閑話休題 開発ルーム2
またしてもここは宇宙船内の開発ルーム。ロリ博士と助手のウズキの2人は城下町を守る一人の女性冒険者の動きをモニターで見ていた。
「2号さんズゴすぎなんですけど、博士何か細工したんですか?」
「するわけないだろ!」
ウズキは地球上のお菓子に現在夢中で今はポテチを堪能している。
「じゃあ、バクですか?」
「おい!」
ウズキのポテチを取り上げて全部たいらげる。
「ああああああああ」
お気に入りの最後の一袋だったらしい。
「くだらない事を言うから悪いのだ。もしゃもしゃ」
ロリ博士は、なかなか美味いなと感心し、後でゲームに取り込んでやろうと、成分の欄をフムフムと眺める。
「じゃあ、なんであんなに強いんですか?2号ちゃんだけ異常ですよ」
「あくまでもこれは仮設だが、あの子は知らないのだ。限界を」
「どういう事です?」
ウズキにはまったくもって分からなかった。
「たとえばお前、足は早いか?」
「ええ、運動は得意な方ですけど」
「でもゲーム内では2号が早い」
ウズキの頭にはハテナが浮かんでいる。
「パンチングマシーンの最高得点は何キロだ?」
「え?やった事ないですけど。普通の女子よりは、ってか2号ちゃんよりは出るはずです」
「でもゲーム内では2号の方が出る」
ウズキは納得がいかないようで頭を抱え出した。
「博士、つまりどう言う事なんですか?」
「私の助手としてはこの辺でピンときて欲しいところだよ。まあいい、つまり人間には本能的に現状を維持しようとする力が存在する」
「えええ、どんどん難しくなってきました」
ウズキはロリ博士の話がもう理解の限界らしい。
「わかりやすく説明するから、まあ聞け。つまり、体温を一定にしたり、呼吸をして心臓や血液を動かし、生命を維持しようとする力があるんじゃ。この力は意識しなくても常に働く。そして、ゲーム内でも酸素は必要ないが、これまで生きてきた癖としてやってしまう」
「そうなんだ、知りませんでした」
「お前がリアルでどんだけ走っても死ぬことはできない。心臓が壊れたら、動かせなくなるから、壊さないようにしようという力が普通は発生する。これも現状を維持しようとする力が働いているからじゃ」
ロリ博士が教壇に立つ教師のように話を続ける。
「つまり、ゲーム内でも同じ癖が働き、リアルと同じ分だけしか走れないのじゃ」
「ええええええええ」
「こっからが、今回のポイントなんじゃが」
「はい」
ウズキはゴクリを固唾を飲んでロリ博士の最後のオチを待つ。
「でも2号は限界まで走った事がないから、走れるのでは?というのが私の仮設じゃ」
「ええええええええええええ」
ウズキは今日の衝撃的事実2回目で、ノックダウン寸前だ。
「しかも聴覚が異様に発達しているおまけ付きじゃ」
「2号ちゃん、チートじゃないですか」
モニター画面の2号へ背後から敵モンスターが斬りかかるが、2号は軽くいなして何かをつぶやいている。
「何言ってるんだろ」
「8、7、6、5」
別のモンスターが2号に襲いかかるのを見て、いなしたモンスターを玉突き状に蹴り飛ばし、そして一閃。
「刀の耐久が回復する時間をカウントしてるんじゃろ」
「かっこいいいい」
ウズキは2号のファンになってしまった。
「博士、ところで例のトラブルの件はどうするんですか?」
「あれは1号にまかせる事にした。おう、倒したみたいだな」
ーーシステムメッセージ
「おめでとうございます。ブラックドラゴンの討伐に成功しました。ラストアタックは1号さんです」
「ちょっくら、行ってくる」
ロリ博士は足早に開発ルームを出て行った。
「えー、1号さんに頼むとか。博士ひどいなぁ」
ウズキは楽しみが増えた事でニヤニヤしながら、地球上で調達したお菓子を取りに行く。




