2号誕生
その名に意味はない(14)は、その日初めて外に出た。
母は体が弱く、私を産んでそのまま息を引き取った。父は母の死を境に心が壊れて、蒸発した。
幼い私は施設に預けられたが、両親を恨んではいない。母が引き換えにくれた命に対して申し訳ない気持ちがあるし、父が蒸発した原因は自分にある。
何しろ私には目が無い。
物心ついた私に対して、医者が目が無い理由と移植しても治らない事を告げた。目が無い理由については意味が無いので忘れた。
預けられた施設内部は熟知していた。14年間さまよったのだ、出口についても心辺りがある。
施設に対して不満があるのではない。親切でいい人ばかりだが、その親切を受ける意味が自分に無い。
外に出た理由は、どうせなら最後に知らない世界に触れてみたいと思った。しかし、それさえ意味は無かった。外に出て数歩進んだが、直ぐに座り込んでしまった。意味が無いし情け無い、恐怖で足が前に出ない。
私には死ぬことも出来ないらしい。
そんな私に声をかけてきた人がいた。意味ないのに。
「やあやあ、この惑星の住人調子はどうだい?お前の大事な物と引き換えに新しい世界に行ってみないかい?」
声は私と同じかそれより若い気がする。
「大事なもの」
私はポケットから布切れを出した。
私が幼い頃、これを渡すと泣き止んだらしい。母が着ていた服を切ったものだ。
それから少女との会話は覚えていない。適当に生返事をしていたら、それでは名前にしようと言うことくらいだ。
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世界が一面に広がる。
初めて視界に黒以外が映った。
泣いた。
目が無いから涙は出ないと思っていた。枯れていたのは自分だった。
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それより数時間前、ロビー区画にて。
「よし!おまえは捕獲2号だ。覚えておけ」
偉そうにロリ博士が2号に告げる。
修正)1/23:インデントを修正した。




