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第74話 時の価値は

 ここで時は少し巻き戻り、場所はフォルセール城の中心、領主の館へと移る。


「うん? またエンツォの悪事がばれたか?」


 外から響いてきた遠雷のような重低音に、書類の一箇所を指し示していた指が止まり、その言葉を発したこの領主の館の持ち主、つまりはフォルセール領主フィリップは溜息を一つ発すると窓の外を見つめる。


 彼は館の一室でシルヴェールに書類の説明をしていたのだが、指を止めたのは別に外から聞こえた爆音に事件性を感じたからではない。


 ここフォルセール城下に於いては、爆音は時を告げる鐘の音に次いで住民の耳に馴染みのある音である。


 今日もその音が執務室の窓ガラスを振動させるのを見て、フィリップとベルナールは顔を見合わせて呆れた顔をし、机を挟んだ向こうに居るシルヴェールは、書類に目を落としたままペンにインクを補充すると、未だ慣れぬ国王としてのサインを入れた。


「私がここに遊びに来ていた小さい頃と、まるで変わっておらんなエンツォは」


 フィリップの手助けを受けながら書類の決裁をしていたシルヴェールは、椅子の背もたれに体を預けて溜息をつき、その呟きにベルナールが同意をする。


「あれはもはや一種の才能ですな。女性を惹きつけるのも、女性を怒らせるのもお手の物と言った所です」


 窓の外を見ていたフィリップはその評価に軽く噴き出した後、ベルナールに詰所の事態収拾、そして先ほど決まった決定事項をアルバトールに伝えるように告げた。


「主命、拝受いたしました。それでは何かありましたら詰所の方へ」


 その指示に従い、ベルナールが扉の横に控えていたベルトラムからオートクレールを受け取って部屋の外に出ようとした時、彼はフィリップから今日はこれで帰宅するように、と追加の命令を出されることとなる。


 そのフィリップの強い口調にベルナールは少し戸惑いを見せるものの、素直にそれを復唱するとシルヴェールがベルナールへ声をかける。


「もう一週間は部屋に帰っていないだろう。詰所は働く場所であって休む場所ではないぞ。それとも他に何か理由があるのか?」


「まぁ、多少は」


 珍しく歯切れの悪いベルナールの返事にシルヴェールは怪訝そうな顔をし、その二人を見たフィリップはニヤリと口を歪めた。


「宮廷魔術士筆頭のレナ殿。お主がまだ王都に居た時に、多少の縁があったと聞いたが? お主が部屋の間借りを認めたこと、部屋に帰らぬことと何か関係があるのではないかと、この前ジュリエンヌが小躍りしながら私に語ってきたぞ」


「恥ずかしながら、まさかこの年になって、あのような若い娘に追いかけられるとは思っておりませんでしたので」


 ベルナールは鼻の頭をかき、戸惑いまではせぬものの、いささか照れた様子で二人に白状をする。


「お主の人生だし、お主が自らの身の処し方を間違うとは思わぬ。だが私としては、お主以外の身にも想いをきたす立場となって欲しいと思うし、お主の血を引く者の誕生も望まずにはいられん。私個人の勝手な願いなのは承知の上でな」


「そうかも知れませぬな。では詰所の方が気になりますのでこれで」


 フィリップの独白に、ベルナールは彼にも無くはっきりとした返答をせずに部屋を出て行き、滅多に見られぬその仕草に残された二人は顔を見合わせる。


「ふむ。女性に迫られることには慣れているはずのベルナールが、あのようにへこたれている姿を見せるのは初めてだな」



 王城での舞踏会などで、ベルナールに群がる貴婦人たち。


 その中心で柔らかな笑みを浮かべ、どこでそんな大量の情報を仕入れたのかと思うほどに王都での流行を語り、更には彼を囲む貴婦人たちの一人一人の髪型、服装、装飾品の美点を並べ立てるベルナール。



