私とたまご 8
とある天使のお姉ちゃん視点。
いきなり、アタシんとこの仕事場に、弟がやってきた。
しかも、大事な部分の部品を、アタシが細心の注意を払いながら、作り出そうとしている最中にだ。
ちらりと、顔を見ただけで、何しに来たのか、すぐ分かる。
普段は煙たがって、全然寄り付きもしないくせに、困った時だけ、ねーちゃん助けてだ。
成人過ぎているくせに、本当、情けない男。
これが、アタシの弟でさえなければ、即刻、問答無用で、たたき出している。
「今度はどんな、へまをやったわけ」
手元にだけ、視線を向けながら、形を整える事だけに集中する。
弟はしばらくの間、黙っていたが、やかて一気に、話し続ける。
全て聞き終わったあと、アタシは呆れきった視線を弟に向けながら、作業の手を止める。
弟の顔を、しばらく真剣に見つめ続ける。
「ねえ、あんたは何で、第三位から上しか、地上に降りれないか知ってる」
その問いに、なぜアタシが、誰もが知ってる事を、聞くのかと、不思議そうな顔をしながらも、当たり前ように答える。
「そんなの、地上には魔族が居て、危険だからに決まってだろう」
「ブッブー、ハズレ」
「じゃあ何でだよ」
ふてくされてる弟に、言ってやる。
「そんなの決まってんじゃん、未熟者に、うろちょろされたら、仕事になんないからよ」
「じゃあ、どうすればいいんだよ」
相変わらずな、このダメ弟は、分からない事は、自分で考えもせずに、すぐ人任せに答えを求める。
現に、たいして考えもせすに、アタシの所にいるのが、いい証拠だ。
余りにも、ダメダメな弟に、仕方ないと諦めて、溜め息混じりに、話し出す。
「元部下に、たまご部屋経験者で、今はヘドロ狩りの仕事にしてる、腕の立つ男がいて。そいつには、結構な貸しがあって、アタシのお願いは、絶対に聞いてくれる。そいつを護衛プラス、アドバイザーとして、あんたに付けるわ」
「やっぱ、ねーちゃんは頼りになる。ねーちゃんの所に来て正解だった」
その言葉を聞いて、あんたを地上に行かせるの、アタシの方が、不安になってきた。
「ねーちゃん、ありかとう、後はよろしく」
面倒ごとを、全部人に押し付けて、来た時とは、大違いに、ご機嫌になって去っていく。
コレだから、お前は弟に甘すぎるのだと、兄さんによく言われるんだよな。
あの弟も、甘える相手は選んでいる。
もし、兄の所に行って、同じ話を、しようものなら、説教された挙げ句、事が全て収まるまで、自宅謹慎させられてたはすだ。
幸いなことに、上層部には、沢山の貸しのある、賭けゲーム仲間が、何人もいるから、彼らにお願いして、弟の厄介なお願いを、ねじ込んで貰おう。
弟は、アタシに、デッカイ借りを作ったって事、ちゃんと分かっているのかな?
これだけお姉ちゃんを、働かせるんだもん、必要な時がきたら、借りはきっちり回収するからね。