脱ぐなら今!
――確かに見覚えがある、ここは生まれ育った街だ。1号は少女がいた近未来の部屋から、転送を完了していた。
「いやいやいやいや、生まれ育った街だけど、俺のアパート中野だし。なんで実家に飛ばす?いじめ?明日の仕事どうすんだよ?ああああ、カバンないよ。財布も携帯もカバンの中じゃないか。・・・・。とりあえず実家返るか」
1号はボヤキながら、熊本市のとある街道を実家に向けて歩く事にした。
パニック状態のため、現状を整理する。身なりは少女が飛来した直後の服装だ。特に破損もない事を確認した。
「まて、0時にゲームが開始するって言ってたな………」
1号は久しぶりに訪れた公園のベンチに腰を下ろした。公園の時計も0時を指している。
「………って、時間ねぇぇぇぇ」
真っ暗の公園で、一人でツッコむ。
「とりあえず、ゲームとやらを公園でやり過ごすか。何が起こるがわからん」
ピコーォーん。ピコーォーん。
「この音のセンスなんなの…………」
0時に始まると言われたゲームを1号はベンチで身構えていた。
ーーシステムメッセージ
「定刻になりました。これより不夜城version1.0へのログインを開始します」
「不夜城ってすごいな。多分自動翻訳されたんだろうけど」
眠らない城みたいな事がテーマなんだろう。多分。
一瞬で視界が切り替わる。背丈の低い雑草が生い茂げ、草木花は見たことがないものばかり。獣道の先には煙が立ち上っている。民家があるのだろうか?
小さい頃に必死になって遊んだゲームの中に入ったみたいだ。画面の中ではドットを組み合わせた映像だったが、想像力を膨らませ、いつかはこんな世界に入ってみたいと考えた事があった。まさか、異星人メイドコスのゲーム開発者に夢を叶えてもらうとは………。
初期装備を確認してみる。
・村人の服
・村人のズボン
・皮のくつ
・武器はない
なんと言うか物凄くダサい。1枚皮の真ん中に穴を開けて首を通して縛っただけの素朴な服………、ズボンも横から完全に見えている。ひどい、早く脱ぎたい。
「………とりあえず、町が村みたいなのを探してみよう。チュートリアルくらいあるだろう」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
獣道を少し進んだ先で、村を発見した。村の入り口には、イカツイ男性の門番が立っていた。ー―守ってるって事はやっぱり出る?モンスター?
「あのー」
「どうした……、道にでも迷ったか?」
門番の男は普通に会話できるようだ。一定のセリフを言うアレではないらしい。
「この辺はじめてと言いますか。ええっと………」
1号はコミュニケーション能力が低かった。
「冒険者だな、村長の家は奥の大きな屋敷だ。まずは挨拶していきなさい」
門番の男が気さくに答える。恐い人ではないらしい。あと、このゲームの参加者は冒険者という設定らしい。
「あ、ありがとうございます」
やっぱ、定番の村長の流れか。異星人でも同じなんだな。
村の中に入ると、女性と目があった。女性はスラット長身で、黒髪を後ろで結び、銀の軽量アーマー風の何となく高そうな装備を着こなしている。1号は恥ずかしい装備をしている事を思い出した。ーーもうちょっと後で会いたかった。脱いだ方がいい?どうする?
アタフタしていると、女性が明るく話しかけてきた。
「あ、新規の方ですね」
はっきりと喋るお姉さん風の女性だ。先ほどの門番と違い、何かが違う。ーーいや、多分この人も…………。
「あの、もしかして、あなたも………」
1号は恐る恐る女性に聞いてみた。
「はい!あなたと同じ冒険者です!」
女性が満面の笑みで答える。1号は女性の笑顔に弱い。
修正)ベータ->1.0
修正)1/22:1号の時計を削除した。
修正)1/23:インデントを修正した。
修正)2/19:インデントを修正した。