 シルヴェールはその姿と、先ほどの苦笑いを浮かべたベルナールを比較して楽しそうに笑い声を上げ、フィリップは新しい主君にあご髭を撫でながら答える。


「左様ですな。奴が戸惑いを見せる女性と言えば、今までに我が妻ジュリエンヌ、フォルセール教会司祭のエルザ両名だけでしたが……それにレナ殿の席が加わるのもそう遠い未来では無いかもしれませんぞ」


 先ほど出て行く時のベルナールの顔を思い出して二人は含み笑いをし、扉の横に控えるベルトラムはその二人とは違う種類の興味を表情に浮かべていた。



 そして城を出たベルナールが詰所に到着すると。


「ふむ、今日の趣向はいささか変則気味ではあるな」


 ただいるだけで他を圧する巨漢バヤール。


 その脇では常に凛とした表情と行動を見せるエレーヌが地面にへたりこんでいる。


 彼の前方ではなぜかアデライードが卒倒しており。


 そして卒倒したアデライードに膝枕をして介抱しつつ、目の前で正座をしているアルバトールにこんこんと言い聞かせるアリアがいた。


 対して周囲にエンツォ、ブライアンの姿は見当たらず、爆音が聞こえたと言うのにその両名が負傷して転がっていないと言う稀有な状況を見て、彼は感慨深げにその顎に手をやり、しばらくその光景を見つめるのであった。



 しばらく後。


 関係者全員の姿は、詰所の執務室の中にあった。


 少人数であるフォルセール騎士団の執務室は、大人数での使用を想定していなかったがそれでも全員が何とか入れる程度の大きさはあり、そこでアルバトールの弾劾……もとい聴取が始められる。



「さて、申し開きがあるなら聞こう。私は団員の過ちを裁くにあたって罪がどのように重くとも、また団員がしでかしたことが明らかであっても、当事者の言い分を聞くと決めているのでな」


 まずベルナールはアリアの表情を確認し、それから事態の収束に向けて動き出す。


「ではお言葉に甘えて……」


「却下だ」


「まだ何も言ってませんが!?」


「私の言葉に甘える時点で、君が何らかの恩赦を私に期待していることが判る」


 しかし、どうやら事態は思ったより深刻なようであった。


 アルバトールが口を開いた途端に、アリアの表情がかげったのを見たベルナールは即座にその弁明を遮断し、まず詳細ではなく大筋で事態を把握する方針に切り替える。


「せめてどうしてこうなったかくらいの説明くらいはさせてください団長!」


「エンツォを師につけたのはやはり失敗であったか……まさかこのように女性に関してルーズに育ってしまうとは」


「いえ、僕は何もしていないのですが」


(なるほど、やはりそちら方面か)


 やや不服そうなアルバトールを見たベルナールはすぐに問題の大筋を把握し、もう一人の当事者へ顔を向ける。


「冗談だアルバトール。それはそれとしてエレーヌ、お前の言い分を聞こう」


 エレーヌに罪をなすり付けようとしたようにも聞こえる先ほどの発言により、再びアリアに小言を言われ始めるアルバトール。


 それを横目にベルナールはエレーヌに話を聞くが、こちらはこちらで何やらほうけた表情のまま独り言を言っており、会話は成り立ちそうになかった。


「……仕方あるまい。アルバトール、とりあえずアデライード王女とアリアに謝って許しを乞いたまえ。一度火がついた女性に理屈は通じん。ひたすら謝罪して誠意を見せるのが一番だからな」


 その言葉に従い、ひたすら謝罪を始めるアルバトール。


 だが彼は気づいていなかった。


 謝っている対象の一人、アデライードが未だ目覚めていないことに。


(不器用……と言うより天然だな。むしろあのレベルまで到達すると、天の意思とも思えてくる)


