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僕の×と君の愛  作者: さなちゃ
第一章 始まりの×
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第十一話 俺の×と君の今

ご覧いただきありがとうございます。

よければ感想等を頂けると嬉しいです!

 フライパンの中で黄金色になる挽肉。俺に纏わりつく瑠惟佳の視線。

 瑠惟佳(るいか)に言われずとも、何となく愛菜(あいな)が俺のことを好いているだろうということは分かっていた。でも俺は付き合いたいとかそんなことを思ったことは一度もない。今の距離感がとても心地よく、それを崩すことを嫌ったからだ。だが同時に董花(とうか)に言われた言葉を思い出す。

 ___愛菜で、いつまで遊んでんの?

 遊んでいるつもりはない。ただ本当にこの関係のままがいいと本気で思ってしまっているだけだ。

「はーくんは愛菜ちゃんのこと好きじゃないんでしょ?なのに何であんな関わり方するの?」

 何と返すべきか一瞬迷ったがあまり包み隠さずに言おうと決めた。

「俺は誰も傷つけたくないんだよ。だから愛菜との関係はこのまま何もなかったことにならないかなって。それで今日まで上手くやってきたつもりだ。それに、これからだって、多分上手くやれるはずだ」

 多分俺が言っていることは自分にとって都合のいい話だということも分かっている。だから、瑠惟佳から何と言われようともそれを受け入れる覚悟はできている。だが瑠惟佳から発せられた言葉はそれを裏切った。

「そっか。はーくんは変わってないんだね」

 瑠惟佳はどこか昔懐かしむようで、安堵するような表情を見せる。

「ん?どういう意味?」

 今の俺は瑠惟佳の知っている小学校の時の俺とは違う。今の俺は両親と幼馴染を失った喪失感の上で、不安定ながらも成り立っているだけだ。もちろん、幼馴染は自分の意図しない形で再会したが。

「ううん、なんでもない。てか今日の夕飯は何ですか、シェフ」

 ミートソースパスタだよ、と答えトマトソースをフライパンに追加する。全く、瑠惟佳の考えていることは分からない。いつか分かるときがくるのだろうか。

 夕飯を食べ、テレビを眺めているとあっという間に時は過ぎた。昨日の夜に瑠惟佳から「明日は覚悟しててね」と言われていたが特に何もしてこなかった。俺はそれに少し安堵して眠りについた。



 何もないと思っていた俺が馬鹿だった。

 アラームの音で目を覚ますと目の前に瑠惟佳がいた。何故か俺のベッドで寝ている。左腕で上体を起こし瑠惟佳の方に向きながら、寝ぼけた頭の引き出しから昨日の情報を取り出すが、瑠惟佳と何かした記憶はなかった。

 俺のアラームの音で瑠惟佳も起きてきた。重い瞼を擦りながら俺に話しかけてくる。

「はーくん、おはよ」

 ぱっちりとした瑠惟佳の目と目が合う。

「…おはよう、瑠惟佳。なんで俺のベッドにいるの?」

 瑠惟佳の手が俺の頬に触れる。そして少し微笑みかける。

「昨日の夜あんなことしたのに忘れちゃったの?」

 何かしてしまったかと思ったが一瞬で考えるのをやめた。

「忘れたも何も、何もしてないんだから答えようがないな」

「そっか。じゃあ、今からシちゃう?」

「今日はバイトがあるし、遠慮しておくよ」

 どうしてこうも瑠惟佳は俺の理性をぶっ壊しにくるのだろうか。

「後悔しても知らないよ?」

 するものか、と少し笑ってベッドから出た。



 バイトが終わったころには午後四時を回っていた。午前中からシフトが入っていたので疲労感が溜まっている。

 家に帰るとリビングで瑠惟佳と瑞羽(みずは)がゲームをしていた。瑞羽は昔から生粋のゲーム好きで様々なゲームをプレイしている。最近はサバイバルホラーにはまっているらしいが瑠惟佳がいるためか大衆向けのゲームをしていた。

「はーくんおかえり」

「まだ帰ってなかったんだ」

「帰った方が良かった?」

 目を細めて俺の顔を睨みつける。

「いや、そういうことじゃなくて」

「分かってるよ」

 瑠惟佳は再び笑顔になりゲームに視線を移動させる。

「もうすぐ帰ろうかと思ってる」

 瑞羽がゲームの手を止めて瑠惟佳の方を見る。

「夕飯は食べていかないの?」

「いいの?」

「いいよ。瑠惟佳ちゃんの時間が大丈夫ならね」

「分かった。じゃあ頂こうかな」

 その後ゲームを終えると瑞羽は夕飯の準備を、瑠惟佳は帰る準備を始めた。瑞羽の手伝いをしようとしたのだが、邪魔だから自分の部屋に戻っててと言われたので大人しく自室に帰った。

 机の上には数学Ⅱのノートが置いてある。ワークを解いて提出する用のノートだ。夕飯の時間まで少しやるかと開くと、白紙だったページに落書きがされていた。何かのキャラクターが描かれており、そいつから『バイトおつかれさま』という吹き出しが出ている。その絵は絶妙な下手さを醸し出していて、逆にそれが瑠惟佳らしい味になっている。瑠惟佳は元々絵がとても下手だった。

「サプラーイズ」

 瑠惟佳が扉から顔を出している。満面の笑みだ。

「昔から絵の上手さが変わってなくて安心したよ。瑠惟佳クオリティって感じがして」

「それディスってるでしょ」

「そんなことねえよ?」

「絶対ディスってるやつだ」

 頬を膨らませる瑠惟佳。

「てかさ、小学校の時もこんなことあったよねー」

 一瞬ドキリとする。別に悪事を掘り返されたわけではないのだけど、小学校の頃の話はあまりしたくないというのが本音だ。

「まあ、その時ははーくんが『バカ』とか『クズ』とか書いてきたんだけどね」

「それは…ごめん」

 謝るしか俺の選択肢にはなかった。そもそも、なぜ瑠惟佳がその話を振ってきたのか。

「謝らなくていーよ。昔みたいで楽しいなって」

「楽しい…?」

 瑠惟佳にとって小学生の時の思い出は楽しいものだったのか。もちろん、俺との思い出だけではないから一概には言えない。

「そうだよ。もちろん、今も楽しいけどね」

 そして瑠惟佳は俺に近づいて上目遣いで言う。

「はーくんと一緒なら、ね?」

 自分の中に色々なものが巡っているのを感じる。それを言葉で簡潔に表すことはできない。

 それからは会話が中々頭に入ってこなかった。夕食を食べ、瑠惟佳を駅まで送ると時刻は八時を回っていた。俺はただ、この不安定な毎日に身を任せるしかないのだと悟った。

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