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6月9日
陽菜は、ふわっとした言葉を口にしたつもりだった。
だけど、琴音には、それがチクチクと刺さるトゲになった。
「ひどい…」
琴音はつぶやいた。
陽菜は、こう言った。
「あたしは何も悪いことはしてないけど?」
放課後、琴音はトイレで泣いていた。
誰にも見られたくなくて、できるだけ静かに。だけど、その姿をクラスメートが見ていた。
「琴音ちゃん、泣いてたよ」
「え、なんで?」
「陽菜に、なんか言われたらしい」
言葉はあっという間に教室を巡る。
最初は同情、次第に怒り、そして——裁きへと変わっていった。
「陽菜ってさ、いつもキツくない?」
「なんか、昔から上から目線だよね」
「無神経なんだよ」