00 プロローグ
「はぁっ……はぁっ……」
俺は肩で息をする。
間一髪──仲間のピンチに間に合った。
無我夢中になっていたから、俺は忘れていた。
自分の姿は今、『女』で、こいつらから──仲間たちから逃げていた、ということを。
「その力にその剣。アルカ嬢……いや、まさかお前……アルスか?」
「……チガイマス。ヒトチガイデス」
しまった! バレた!!
この場から急いで離れないと……!!
俺はくるっと踵を返す。銀糸の長い髪がふわりと後を追った。
身体を少し前に倒し、足の指先に力を込め、地面を蹴って、一気に駆け出す。
「アルス! 待てっ! 待てって言ってんだろうがよ!!」
「そう言われて待つやつがいるか!!」
『種付けブレス』──呪いのブレスで女の姿になってしまった俺は、全力で逃げる。 振り返れば俺の仲間たちが追いかけてきていた。
「アルス! 待ってください! 俺と結婚しましょう!」
「なんでそうなる!?」
「アルス君! とりあえず話し合いをしませんか?」
「手に縄を持って言うセリフじゃねぇな!?」
こいつらに捕まったら終わりだ。
すべてをゲロするまで問い詰められることは間違いない。
そうして吐いた結果、俺は前世でみたことのある『エンディング』へまっしぐらになる気しかしないんだ……!
(嫌だ……! 俺は絶対に戻る……!)
『男』に戻ってみせる……!!
「お前たちとのエロエロエンドなんて、絶対に嫌だぁあああああ!!」
銀糸の長い髪をなびかせ、胸を揺らしながら、俺は走り続けたのだった。