 そんな思いを抱きながらベルナールはエレーヌに近づき、その頬を軽く両手で挟む。


「少し席を外させてもらうぞアルバトール」


「え」



 それでも正気に戻らぬエレーヌを見たベルナールは、アリアに責め立てられるアルバトールを一人残して執務室を後にすると、詰所の休憩所にエステルを呼びに行く。


 そしてエレーヌの姉であるエステル、そして正気に戻るなんらかの契機に成るのではないかとエンツォ、ブライアンも連れて戻り、未だ続いているアリアの説教を省みずに一人の女性を手の平で指し示した。


「姉の眼から見て、今のエレーヌはどうですかな?」


 その先には、心ここに在らずと言った様子のエレーヌ。


 いつもの態度からは考えられない顔をした妹を見るなり、エステルは口に手を当て、くすくすと笑いはじめていた。


「あら~これは発情期ですね~。ぼんやりとしているのは~初めての経験だから~、いきなり湧いて出た欲……感情を~持て余しているのでしょう~」


「何じゃエステル、エレーヌはまだ発情期を迎えておらんかったのか」


「まぁ~、この子は生まれてから~まだ五百年ほどしか~経っていないはずですから~、発情期を迎えたことがないのも~無理はありませんね~」


 ここでエステルの年齢を聞くなどと言う無粋なことをベルナールはしない。


「ん? そう言えばお前は今いくつなんじゃ? まぁエルフにとって年齢にそれほど意味があるのかは知らんがぐあー」


 何故ならその無謀を遂行する人物を、先ほど二人ここに連れてきたのだから。


「そうですね、私は……」


 後頭部に氷が炸裂し、床で悶絶するエンツォの前でエステルは考え込み、やがて手を合わせ、祈りを捧げるような仕草を取った後に自分の年齢は千六百歳ほどと答える。


「ふむ、ワシと会うのにそれほどまで長い年月をかけさせてしまったとは……ワシがフォルセールに住んでいたばかりに苦労をさせたの」


 エステルの年齢を聞くなり悶絶から立ち直り、妻に優しい言葉をかけるエンツォを見て、ベルナールは感心をしたように唸り声をあげる。


「では、エレーヌがこの状態から立ち直るにはどのようにすれば……む」


 ベルナールは背後で仲睦まじくする夫婦の気配を感じ、しばらくは返事が返って来そうに無いことに落胆する。


 仕方なく彼は、焦点が定まらぬ目で鷹揚に立っているエレーヌへ視線を向けた。


 いつもの威風堂々と言った立ち居振る舞いは鳴りを潜め、その頬は熱でもあるかのように赤みを帯び、もじもじとしながら時々アルバトールを上目遣いで見つめるその様は、まるで世間を知らぬ箱入り娘と言った感じであった。



「ふう、この肝心な時にまるで生娘のようになってしまうとは……手の焼けることだ」


「何かあったのですか? 団長」


 ようやくアリアの説教も終わったと見え、周囲に注意を向けられるようになったアルバトールは、そのベルナールの発言に反応して何かあったのか質問をする。



「王都に潜入し、現状の偵察をする。身支度を整えてくれアルバトール」



 大胆不敵。


 そうとしか言いようの無いベルナールの返答に、アルバトールの口は顎が外れたのかと思わんばかりに垂れ下がり、その瞳はベルナールの顔に釘付けとなる。


「エレーヌとブライアンを共に連れて行こうかと思っていたのだが、これではエレーヌは無理だな。偵察と言うこともあるし、影の薄いブライアンだけを連れて行くか」


「影の薄いとは、地味にひどいことを言われますな団長」


 ベルナールの言い草に、エステルの肩を抱いたままエンツォが指摘をするが、ベルナールは大して気にする風もなかった。


「仕方あるまい。隊長になるまでの功績は覚えているが、隊長になってからの功績は期間が短いこともあり、色情で痛い目に遭った話しか聞いておらぬからな」


(確かに荒事には向いてないけど、有能なんだよなブライアンは)


