捕獲作戦 終了
「1号よ、お前にも取り柄があったのだな」
「人を集めてくれたのは、木村君だが」
「前言撤回」
「……」
今日もダラダラと探索やら、日課クエストなど盗賊ギルドのメンバー達と過ごした。その後、ログアウトしてロビー区画に戻ると二人が待っていた。ロリ博士と2号の二人だ。
木村は某ゲームでは豆な性格と、ゲームの豊かな経験が相まって、名物キャラクターになっているらしい。リアルで知っているフレンドも多く、今回のミッションに一番適していた。
初めてログインした木村は感動し、周辺に住む某ゲームのフレンドを緊急招集した。説明の後、数名の勧誘に成功した。
フレンドからフレンドに体験談が広がり、土曜日と日曜日は関西地方での勧誘を敢行して、100名のノルマを達成していた。
なお、木村を含めた数名は、1週間でレベル3に到達したらしい。MMOジャンキー達、恐るべし。
「2号の目を遺伝子情報から復元することは容易いが、本当に良いのか?」
「はい、お願いします。お世話になった人達に恩返しができる。それだけが、とても嬉しいです」
2号は覚悟を決めていた。彼女が育った施設の人達の喜ぶ顔を想像し、目に涙がたまる。
「………ううっ、ぐずん……」
「……ごめん、こう言う話し、弱くて…………」
「もう、二人とも………泣かないでよ…………」
ピンポーンっと、ロビー区画内にチャイムが響いた。
『ハカセ〜、準備できました〜』
元気の良いウズキの声が続いてロビー区画に届いた。
「よし、2号準備ができたので、ラボまで転送する。目が復元したら、現実世界に戻っているだろう」
「わかりました」
1号はロビー区画から二人が転送されたのを見届けて、住み慣れたアパートへ戻った。
「ふー、今日も1日おつかれさん」
ゲームができる時間は最長で6時間に設定されている。1号がログインしたのが0時のため、現在6時。会社へ出社するにはまだ早いため、日課となった朝ごはんの調達にコンビニへ出かけることにした。
「100名集めて、サービス終了の危機も無くなったし、2号の目も治って全て解決だな」
1号はうんうんっと一人で頷き、クエスト達成感を噛み締めた。
1号はコンビニで買った肉まんを食べながらの帰り道、ふと思い出した。
「……まさかと思うが、また2号の実家に転送するんじゃないだろうな……」
2号の元実家までは、ここから30分くらい。一度行ったので行けるはずだ。
歩いて2号の元実家までたどり着くと、今まさに2号が転送されている最中だった。
「あら、はじめまして1号さん」
「あははっ、はじめまして。やっぱりここに飛ばされたか」
思えばゲーム内で遭遇した事が無かったが、2号にはそれが1号だとわかった。
「ありがとうございました」
「よかったね」
2号の目から流れる涙が、ちょうど登ってきた太陽でキラキラ光っていた。