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再びロビー区画

「うわー、かっこわるー」

 少女が低いテンションで、1号を非難する。


「おっと時間だ、これから2号の捕獲に行かねばならん」

「ちょっと、まって!これ以上不幸な人間を増やさないで欲しい」

 これまで出来事が他の人にも降りかかるのは避けたい。


 少女がニヤリと笑ながら話す。

「年の若い、女性を考えているのだが」

「よろしくお願いします」

 つい男子の諸事情、下心が出てしまった。


「いやいや、うそです。頼むから、犠牲を増やさないでくれ」

「犠牲?」

「殺して、ここに連れてくるつもりだろう?」

「なにをバカな。お前の場合は物凄く運が悪かったのだ。普通に交渉して連れてくるに決まっている」

「そうなんだ・・・・」

 少女が呆れながら答える。1号はうなだれる。


「あー、もう。また時間を無駄にしてしまった。説明はこれから助手がくるから、それでいいだろう?」

「変に疑って悪かった。説明してくれるならそれでいい」

「よし、ではな」

 少女の姿が音もなく一瞬で消える。2号の捕獲に向かうと言っていたが、交渉できるのだろうか?



 ピロピロ。ピロピロ。


 チャイムみたいな音が室内に鳴る。返事した方がいいのだろうか?

「はい?」


「失礼しまーす」

 元気のいい女性の声がする。


 シュッと、目の前の席に女性が現れた。


「うおお」

 来るような気がしたが、驚いてしまった。


「ははは。いいリアクションしますね」

 女性が明るく笑う。年齢は20歳くらいだろうか。


「ウズキといいます。博士の助手をしています」

「えっと。1号です」

「ははは、すごい名前ですね」

 ウズキに明るく返されたが、若干傷ついた。1号はガラスのハートの持ち主だ。


「昨日名前を付けられたんです。変なのはその博士です」

「たしかにそうですね。ははは」

 ウズキは笑上戸なのだろうか、ずっと笑っている。

「すいませんっ。はまるとっ。止まらなくて。ははっ」


 もういい、少しムッとしてしまった。色々聞かなくては。

「あの、なんで名前を思い出せないのでしょう?」

「博士言わく、ゲームを楽しむ為の要素らしいです」

「要素?」

「大事な物を取り返すという要素です」

 ウズキがキッパリと言い放つ。


「勇者になって大事な姫を取り戻す。という事ですか?」

「そうです!それです。あなたに彼女がいれば、奪われたはずです」


「そんな・・・」

「それは冗談です。ははは」

「くそっ」

「良いっ、良いリアクションです。ははっ」


「普通は金銭です。お金を預けて頂きます。ぷぷ」

 だんだん腹がたってきた。1号の目が細くなる。

「クリアしたら返すという事ですか?」

「そうです」

 ウズキの笑が収まった。


「1号さんの場合は、お金も彼女さんもいないので」

「ぐはっ」

 1号のガラスのハートは崩壊寸前だ。


「ぷぷぷぷ。すいません。直球すぎました。ははは」

「くそう。ちょっと前には、、彼女くらい、、」


「奪われた名前の件ですが、普通に生活できますから大丈夫ですよー」

「どう言う事?」

「あなたの脳内だけフィルターが掛かっているので、あなたのご両親は普通に接していても、聞こえるのは1号という事です。逆にあなたが1号と名乗れば、本当の名前がご両親に伝わります。視覚など他の五感も同様です」※1

 1号の中のみでフィルターされて変換されるという事なのだろうか。ともあれ、生活はできるらしい。


「なんでそこまでして、ゲームするのでしょうか?」

 1号の問いに少し考えてウズキが答える。

「博士がよく言うには、リスクがないと本気にならない。のだそうです」

「リスク」

 1号は、その言葉に強襲してきた女性冒険者を思い出す。


 その後もウズキに対して色々質問を行った。博士やウズキは宇宙船で訪れ、今は月に着陸している。

 この部屋はロビー区画と呼ばれ、1人1部屋割り当てられる。ロビー区画は宇宙船内部の施設だと知らされた。ログイン中は実際の肉体をこのロビー区画へ転送され、

保管される。

 ゲームオーバーになると再びロビー区画にある肉体に精神が戻される。そして、ロビー区画から地球へ転送されるらしい。


 ちょっといい点としては、地球への転送地点を選べるらしい。行った事があり、脳内に記憶がある場所であれば何処でも良いらしい。里帰りの旅費が節約できる。ありがたい。


 1号は実家ではなく、現在住んでいる自宅前に転送を完了した。


※1:ちなみに苗字は捕獲です。実家に帰ると表札が「捕獲」に見えます。(1号だけ)


修正)1/23:インデントを修正した。

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