「人生」をプレイして頂きありがとうございます。『彼女ができない』及び『女性と進行フラグが立たない』という不具合を多くいただいております。そのお詫びとしてプレイヤーの皆様に『彼女』を1人差し上げます。
それは、唐突にたくさん寄せられた報告からだった。少し違うものもあるが、ほとんどが同じような事を訴える内容だった。それを受けて運営は直ちにこのような表明を出した。
「人生」をプレイしていただきありがとうございます。『彼女ができない』『女性とのフラグが立たない』と言いうご意見を多くいただいております。『お金が増えない』『顔のテクスチャがおかしい』などの報告もその都度対応させていただきます。
鳴り止まないメッセージ通知に神様達は対応していた。ここは天界。日々、下界の人間達の迫り来るメッセージにテンプレのような返しで対応している。神様6人に左右に分かれた座席が3つづつ。テーブルにパソコンが置かれている。この人生というもの、とにかく不具合が多いのだ。先程出た彼女ができない、お金が増えないから始まって面接に落ちた試験に落ちたなど、それは不具合なのか?と思えるものまで人間は報告してくる。
「まただ、顔のテクスチャがおかしい」
神様の1人がその報告を見てそう呟いた。人間を生み出すときに時々顔のテクスチャがおかしい時があるのだ。大体はみんなイケメンと呼ばれる顔が整ったものになるのだが、時々そういうことが起こる。このバグに対してはまだ調整中で対応し切れていない。
「詫びの彼女はできたか?」
「ああ、今下界に送るところだ」
そう話す神様2人の隣には顔の整った可愛らしい人間の女性がたくさん並んでいる。これは先程言っていた詫びの彼女というやつだ。赤いスイッチを押すと、次々とその女性たちは下界にワープさせられていく。全員転送が終わると神様たちは「ふう...」と額の汗をぬぐった。
「大変です!炎上しています!!」
「何だって!?」
送ってすぐにメッセージが来たのだが、それは喜びのものではなくむしろ怒りが多数だった。そのメッセージを開いてみると、そこには「ずるい」や「セコイ」という言葉の入った長文ばかりだ。
それもそのはずだ。例えばスマホのゲームだって頑張って課金なり課金せずに集めた石などで引いたレアなキャラを全員に配ると言っているようなものなのだ。そんなことをしたら、その石でキャラを引いたプレイヤーが損ではないか。そんえもの文句が出るに決まっている。
「どうしますか?」
「しかももうすでに彼女のいるユーザーには2人目は必要ないとの事です!」
「よく考えたらそうだよな...」
神様達は何も考えずに実装したが彼女が2人いたところでほとんどの人にとってはこちらも損だ。
「どうしますか!」
「うーむ....緊急メンテナンスだ!!!」
そういうと右側の席の神様が青いスイッチを押す。これは人間全員を機能停止にすることができる。再び押せば人間達は再び動き出す事ができる。
「さて、どうするか」
神様達は緊急会議を開く事にした。人間達は動作を停止しているのでゆっくりと会議ができる。6人が円になって会議を開始する...が今の状況を打開できる案を提案するものは誰もおらずただみんな黙りこくっているのみだ。
「どうする?このままじゃずっとこのままだぞ」
「そもそも、人間がワガママなのがいけないのよ!!!」
髪の長い女性の神様はそう言って机を叩く。確かに、自分のせいな事でもすぐに詫びだ不具合だバグだと大騒ぎしあわよくば詫びを貰おうとしている。そんな傲慢な態度に神様達も頭を抱えていた。
「くそー...どうすれば...」
「彼女ではなく友人というのはどうでしょう??当たり障りのない上に何人いても大丈夫でしょう」
「うーん、それも何か言われるのでは?」
「こちらは大丈夫です」
そう神様の1人が自信満々に言うのはその友人は人にもよるが大体の人が手に入れているからだ。彼女よりかは反感が少ないと考えているのだ。「うーん...」と言う声と共に特にそれ以上が思い浮かばなかったので早速友人を大量に生み出して先程配布した彼女を下界から削除する。そしてそれっぽいような文章と共に友人を下界に配布した。
反響は予想通り、あまり炎上することなくこの話は終わった。彼女ができないと騒いでいたものも、どうやら諦めがついたようだ。それでも彼女が全くできないと騒いでるものもまだいる。
「ふー、人間のワガママも日に日に酷くなってくるなあ」
「ましょうがないですよ。自分が良い感じに生きていけないとすぐにあーだこーだ言うんですからね」
「ああ...他人より優れていないだとかそういう類のものもあるからな。困ったものだ」
「本当ね...」
「大変だ!!!」
その声と共に神様達はその声の主のパソコンに集まる。そこには「最近不具合が多いので詫びてください」という内容のものがたくさん送られてきた。それに丁寧に返すが同じような事を繰り返すメッセージがひたすらくる。おそらく何人もが結託してこのようなものを送っているのだろう。そんなやりとりをしていると神様もついに堪忍袋の尾が切れてしまう。
「人生」をプレイしていただきありがとうございます。真に勝手ながら「人生」は今日、18時47分を持ってサービス終了といたします。
そのメッセージの後に下界に大きな隕石が複数飛んでくる。それによって人間達は死滅してしまった。その様子を見た神様達は何もない更地を見て満足そうだった。そしてこう言うのだった。
「よし、また新しい人間でもう一度作るか!」