿屋で私に学んだ事を早速アランに教授してますの?」


「任務に不要なプライドを捨て、任務の内容にプライドを持つ主義にしたまでですよ」


「言いますわねぇ。男子三日あわざれば、とは良く言ったものですわ」


 何はともあれ、先ほどの忠告はアランに対して効果てきめんの様だった。


 今まではアランに良くて同格、悪ければ下に見られていたアルバトールだが、今の指摘でかなり見方を変えてもらえたようだったからだ。


「ですが、アラン殿が急行してくれたおかげで良い事もありました。いつもなら野次馬の整理に苦労していたところです」


「そうなのか?」


「ええ、法の遵守に関して自他共に厳しいアラン殿の姿を見てしまっては、いつものように夜間外出の禁を犯してまで見物しようと考える輩はいなかったようです」



「野次馬? どう言う事だ? 私は襲われていたエンツォ殿に助太刀をしようと」


 それを聞いたアルバトールは眉間を押さえ、アランにこの騒動の詳細を説明する。



「あの女性はエンツォ殿の奥さんです」


「言っている意味が良く判らん」


「エンツォ殿と結婚しているエステルと言う女性で、これは夫婦喧嘩です」


「待て、このフォルセール城すべてを揺るがす規模の争いが夫婦喧嘩だと?」 


「お恥ずかしい。このフォルセールではエンツォ夫妻以外の夫婦喧嘩は、猫の喧嘩と呼ばれるほどです」


 説明を聞いたアランは口をあんぐりと開け、背後から響いてきた轟音に振り向く。



 そこには氷塊を砕かれたエステルが、今度は暴風でエンツォの四肢をねじろうとしていたが、そこはエンツォも歴戦の強者ツワモノ、既に穴を掘ってその中に飛び込んでいた。


「やれやれ、野次馬がいない分、今日のエステル殿はイキイキとしておられるな。城に被害が出なければいいんだけど」


 アルバトールが呆れたように感想を述べる。


 実際、このような広い場所でなければ確実に周囲に被害が出ていたことだろう。




 実は以前、この二人は普通に町の中に住んでいた。


 今とは別の騒々しさはあったものの、一般的な範囲に収まっていた物が、結婚してからは今回のような災害規模のものに拡大してしまったのだ。


 そしてその度に後始末に駆り出される騎士団、そしてエルザの度重なる苦情に応える形で、この空き地に引っ越してきたと言うわけである。



 予算も騎士団のものから拠出する形で強制的に。



 だが、それによる弊害は大きなものだった。


 周囲が空き地になった事で、エステルが力を振るいやすくなってしまったのだ。


 よって排出される轟音や地響きは以前とさほど変わらず、むしろ酷くなったともっぱらの評判で、近所どころか城中が迷惑をこうむることになっていた。




「決着が着くのは夜半過ぎでしょうかねー……おや?」


 アルバトールが見たエルザは、明らかに不機嫌であった。


「オ、オホン!」


 咳払いにも無反応なエルザを見て、アランはアルバトールに小声で相談をした。 


「……エルザ司祭は何かあったのか? 正直に言わせてもらうと、私は逃げたい」


 そう聞いてくるアランに、アルバトールは今日の食事の一件を伝える。


 途端にうんざりとした表情になるアランを見つめ、アルバトールは苦笑いを浮かべるが、彼も早く戻って休みたい気分であった。


 何しろ昨日の晩は徹夜だったのだから。


「せめてエレーヌ小隊長がいれば……いや今日は居ない方が良かったか」


「暁の騎士か? そう言えば、なぜ暁の騎士なのだ? 確かに有能、かつ剣の腕も立ち、非の打ちどころと言えばその二つだけなのだが」


「アラン殿もなかなか言いますね……それは」



 直後にアルバトールは凍りつく。


 何故なら闇に紛れ込むように、エレーヌが歩いてくるのが見えたからであった。

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