お城と攻防と強敵と.1
二人の目の前には、巨大なお城のような、守者達の訓練所が聳え立つ。
二人は軽々と門番を地にはいつくばらせ、やっと城の中へと侵入した。
「なんだお前ら! ……お前らは!」
守者はそう言い、ポケットに手を突っ込み、何かが書かれた紙を取り出した。
微妙に裏から透けて見える。それは、空姫と凛の写真だった。
「やっぱりお前らか!」
守者は紙を投げ捨てて腰に差してある剣をぬいた。そして、いきなり切りかかってくる。
その刃を凛が刀で受け止めた。
「剣筋がダメダメ! 守者っていうのはこの程度なのっ?」
凛は相手の剣を押し返し、刀をしまった。
「きな。どんな攻撃でも避けてあげる!」
いつになく凛々しく真面目な顔で、守者にむかってそう言い放った。
凛は抜刀の構えで、相手の攻撃を待つ。相手はたじろぎ、無鉄砲に斬りかかってきた。
凛はそれを安々と避けた。男は我武者羅に剣を振るが、凛は全て避ける。
「遅いよ!」
凛は相手が斬りかかってきた瞬間、相手の腹に一撃を加えた。男は膝から崩れ、地面に伏せることとなる。
「あ、もちろん峰だから安心してね?」
凛は空姫のほうに振り返り、ウインクをしてそう言った。
空姫は腕組みをし、
「さすが光路流の当主ですわね」
と言った。
光路流は、居合い斬りとすばやさに特化した流技。先ほどの回避も止水と呼ばれる技で、動けば揺れる『気』の流れを読んで敵の技を絶対回避するというものだ。
「こんな基礎中の基礎で褒められてもねぇ……」
凛は照れているようだ。
「居たぞ! あそこだ!」
どこからか二人の情報は漏れているようで、まるで津波のようにたくさんの守者がやってきた。
「こんな多いと大変ですわねぇ……」
空姫は頬に手を当て、困った様な表情をしていた。
「こんなに多い死体どこに埋めようか迷いますわねぇ~」
どうやら困っていたのは、そっちのようだった。守者の一人が皆より一歩前に出て、「ふざけるな! かかれ!」と、他
の皆に命を下した。
「空姫、援護は任せたよ!」
「凛こそ、一匹もこっちにこないようにしてくださいな」
凛は刀を抜き、空姫は詠唱を開始する。凛は津波のような大群に迷わず突っ込んでいった。
前方の一人を斬りつけ、右から来た切り下げをバックステップで避ける。
「キリがないなぁっ、もう!」
凛は守者の大群から一度離れ、刀を鞘に収めた。
「鎌威太刀!」
凛が振った剣筋から、カミソリのような細い刃が放たれた。鎌威太刀は幾多の人を真っ二つに切り裂き、五分の一ほどの人を殲滅した。
「凛、どいて! フリーズネイル!」
詠唱を終えた空姫が地面に手をつくと、そこからパキパキと地面がどんどん凍っていった。その光景はまるで、虎がエサに向かっていっているようだった。
凛は足に魔力を込めて、人間とは思えないほどの跳躍をして空姫の横に移動する。これも、光路流独自の移動法だ。
その氷を触れた守者に、氷はどんどんと巻きついていき、あっという間に守者全員を凍らせた。
二人は凛が鎌威太刀で開けた人の間を通り、空姫は去り際にこうつぶやいた。
「私たちが帰るまでしばらく、そうしていてくださいな」
――この後も二人はどんどんと守者を倒していき、ついに頂上へと達した。