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捕獲作戦 開始

「なあ、木村君」

「なんですか?1号さん」

 ここはリアルの定食屋。会社の同僚であり、少し小太りな木村君と少し遅い昼飯にやってきた。14時なので、客もまばらである。


「確か木村君って、ネトゲ廃人だよね」

「いやいやいや、一応働いてますんで。休みの日は1日中やってますけど、準廃人くらいですよ」

 ーー本当の廃人は…………聞くのはやめておこう。

「ゲームのフレンドって、何人くらい?」

「そうですね、50名くらいでしょうか?ギルドのマスターもやってるので、ギルドメンバーも含めると100くらいだと思いますよ」


 ーーちょうどいい感じの人数だな。彼にしよう。

 1号はゲームのユーザを集める代わりに、ロリ博士に2号の目を治してもらう取引をした。

 ロリ博士が集めたユーザは1号を含めた数名で、失敗に終わっている。ユーザ数が増えない現状にクライアントからの苦情が入り、ついに地球からの撤退を言い渡された。

 ロリ博士はクライアントと交渉して、今週までに100名を集めれば撤退する計画を考え直してもらえる事になった。


「ちょっと凄いゲームがあるんだけど、やってみない?」

「1号さんゲームするんですか?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ーーゲームの内容を木村君へ説明したが、イマイチ信じて貰えない。

「確かに凄いゲームですね。っで、いつ出るんですか?」

「いや、もうサービス開始してる」

「え?1号さん、変な宗教なら入りませんよ」

「そう思うよねぇ……」


 ーー少々強引だが、これを使うしかないか。

「木村君、手出してみて」

「え?あ、はい」


 ぴとっ。1号は木村の手に、ロリ博士の最新型シールを貼り付けた。


「なんすかこのダッサイ……シール?」

「ごめん、それもう取れないから…………」


 始めは、ゲームをする代償に金品を預けるルールを採用していた。トラブルが相次いだ為、次にプレイヤー自身の名前を奪うルールを実装することになった。

 実は、名前を奪うルールはサーバーのリソース(資源)を大量に使う為、大多数には採用できなかった。

 そして、ロリ博士が3番目に編み出したのが、この『恥ずかしいシール』である。ちなみに、ファンシーな象が空を飛ぶ、大人が持つには恥ずかしい図柄である。

 ゲームをする代償としては、名前よりも辛いかもしれない。


「よし、1名、確保っと」

「え?なにコレ、シールの断面が無い………本当に取れない…………」

「だから、取れないってば。視覚を上書きしてるらしいよ」

「えええええええええ、ちょっと1号さん洒落にならないですよおおおおおお」


 その夜、ログインした木村が1号へ泣いて感謝したのは言うまでもない。




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