夕焼けと青
コンコンッ、コンコンッ。
誰も叩かないはずのドアが響く。
他人が響かす音なんていつぶりだろう。
何日も動かなかった体をゆっくりと起こして、インターフォンを見る。
思えば何日も布団の中だった。何日も食べていなかったし、何日も目をつぶっていた。
思い出したくないことが溢れるように流れて、溺れてしまわないように鍵をかけていたのだ。
色のある世界に目がくらむ。ふらふらな体の自律神経に久々に活を入れる。
世の中は汚いものだらけで、もうみたくないと思ってたのに…。
「いったい誰だよ…。」
久しく動くことのなかった口角を、瞼を、膝を、顎を、手を肘を動かして、、、人間らしくして…外にでると、それは宅配便だった。
無言で品を受け取って、部屋に運んでから、差出人の名前をみると、それは母からであった。