第一話 生まれかわったら
私が、谷口 穂花としてこの世に生を受けてから、7年が経った。
仲の良い両親と優しいお兄ちゃん。そして可愛い妹のいる幸せな家庭に生まれ......と続けたい所だが、今世の私の家は母子家庭である。兄弟はいない。父は私の記憶のないうちに病気で亡くなってしまったと母が言っていた。
幸せな家庭であったのは前の自分である。そう、前世の私。
前世の自分は、(先ほども書いたが)仲の良い両親に、優しいお兄ちゃん、私に懐いている可愛い妹がいるどこにでもある平凡な家庭であった。...一つの事を除いては。
一つの事とは、私の事である。生まれた時から心臓が弱く、私の人生は家にいる時間より、病院のベッドで寝ている時間の方が多かった。
当然学校には行けず、親友は一人いたが友達はいなかった。それでも家族は毎週私の病室へ来てくれて、いろんな話をしてくれた。そんな家族が大好きだった。
だが.....18歳になって二ヶ月たった日の深夜、突然の発作で私は死んでしまったのだ。
苦しさと悔しさで涙を流しながら、息を引きとる前世の私。
そこまでの18年間の少女の記憶が、現在7歳である私の脳にまるまる入っている。
この記憶を思いだしたのは、二年前だ。それまで普通にやんちゃで元気な子供....だったのだが、18年間の記憶(女子の)を思い出してしまった以上は、もう公園で泥だんごを作って人に投げつけたり、木に登って飛び降りる(?)という謎の遊びをしたりはしません。でも、前世ではできなかったアスレチックや、ブランコでは存分に遊びたいと思います。
そして私が記憶を思いだして、決めたことは三つ。
一つ、前世をひきずらない事。
前世は今世ではない。前世の家族は大好きだったけれども、今のママが嫌な訳ではない。確かに仕事が、大変で帰りは遅くなってしまうしパパも兄弟もいないのは寂しいけれど、休日は、私にかまってくれるし、何しろ一人娘だからといって甘やかしたりしない。怒るところはきちんと叱ってくれるのだ。(特に思い出す前の私は奇行だらけだったから)ママの事は尊敬している。大好きだ。
私今、谷口 穂花という新しい人間なのだ。
二つ、健康を維持すること。
前世を引きずらないと言ってもこれは別だ。もう若くして死にたくはない。幸い今の私は健康体そのものである。
きちんと運動して、食事もとれば長生きできるはず、長生きしたい。
三つ、乙.....『ピンポーン』
おっと、お客さんが来たようだ。
今はママは仕事なので、家にいない。私は子供なのでドアを開けるのはあまりよろしくないことだが、今は12時ピッタリ。おそらくあいつだろう。
インターホンは取らずに玄関の扉を開ける。...あ、そういえば
「こんにちは、穂花。お昼ごはんの時間ですよ。うちにくる準備はできてますか?....ところで、この前僕言いましたよね?12時にくるのが僕だってわかっててもインターホン取らなきゃだめだって。知らないおじさんかもしれないじゃないですか。連れてかれても知らないですから。次やったら、お仕置きだから」
三つ、攻略対象者とは極めて普通に接すること
乙女ゲームものです。
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