城攻略 3
もう何日目だろう、こうして地下2階を行き来するようになったのは。地下1階の牢獄から地下2階までの抜け道は1週間前に開通したが、その先が大変だった。
開通して驚いたのが、筋肉ムキムキのワッズが戦闘は手伝わないという事だった。彼は罠の解除や鑑定、クラフターがメインらしい。あと、穴掘り。そのため、抜け道が開通してからは牢獄で寝ている。
1号は白竜のクエストを達成するため、地下2階の社まで行き、天運の碑石を手に入れなければならない。抜け穴から社までの道のりは険しく、レベルの高い衛兵が何人も巡回している。
ログインして何日も経っているが、1号は未だにLv1で村人装備である。実は初期狩りのショックが心に突き刺さり、未だに街に入れない。
しかし、最弱でも何回も死にながら、衛兵の巡回パターンからルートを試行錯誤し、なんとか社に到着した。※1
「おおお、着いた」
洞窟の四隅に明かりが灯り、神聖的に社が浮かび上がる。ゲームの作者は異星人だが、建物の作りは和風だ。不思議に思っていたが、自動翻訳機能により、最も馴染みの深い名前や見た目が適用されるらしい。ロリ博士の助手ウズキは結構暇らしく、ログアウトすると、お喋りにやって来る。彼女が色々教えてくれるのだが、話の大半は地球上の食べ物の話になる。
まがまがしい石が社に祀られている。
「あれだな、衛兵が来る前にいただこう」
社に到着するまでは苦労したが、到着すれば簡単に入手できた。キーアイテムの名前は天運の碑石とある。間違いない、これでクエスト達成だ。
「やった!やったぞぉぉぉぉぉぉ」
1号は、衛兵の事を忘れて大声を出してしまった。
突然システムメッセージが鳴り響く。
「不夜城の地下にある結界を破ったプレーヤーが現れました。1号さんです。城周辺の方はモンスターに注意しましょう!」
「え、結界を破る?」
物凄く嫌な予感がする。振り向くと社の扉が開いて、暗い闇が広がっていた。かすかにモンスターの鳴き声が聞こえる。
「聞こえない、聞こえない、聞こえない」
1号は急いで翼竜の飛翔石を使った。転送先はワッズの居る牢獄を選択した。
「坊主、手に入れたみたいだな」
「ワッズさんやばい、結界を壊したみたいだ」
「それは、そうだろう?」
ワッズはあご髭を触りながら、不思議そうに話す。
「え?知ってたの?」
「坊主、ここに長居は無用。その石で脱出だ」
ワッズは持っていたスコップで、足枷の鎖を1発で砕いた。
※1:ゲームオーバーになると、宇宙船内のロビー区画にある元の肉体に戻される。そこからゲームに再突入若しくは、地球上の復帰地点を選択して帰る事ができる。




