表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/206

開幕、準決勝

 早朝、シダト王国首都ルテプ内壁は、朝早くながら大変な賑わいを見せていた。


 いよいよ始まる展覧試合準決勝、国内外問わずに席を取れた者達が賑わって闘技場に集まり、露店や店ではグッズまで羅列されて、予選以上の熱気が見て取れた。


 そんな闘技場正面の真反対側……関係者入場口には続々と、此度の展覧試合準決勝に出場する闘士が続々と集まっていた。オープンファイトに選ばれた闘士達が付き人を連れて入場していくと、馬車が一台停車した。


『古豪』バスティオン、恐らく1番の歴史を持つ闘士チームが、久々の本戦出場となり、前年王者との衝突に備える。


 続いて現れたのは、馬車ではなく見事な鎧を着飾った騎士達。彼らはさながら軍列の如く並んで、現れた者達。


『王者』ブルーラウンズ、さながら西洋騎士団の如く鎧を着飾った者達が、代表の四人の為に道を開けさせていた。


 その後しばらくして、現れたのは華美な飾りの馬車。


『戦乙女』ヴァルキュリア・クラン、展覧試合に花添える紅一点の女性チームは馬車の扉を開けられて、悠々と入場した。


 そして……馬車も、ましてや馬も無しに歩きで、自らの足で来る者たち。


『侵略者』 TEAM PRIDE、本戦会場へ最後に到着したのは彼らであった。一番最前列をマリスが歩き、その後ろを歩く偉丈夫達を見かけた内地の者達は、さながらモーセの海割りが如く道を開けた。


「貴方達、準備はいいかしら?」


 入り口前に辿り着いたマリスは、振り返らずに闘士達へ問うた。


「勿論」


「問題無し」


「無論」


「ええ、十分っす」


「緊張します……」


「……」


 皆が準備完了の意思を示す中……神山は息を吸って、ゆっくり吐き、声を上げた。


「 TEAM PRIDEぉぉ……やれんのか!?おい!!!」


「「「「「「「やってやるぜ!!おい!!!」」」」」」」


 展覧試合、準決勝……開幕!!




『レェディィイス!ェェああアンド!ジェントゥルムェェエエン!!みなさまお久しぶりです!実況のマティウス・ザキヤマでござぁいますぅ!!いよいよ展覧試合準決勝の日がやって参りました!!!無論、シダト王国首都ルテプのシダトアリーナは満員御礼!!会場には入れなかった方々は内地外壁問わず!!しかも、準決勝は国境超えて世界中に放映だ!!来れなかったやつも心配はいらねぇ!!』


 シダトアリーナ放送席には、名物実況者マティウスがハイテンションで実況を行なっていた。予選はシダト領内だけだったが、この準決勝からは国境を越えて世界に放映されていると説明し、予選以上の盛り上がりだと紹介する。


『解説のフルタチです、皆様おはようございます……さぁ、マティウスさん……今回の準決勝ですが!』


『おーやめろやめろ、まさかまさかだ、皆も知ってるだろうよ?あのチームが、まさかの準決勝進出しちまったんだ!!大事件なんだよフルタチ!!』


 マティウスは信じたくもないと大袈裟に頭を抱えてフルタチに言い放つ。


『あの全員劣性の、TEAM PRIDEがまさかまさかの下馬評覆して準決勝進出なんて信じられるか?でもこれが現実なんだよ観客の皆さん!』


 マティウスの実況に観客の歓声がブーイングに変わる、それだけTEAM PRIDEとは、この大会で異物として扱われているのが見てとれた。観客も現地人と召喚者殆が殆どで、劣性召喚者の戦いや活躍など見たくはないと染まり切っていた。


『マギウス・スクワッドはその後解散にも追い込まれたようで、劣性召喚者への敗北の重さが垣間見えます』


『しかぁし!!ここから先はもう誤魔化しは効かねぇ!!強い奴が勝つのが展覧試合、 TEAM PRIDEもここで終わるでしょうよ!!さて……出場チーム、入場だぁ!!』


 だが、ここから先はもう誤魔化せないと、観客を煽ると、遂にチームの入場が始まった。


 此度は四方に態々建造された入場ゲートから、順々に入場という形となっていた。この世界の民族楽器か、はたまた現世の民族の楽器か、様々なパーカッションを響かせてまず1組目が入場する。


『復活なるか、古豪バスティオン!!闘士を入れ替えが功を制して久々の予選突破から準決勝入り!!あるぞあるぞ!!この大一番を超えていくかぁ!!』


 古豪と呼ばれながら、メンバー変更により躍進を遂げたバスティオンのメンバーが、朗らかに手を観客に振り入場し、所定の位置へ並んでパーカッションは鳴り止んだ。


 続いては管楽器の厳かで雄大なる演奏と共に、別のゲートから鎧を纏った騎士達が整列して抜剣、交差してアーチを作り、そこを四人の騎士がゆっくりと歩いていく。


『前年優勝ブルーラウンズ!前年準優勝ギガンテスとの戦いを制して二連覇を目指す!注目は何と言っても次代の剣聖と呼ばれる"剣術無双"水戸景勝!!此度も剣聖を超えるという剣術を魅せるのかぁ!?』


