表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/33

はじめての海

「これが海・・・」

 2号は、いつものように裁縫ギルドのギルドクエストに取り組んでいる。今回は、特殊な素材が必要になり、城より南側に位置する海水浴ができそうな浜辺エリアに到着した。

 2号はバーチャルな世界で初めてみた海に心を奪われていた。

 数十分、足の装備を外して波と浜辺を楽しんでいると、ここに来た理由を思い出した。

「あ、素材探さなきゃ!」

 素材見つけた後で、泳いでみよう。できるかなぁ。


 浜辺で素材の捜索をしていたら、寝ているお姉さんに出会った。

「こんにちは」

「ふぁ、やあ、冒険者くん。何か用かい?」

 お姉さんは布を部分的にちょっと巻いた大胆な衣装を着ている。

「ごめんなさい。モンスターもいるので、寝てたら危ないかなと思って」

「かっかっか、心配は無用だ。私は羽の生えたモンスターが苦手だが、それ以外は無敵だ」

 大胆なお姉さんは、胸を張って話しているけど、布がはだけそうでハラハラする。


「羽ですか?」

「昔、白い竜に掴まれて、延々空を飛び回られた悪い思い出があってね。それから羽の生えたモンスターが苦手なのだ」

 大胆なお姉さんは顔を青ざめながら思い出話をした。


「おお、冒険者くんレベル5ではないか!」

「は、はい」

 2号は城下町防衛戦でレベル5に到達していた。

「申し遅れたな、私はネバという」

「2号です」

「どっかで聞いた名前だな」

 2号は「あはは」と苦笑いする。


「よし、君にクエストを与えよう」※1

「はい?」

 ネバはバンバンと2号の体を叩いて、何かを確かめている。


「ふむふむ、やはり人間は脂肪の付き方がイマイチだな」

「ぎゃああ」

「なあに、女性同士だ。気にする事はない、ふふふ」

 ネバさんの顔が明らかにおかしい。2号は刀に手を掛けた。


「じょ、冗談だ。まて、やめろ、私は今、無手なのだ」

「次は斬ります」

「君、怖いな」

 ネバは即座に両手を挙げて降参を示す。


「実は先ほど話したと思うが、白い竜に空を連れまわされたとき、愛刀を落としてしまってな。それを探しているのだ」

「その刀を探すクエストですか?」

「そうだ、刀は(さや)()も燃えるように真っ赤だから、見たらすぐにわかるはずだ。名を紅一天(こういってん)、この一帯で目撃情報を得たのだが」

 

 ぴょんぴょんと羽の生えたウサギが赤い刀を背中に下げて、二人の横を通り過ぎて行く。


「もしかして、アレですか?」

「うぎゃあああ、羽があああああ」

 ネバさんは重度の「羽」恐怖症みたいだ。


「2号ちゃん、たのむ倒してくれ!」

 ネバが2号の腕にしがみつく、この人本当に強いのだろうか。


「おうおう、小さい方の姉ちゃんやる気かい」

 刀を背負ったウサギがしゃべった。オマケに眼帯をしている。


「あのう。その刀この人のみたいで、返してもらえますか?」

 2号は喋るモンスターが初めてだったが、そういう事もあるんだなと簡単に受け入れていた。

 ネバさんは2号の後ろで震えている。


「刀は俺っちの魂だ!欲しいなら倒して持って行きな」

 ウサギのモンスターは器用に背中の刀に手を掛けて、2号を威嚇している。


「仕方ありませんね」

 かわいいモンスターを手にかけるのは忍びない。2号は落ちていたヤシの実風の硬い果実を、頭上に放り投げた。そしてその実を一閃する。

 2号は真っ二つに割れたヤシの実の片割れをウサギに手渡す。


「これと交換じゃダメですか?」

「ひええええええ、申し訳ありませんでぇ、ございましたあああ。お、お納めください」

 ウサギは素直に2号へ刀を渡し、猛ダッシュで逃げて行った。


「ほう、若いクガの実を綺麗に両断するとは」

 ネバは二人から安全な距離を取って、様子を見ていた。


「はいコレ、ネバさん。もう落とさないで下さいね」

 2号は刀をネバに手渡す。


「野心のない奴だなぁー、その刀は最高ランクだぞ!持ち逃げしようとか考えないのか?」

「え?ネバさんの刀でしょ?」

 2号はネバの言葉の意味が良く分からない。


「あはははは、気に入った。お前を弟子にしてやる」






※1:レベルが上がると冒険者のランクがあがり、一部のNPCからクエストを受注できるようになる。


2015/2/17:誤字を修正した。

2015/3/6:語尾の「やんす」追加した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