羽の生えたウサギ
「うーん、なかなか上手く当たらない」
2号は現在、ネバからの秘儀クエスト中。
「そうだ!リサさんに聞いてみよう」
ーーフレンドメッセージ
『はーい、どうしたの?』
「リサさんこんちは。あのー、ちょっと教えてもらいたくて」※1
『なになに?枝からジュバット出る技が上手く当たらない?なんだろそれ?』
「ネバさんから受けた秘儀クエストなんだけど……」
『秘儀?ライトに聞いたことがあるかも、モノ凄く難しいらしいよ』
「そうなんだ……枝しか装備できなくなって、早くクリアしないと……裁縫できなくて……」
『凄いクエストだね……弓が上手い人から聞いた話しだと、当たったところを想像すると上手く当たるらしいよ』
「なるほど〜、リサさんやってみるよ〜、ありがとう〜」
ーーよし!当たったところを想像して、切ってみよう。
「うわー、だれかー助けてーでやんす」
「ん?」
森の奥の方で、助けを求める声が聞こえた。
2号が駆けつけると、羽の付いたウサギが、3人の冒険者に囲まれている。
「こいつ言葉を話せるぞ」
「めずらしい、羽ウサギ」
「なんかドロップアイテム持ってるかも、うひひ」
3人の冒険者は連携して羽ウサギを逃がさないようにしている。
「あ、この前のウサギさんだ」
「この前の小さいお嬢ちゃん、いいところに!助けて欲しいでやんす」
冒険者に囲まれていたのは、ネバの刀を拾った羽ウサギだった。羽ウサギは背中の小さい翼で跳躍すると、2号の背後に身を隠して3人の冒険者を煽りだした。
「へへーん、お前たちなんか、このお嬢ちゃんに手も足も出ないでやんす」
「おいおいおい、こいつ小枝を装備してるぜ」
「本当だ」
「でもレベル5だぞ」
プレイヤー通しの対人戦においてレベルの差は誤差の範囲だが、自分より高いレベルに対してプレッシャーとなる事が多い。
「……なななんで……刀はどうしたんです?」
「ごめん……今、小枝しか装備できなくて……」
2号はネバの秘儀クエストの影響で小枝以外を装備することができない。
「装備を変えられる前に一気に倒すぞ」
「おけい」
「らーじゃ」
3人の冒険者は、片手剣、ボウガン、杖を装備して連携が高そうに見える。
「あまりプレイヤーさんを斬るのは好きじゃないんですけど、やるしかないですね…………」
2号は小枝を両手で下段に持ち、低い姿勢で3人の冒険者を照準する。
ーー当たった所を想像する。当たった所を想像するっと……。
じゅばーん。
2号が放った斬撃は、先頭に陣取っていた片手剣の冒険者に直撃した。そして、後ろに居た残り二人を巻き込んで、3人とも背後の木に打ちつけられた。
「うそ……」
「だから、レベル5はヤバイって……」
「そんな馬鹿な……」
「浮雲?覚えたでやんす?」
「これ、浮雲?って言うんだね。当てるのが難しくて………練習中です」
片手剣の冒険者が二人を押しのけて立ち上がり、おもむろに落ちていた小枝を拾って装備した。
「へへっへ、読めたぜ。コレは小枝のバグだろう」
「なーる」
「さっすが、攻略早い」
残りの二人もすぐに小枝を装備しだした。
「おめえらじゃ無理に決まってるでやんすよおおお」
羽ウサギは装備を外したところを見て反撃に転じた。鋭い爪と飛び蹴りで3人をコテンパにする。
「おい、でない!」
「まさかの……」
「やばいヤられる、装備し直せ………くそっ………」
3人は絶命して、その場から去っていった。
「けっ、歯応えの無い奴らでやんす」
「ちょっと悪いことしたかな……」
2号は羽ウサギから、この技が浮き雲である事と、威力が上がるコツを教えてもらった。
「こう、素早く、振り切るイメージで斬るでやんす!」
なお、羽ウサギは刀剣オタクであり、刀と剣技にうるさいらしい。
「素早く振り切るイメージで、当たる所をイメージして……………難しいよ‼︎」
※1:リサは名前を差し出したので、名前を上書きされて、リサ自身のみ3号と聞こえる。