 優勝候補に最も近いブルーラウンズが、そのままでも降らずに騎士の如く泰然自若と整列した。


 三つ目のゲートから、ハープの旋律と共に美女達がレッドカーペットまで態々投げて道を作り上げ、ドレスではない、それぞれの戦闘(バトル)衣装(コスチューム)に身を包み、優雅に彼女らは歩きだす。



『この展覧試合を彩る紅一点!ヴァルキュリア・クランが入場だぁ!!この遠い実況席からも分かるくらいに美人揃いだぁ!!勝利の女神は彼女らの事を指す!!』


 丁度ブルーラウンズの横に並ぶ形になり、互いに頑張ろうと礼をして整列するヴァルキュリア・クランのメンバー達。そしてハープは鳴り止み。


『はい、 TEAM PRIDE?どうぞーー』


 またやりやがった、この実況者。そして呼び出してまた、 TEAM PRIDEはゲートから出てこない。


『…………え?マジで逃げた?じゃあヴァルキュリアの不戦ーー』


 無論、そんなわけが無い!突如それは起こった!!それに気付いたのは観客の一人であった。


『お、おい見ろ!!空にマジックヴィジョンが映し出されているぞ!!』


 この世界の、荒唐無稽な映像技術マジックヴィジョン。それがシダトアリーナ上空へ大々的に展開して映像が流れ出す。


 そして現れたのは一文だった。


ーーQ.あなたの応援しているチームはどこですか?ーー


『バスティオンでしょ!、今年は優勝してもらいたいねぇ!』


『ブルーラウンズが今年も勝つよ』



『やっぱりヴァルキュリア・クランかな』


 街頭インタビューか、次々と人が変わりどのチームを応援するかと皆が答える。しかしあのチームだけは誰も言わない、そして文章が切り替わる。


ーーQ. TEAM PRIDEについてどう思いますか?ーー


『は?さっさとくたばっちまえって感じ』


『劣性召喚者が調子に乗んなよって思う』


『異物……ですよね』


 観客達もここまで来れば笑いだす、自虐ネタかと笑いが彼方此方にに巻き起こる中……。『異物』という二文字がゆっくりと大きくなると……。


 ーー異物……そう、我々は異物であるーー


『お!?おい何だ!?誰の声だ!!』


 実況のマティウスが驚くも、自らの声が観客に届いておらず、何事かとなる中で……この観客席に座る召喚者の中で、その声を出す者が誰かを知っていた為ざわついた。



 ーー決して混ざり合わぬ水と油、優性と劣性……出会ってはいけない、巡り合ってはいけないーー


 ーーならば何故、ならば何故……俺達を呼んだのだ、俺達を引き込んだ?ーー


 ーー嘲笑う為か?踏みつける為か?この世界ではお前達が不要だと、見下す為かーー


 ーーならば、ならば……これは侵略である、反逆である、我々は決して貴様らを許さないーー


 ーー見せてやろう、お前達が逃げて、目を背けてきた"本物"をーー


 ーーこれが……現実(リアル)だーー


  https://youtu.be/5aqPJ68Fjm0


 

 掻き鳴らされる電気を介したサウンド、そして最後のゲートから白煙が巻き上がった!そして鳴り響く躍動の音と共にスモークは晴れ、この馬鹿げた世界にまるで都合よくあった、自動二輪が4台並んで現れたのである!


 その一台が早速空ぶかしをして一気にギアを上げて、整列している他選手目掛けて突っ込んで行ったのだ。


「どけどけどけーーー!!はっはーー!!」


「嘘だろ突っ込んできた!!」


 人間、しかも現代人ともなれば自動車やバイク事故への恐ろしさは知っている。故に避ける行為は反射運動であった、いかに異能や加護を授かろうと、恐怖心が勝る!整列した誰かの声により3チームはバイクから遠ざかり、段差を駆け上がってバイクが展覧試合の石畳のリングに登った。


 バイクのスタンドを立てて、ようやく誰もがその姿を確認する。中井真也だ、中井真也が辺りを見渡し、確認したのを見て、残りの3台が悠々とリングへの道をゆっくりとバイクで走った。そしてそのまま石段に近づくと加速して乗り上げ、同じようにバイクを並べる。町田恭二、河上静太郎とそれぞれが中井と同じく並び立ち、最後に二人乗りだったらしい神山が、少しダボついたバイカースーツを着込んだ後ろに乗っていた女性、マリスの手を取り下ろした。


 参加選手全てが唖然とする中で、神山はマリスから預かった長い棒を持って何かを括っていた紐を取り外し、そして掲げた!


 さながら侵略後の領地に突き立てるが如く、たなびく旗には『TPFF』という荒々しさを感じるデザインの文字が描かれていた。


 これは侵略であり、蹂躙であるとばかりに呆気に取られた他チームを見下ろして、TEAM PRIDEは此度もオープニングを支配したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 煽りVも随分と派手だね。プレデターのごとく片っ端から食い散らかしていくんですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