 アルバトールはまだ自分が騎士隊長だった時に、さほど年が行かぬ隊長を上に持った隊員たちの不平や不安を、ブライアンが上手く取り成してくれていたことを思い出す。


 人の集まりを以って成立する組織というものにあって、彼のように人間関係を上手く取り持ってくれる人間と言うのは、実にありがたい存在だった。


「しかし見目が変わってしまった私や、影の……あ、いや、隊長となって日が浅く、顔見知りも王都に少ないであろうブライアンはともかく、エレーヌ殿や団長は顔が知られすぎているのでは?」


「そこは変装だな。顔が知られすぎている故に、少しの変装で誤魔化せるということもあろう。それに意外と神は、変装や擬態を見抜けない物と相場が決まっているからな」


 そのベルナールの発言に、アルバトールは帽子とメガネを着けただけのエルザの変装を思い出し、妙に納得してしまう。


「なに、今回はそれほど大っぴらに動き回るわけでは無い。主な目的は人と魔が暮らす王都の様子を見ることだ。出来ればフェルナン殿と連絡も付けておきたいが、我々はまだ王都奪還の準備を進めている最中だ。そこまで欲張ることもないだろう」


 そこまでベルナールが説明すると、もじもじとしていたエレーヌが不意に口を開き、おずおずと手を上げる。


「あのー……団長、私も行きたいです」


「いかに偵察が主な目的とは言え、魔族に発見されれば戦うこととなる。今のお前が戦えるのか?」


「それは、その……では、戦えるかどうかを今から見ていただけませんか」


「ふむ」


 少し考え込んでいたベルナールの手が、ふいに腰のオートクレールに伸ばされる。


 そして鯉口を切る音がした時には、既にエレーヌの鼻先に剣の先端が止まっていた。


「許可しよう」


 その一連の動きが終わるまでのエレーヌの視線、体の反応を見て取ったベルナールは随伴員にエレーヌの名前を加えて執務室を出て行き、続いてアデライードを抱き抱えたバヤール、そしてアリアが部屋を出る。


「では、私も準備をしてきます」


「あ、はい……お気をつけて」


 そう言ってぺこりと頭を下げ、アリアに続いて執務室を出て行くエレーヌに何となく注意を喚起するアルバトールと、狐につままれたような表情のブライアン。


 その二人を見たエンツォは豪快な笑い声をあげて説明をした。


「ハッハハ! まぁ発情期のエルフは普段と全く性格が違ってきますからな! エステルが発情期になった時はそりゃあもゴッ!」


「もう~、いやですわ~あなた~」


 脇に氷塊を転がし、床で動かなくなったエンツォを確認すると、エステルはアルバトールへ姿勢を正して向き直る。


「アルバトール様、エレーヌをよろしくお願いします」


「はい、この身に代えてもエレーヌ殿はお守りいたします」


 アルバトールの返答にエステルはくすりと笑い、ゆっくりと首を振ってアルバトールの顔をじっと見あげる。


「私たちが里を追放されて以降、エレーヌは今まで恋愛というものを自ら封じてきました。エルフ以外の種族を愛した仲間の行き着いた先というものを、あの子は小さい頃から言い聞かせられておりましたから」


「……エステル殿はよろしいのですか?」


 気を利かせたのか、こっそりと部屋を出て行くブライアンの気配を感じながら、アルバトールはエステルに質問をぶつけて話をはぐらかそうとする。


「今はこの幸せを享受しましょう。感情の動かぬ造花のような永遠よりは、心躍る時間を胸に灯して次代の生を紡ぎ、土に還る方が私がこの世に生を受けた意味があると信じておりますから」


 決意を秘めたエステルの表情を、アルバトールは素直に美しいと感じ、その決意を見て覚悟を決めた彼は、アデライードとアリアを幸せにすることしか自分には出来ないとエステルに伝える。


「それでも構いません。あの子は恋愛に関して何も経験を積んでおりませんから。恋愛がお互いの魂と魂の間で成立するものである以上、望んでも叶わぬことが付き物なのだとあの子に経験してもらうだけでも、私は十分です」


