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6月12日
次の日、陽菜は意を決して、小さな声で言った。
「あのね、あたし、悪いと思ってる。ごめんね、琴音」
琴音が返事をしようとした瞬間、周りの声がざわつき始めた。
「え、じゃあ、陽菜は悪気あったんだ!」
「やっぱり琴音ちゃん可哀想だよ」
「陽菜サイテー」
その言葉たちが、まるで波紋のように広がっていく。
陽菜は自分が言った謝罪の意味が、みんなに違う風に伝わってしまったことを感じた。
琴音はじっと沈黙したまま、誰にも答えなかった。
教室はまた、ギスギスした空気に包まれていった。
私はただ、教室の隅で黙って見ているだけだった。
何も言えなかった。何もできなかった。