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僕の×と君の愛  作者: さなちゃ
第一章 始まりの×
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第十二話 俺の×と君の熱

ご覧いただきありがとうございます。

よければ感想等を頂けると嬉しいです!

 梅雨に入りいまいちパッとしない天気。相も変わらず愛敬を振りまく愛菜(あいな)

「ほんと、梅雨ってなんであるんだろーねー。消えちゃえばいいのに」

「理由なんてないだろ」

 今は昼休み。席替えがあっても愛菜と席が隣なのは何かの運命か。前までは前後の隣だったけど今回は左右の隣だからより話しやすくなった感じがする。

「あーもう早く梅雨終われー」

 そう言うと女友達のもとに戻る愛菜。それと入れ替わりにやってきたのは瑠惟佳(るいか)だった。

「はーくん、やほ」

「瑠惟佳か。何用?」

「はい、どうぞ」

 手から市販のプリンを取り出してくる。透明な容器から中の薄黄色のプリンが窺える。

「え、くれるの?」

「うん。この前勝手にゼリー食べちゃったから」

「いやそんくらい、いいのに」

「遠慮しないで受け取ってよ」

 その時、俺は小学生の頃を思い出した。ゼリーを勝手に食ったのも、自分で申し訳なくなって後日別のお菓子をこっそり渡したことも俺がやったことだ。また瑠惟佳は“仕返し”ともとれることをしてきた。

「…分かった。ありがとう」

 瑠惟佳は俺に微笑みかけると、ブロンドの髪を靡かせてスッと消えるように立ち去った。それはまるで幽霊のように俺の目から消えていった。

 プリンの容器に描かれた落書きを見て、俺は教室に引き戻される。いや、それよりも別の男が登場したからかもしれない。

「羽緒くん、今日もお熱いですねぇ」

 いつも通りニコニコの笑顔で、そのマッシュは俺の前にヌルっと現れた。

「確かに、昨日に続き今日も蒸し暑いな」

「上手くいってるの?」

「何がだよ」

「幼馴染との恋模様だよ」

 わざわざ揶揄いに来たのか、と(さく)のことを睨みつける。

「恋も糞もねえよ」

「そんなこと言っちゃって。何もないわけないでしょ?」

 俺をのぞき込むように見る朔。

「勝手に言ってろ。大体、俺の恋模様に興味ある奴なんて一人もいねえよ」

 机二個分離れた場所にいる愛菜と一瞬だけ目が合ったが、向こうが先に目を逸らしてきた。朔が続ける。

「いるよ、ここにね」

「厄介なやつに興味を持たれたな」

 溜息を朔に聞こえるようにするが何も気にしない様子だ。

「だって羽緒の恋愛って珍しいじゃん?高一の時からそういうの興味なさそうだったし」

 そして声のボリュームを抑えて朔は言う。

「まあ、愛菜と結構いい感じに見えたけどね」

「なわけねえだろ」

 手で抑えるようなジェスチャーをする朔。

「まあまあ。噂になってたってだけだよ。愛菜を狙う輩は結構いるからね。噂が立つのは自然なことだよ」

「だから今回も、ってわけか」

「そういうこと。でも、火のない所に煙は立たぬって言うでしょ。嫌なら気を付けたほうがいいんじゃない?」

 ふと翔のことを思い出したが一瞬で頭の中から消した。

「そうだな、気を付けるよ」

 とは言ってもこの朔という男には信じてもらえないだろう。

「てか早くご飯食べよう」

「お前がな」

 そう言って満員電車によって潰されたサンドイッチを手に取った。



 次の日、学校に着くといきなり朔が話しかけてきた。

「おはよう、羽緒」

「おはよう。朝っぱらからどうしたんだ?」

「いやー大したことじゃないんだけど、気になったことがあって」

 朔にしては珍しく下手な笑顔を浮かべている。

「羽緒って昔、幼馴染ちゃんのこといじめてたの?」

「は?」

 朔の口から“そのこと”が出てくるとは思ってもいなかった。それと同時に、情報源がどこなのかが気になる。

「誰情報だよ、それ」

「主にサッカー部の中で噂になってるらしいよ」

「なんでだよ」

 サッカー部のやつとはほとんど関わりがない。あったとしても数人だし、噂話として成立するほど俺は有名じゃない。ただ、情報を流した奴に心当たりはある。俺と不仲な(かける)だ。

「それは僕に聞かれてもねえ。羽緒なら原因分かってるんじゃないの?」

「さあな。まあ確かに、あのことは学校の中で少し問題になったけどな」

「ホントに!?この真面目根暗優男の羽緒くんが!?」

 目をまん丸にさせて少し驚いた顔をする朔。

「真面目でも優男でもねえよ」

「根暗は認めるんだ」

「それは主観じゃ分からないからな」

「好きだね、屁理屈」

「うるさい」

 朔はいつも通りの笑顔に戻って別の友達に絡みに行った。

 リュックを机の横のフックに掛け、椅子に腰を下ろす。俺の溜息はそのままクラスの喧噪に飲まれていった。



 生憎の雨のせいか、息の詰まるような空気だ。薄暗い階段で相対しているのは翔。放課後になり早く家に帰りたいのに、勘弁してほしい。昼休みに急に呼びかけられたから仕方なく来た。

「なあ、なんで瑠惟佳と絡むんだ?」

「なんでそんなこと翔が気にしてるの?」

「俺の質問に答えろ」

 鋭い目つきで俺を見下ろすように睨む。

「前も言ったと思うけど、向こうから絡んできているから…」

「だからいじめのことは忘れた、と?」

 見当違いも甚だしいが、そんなことを言っても翔には無駄なのだろう。

「違う。忘れるわけないだろ」

 一瞬の間が永遠に感じる。とんだ茶番だな、とも思う。

「俺は昔見たんだよ、あいつが泣いているところを。…それなのにお前は何食わぬ顔で瑠惟佳と接している。俺には理解できない」

「…そっか。今度から気を付けるよ」

 朔のような笑顔でそそくさとその場を離れる。この時ばかりは朔が役に立った。すると後ろから翔が近づき、声を落としてこう言った。

「今度あいつを悲しませるような真似したら、分かってるな?」

 負けヒロインならぬ負けヒーローのようなセリフだな、と思ったが口からはそんな言葉は出ない。愛想笑いを翔に向けてから昇降口に直行した。

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