女性の冒険者
女性の冒険者はいつものように初心者を待っていた。待つ理由は初心者を狩ってゴールドを稼ぐためである。このゲームは極端にゴールドが稼げないので、初心者にデフォルトで持たされるヒールポーションと経験値がアップするアイテムはプレイヤー同士の取引で良い稼ぎになる。
「最近、ここの村は入りが少ないなあ」
女性の冒険者の名前はリサ、名前を奪われる代わりに金額を預けてログインしている。リサにはどうしても預けた金を返して欲しい理由があり、その為にはゲームをクリアしなければならない。
ゲームをクリアするには、城の最上階に行かなければならない。しかし、城に入る為にはギルドのクエストを数多くクリアして、有名にならなければならない。
ならない、ならない、ならないっと、されていた。最近狩った変な名前の男が城に進入する迄は…。城の侵入に穴があるのは確からしいが、最上階を目指すならゴールドは必要になる。
あ、カモが現れた。
「新規の方ですね」
いつもの手口で、明るく話しかける。
「・・・・」
今回の獲物は自分よりもずっと若い女の子、やりにくいなあ。
「ちょっと、どうしたの?」
女の子をよく見てみると、なぜか号泣している。プレイヤーの名前は、ええっと、2号。また変な名前…。※1
「この世界がすごくて感動して、今日初めて見えたんです」
「見えた?」
女の子の言っている事がリサは理解できなかった。
リサの星では医学が発展しすぎて、部位欠損や、五感の不自由で困る人はいない。※2病気の類で命を落とすケースはウイルステロぐらいしか無い。
「悲しい訳では、なさそうね」
「はい、ご心配を掛けました」
女の子はあたふた、ぎこちなく答える。
「変な子、ふふっ」
「はは、すいません。ぷぷぷ」
「あははははははは」
2人は互いに笑だした。リサは女の子の笑う姿をみて、全てがアホらしくなった。
「負けたわ。その姿じゃ目立つから、装備屋で着替えましょう」
リサは2号を連れて、装備屋まで案内した。
※1:対象のプレイヤーに意識を集中すると、プレイヤーの頭上にプレイヤー名が見える。NPCも同様で、通常はギルドで教えてもらえる。
※2:地球上ではまだ2人しか勧誘(捕獲を含む)が成功していない。