 エステルの要望を聞き、アルバトールの心は沈む。


 しかし今の彼に出来ることは、おそらくエステルの言う通りだったろう。


「剣以外の経験、戦い以外の生き方もあることを、どうかあの子にお教えくださいアルバトール様」


 深々と頭を下げるエステル。


 それを見つめたアルバトールの頭の中には、様々な考えが入り乱れていた。


「私に出来る最善を尽くさせていただきます」


 だから彼は、責任を伴わない言葉を返答とした。


 およそ偽善と呼ばれ、欺瞞ぎまんと評される言葉を。


 それ故に彼らはその言葉を信じるのではなく、信じ込むことによってその会話を終了させたのだった。




(さて出立の準備か。独り身ではさほど時間がかかる物でも無いが、心の準備の方はそうそう出来る物でもないな)


 一方ベルナールは詰所を出た後、自らが住まう騎士団長用の部屋に向かっていた。


 王都より召喚された際、フォルセールには彼専用の住宅が用意されていたのだが、独り身であった彼は掃除などが面倒だとしてそれを固辞し、他領から着任した騎士団員が仮住まいをする建物の部屋の二つをくり抜いて住まいとしていた。


「あ、お帰りなさーいベルナール様! 何だか随分と久しぶりですねー!」


 ベルナールが部屋に入ると、温かそうな食事の香りに続き、彼の帰りを待っていたレナが迎えに出る。


 騎士団長として王都よりフォルセールに着任して以降、最近になって再会するまで彼女のことを思い出した回数がそれほどある訳では無い。


 だがレナの噂は、フォルセールに居てもしばしば耳にしていた。


 わずか齢十五と言う最年少で宮廷魔術士となり、数年でその筆頭に着任。


 筆頭となってからも新しい魔術の開発はおろか、後進の指導にも長け、聖テイレシア王国中、いや人が到達できる魔道の頂点を極めたとの呼び声も高い、鬼才と呼ばれるほどの才能の持ち主と言う噂を。


 しかし彼が王都に居た頃には未だレナは子供であり、親しい隣人の子であった彼女の面倒を見ることがあった。


 ただそれだけの関係であった。


 その関係が決定的に変わってしまったのは、レナが宮廷魔術士筆頭となって二~三年が経過した頃だっただろうか。


 早くに才能を開花させてしまっていた彼女は、未だ伸びる余地はあったものの、人としての限界も感じていた。


 そこにたまたま王都に用事があったベルナールが助言をしたのだ。


 自らの才能に限界を感じたのなら、自らを支えてくれる人材を育ててみてはどうか。


 そう助言をした時から、レナの自分を見る目が明らかに変わったのだ。


(まぁ、いい年をした男女がいつまでもママゴトのような真似をする訳にもいくまい)


 ベルナールは軽く息を吸い、食事の用意をするレナに向かってそろそろ自分の住まいを探してはどうか、と伝える。


「えー、だって探すの面倒じゃないですかー」


「面倒で済ませられる状況でも無いだろう。幾ら知人の娘とは言え、嫁入り前の女性が独身男性の部屋に同居するのはどうかと思うぞ」


「なるほどー、自分と結婚してくれってことですかベルナール様?」


「いや、それなら住まいを探した方がいいとは言わないだろう」


「あはは、自分たちが暮らす家を探してくれってことかと思いました!」


 どこまでもマイペース。


 この辺りはジュリエンヌやエルザと良く似ている。


 軽い頭痛を覚えつつ、ベルナールはレナにはっきりと、君と結婚するつもりは無いと言い、自分には意中の女性がいるとも伝える。


「近いうちにその方と結婚されるのですか?」


「いや、その予定はないが」


「判りましたー! じゃあベルナール様が私と結婚する気になるまでここにいますね!」


「……」


 アルバトールもこのような心持ちで日々を過ごしているのだろうか。


 ベルナールは明日にでも王都に偵察に出ることをレナに伝え、それについていくと駄々をこねるレナを無視し、変装に使う道具を準備していったのだった。

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