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8話 転生者クリハラ退治の始まりだ!

「ここかぁッ!」



 サトリマックスはクリハラの住む家(サトリマックス的には居城)に辿り着くやいなや、ノックもせず入り口を蹴り壊していた。


 侵入し、寂れたロビーで怒りに任せサトリマックスは叫ぶ。



 「出て来いクリハラッ! サトリマックスが成敗にやってきたぞッ!」



 シンカリからクリハラがいた事や、そこで戦慄するようななんやかんやがあった事を聞いて、サトリマックスは即座に行動した。


 最初はクリハラのパトロール先に向かったが時既に遅く、その際に遭遇してしまった魔物と何度も戦い、戦闘が終わった頃には夜になっており、町に戻った時に道歩いてる人からクリハラの居場所を聞いて、そしたら家に帰っている事が判明し、でもその人はクリハラ家の方向がわからなくて、なのでどうにか探し続けて、そしてやっとクリハラ家の場所がわかって、こうしてドアを蹴破る事ができたのは完全な夜になってからだった。



 「ううう…………せめてご飯食べて乗り込みたかったわ…………」



 シンカリアは数口でもご飯を食べてからクリハラ探索をしたかったのだが、サトリマックスが飛び出してしまったため付き合わざるを得なかった。転生者に関する事なので、無視してご飯なんか食べたら卒業に響く可能性があったのだ。


 それに、転生影響無能病(フラジャイル)を直に見てしまったモノとして、一刻も早く住民を正気に戻したいという正義感――――――――――――いや、同情もあった。



 「用心しすぎかな…………でも、学院にどう判断されちゃうかわからないし……………………これからは携帯食を持つようにしなきゃ…………」



 クリハラの家は庭付きの大きな家だった。手入れをしているのかされているのか、庭の芝生は綺麗に整っている。放置されてる気配は無く、ペットを放せば気持ちよく駆け回る事だろう。花壇は無いが、作ればさらに魅力的な庭になるはずだ。


 ちなみに家は見るからに新築だ。あれだけ住民が好意的なので、立派なモノを建ててもらったようだ。一人で住むには大きすぎる家だが、この広さが住民達なりの感謝なのかもしれない。例え転生影響無能病(フラジャイル)によるモノだったとしてもだ。



 「卑怯だぞッ! 姿を見せないとはッ! いっぱい夕飯食べてお腹いっぱいかッ!? そして、いっぱい食べたからお眠なのかッ!? だが、そうだとしても理解はしてやらんぞッ! 納得はしてやるがなッ!」



 「別に納得しなくていいでしょ」



 「いや、納得は大事だぞ」



 「そこで己の考えを主張されると困るんだけど…………」



 いきなり乗り込んで来たのでクリハラに卑怯も何も無いのだが、サトリマックスは挑発するように姿の無いクリハラに向かって叫んだ。そして、シンカリアからツッコミされる。



 「なんとまあ広い屋敷ね。一人で住んでるってのに………………これから増えてくのかしら。転生者はハーレム作るヤツ多いし」



 屋敷の内部は中央吹き抜けになっており、階段を上った左右にいくつも部屋がある。一階の左右にもいくつかドアを確認できるため、その奥にも部屋があるはずだ。クリハラを探すのに中々骨が折れそうな広さである。



 「出て来ない…………という事はもしやッ!? もう近くにいるのかッ!? 姿を消しているだけで周囲にいるのではッ!? ならば、やる事は一つッ! 奇襲を受ける前に居城を潰すべきッ!」



 サトリマックスは二階方面へ銃を構える。



 「まてまてまってまってッ! 別に屋敷を破壊する必要はないでしょうが! 私を巻き込むのはやめなさいよッ!」



 大魔法の類いならともかく、いくらなんでも銃でこの屋敷を完全破壊する事は難しい――――――――――――――はずだが、サトリマックスには何だか本気でやれそうな気配がある。


そのため、慌ててシンカリアはサトリマックスの行動を止めた。



 「しかし、ヤツはいるんだぞッ! この屋敷の何処かにッ!」



 「それと巻き添えをイコールにするのはやめなさい。私は不要なダメージを負うのゴメンなの」



 「くっ…………宿敵がそばにいるというのに残念だッ! なら、ヤツを直接撃つ事敵わぬならッ! 姿を見せないのならッ! せめて、戻り馴れた場所や眠り馴れた場所を失わせたかったッ! 暖かいご飯を食べられる場所だけ残してやりたかったッ!」



 「いや、私を巻き込まなきゃいいだけだから。私が出てった後に破壊してくれればいいから。あと、復讐するって言ってるワリには暖かいご飯食べられる場所は残すのね。なのに屋敷は破壊するのね」



 「自分は復讐したいと思っているだけで復讐鬼では無い。ご飯を食べられる場所くらい残すのが心ある人というモノだ。そして、その場所とは町中だろう…………ハーレム万歳とはいっても、ヤツは独り身のはずだからな…………料理を家で一人作って食べるなどしないはずだ。よって屋敷は破壊しても問題ないと言うわけだよ」



 「あ、そう………………つか、アンタってテンションがコロコロ変わるわよね…………」



 かなり偏見が入っており理解も難しい内容だったが、シンカリアはクリハラの擁護に興味無いので黙っていた。



 「あと、何もかも復讐に染まった行動をすれば、いつまでも終わらない対立を続けてしまう。それは悲しい。だから自分は残すのだ…………暖かいご飯を食べられる場所だけは…………」



 「いや、ただの自分ルールで悦に入られても………………」



 シンカリアは別にクリハラの屋敷破壊自体を止めて欲しいワケでは無い。巻き込まれなければいいだけである。



 なので、シンカリアは屋敷の外に出てサトリマックスに任せようとしたのだが――――――――――それは少し遅かった。



 「ん? 誰か来てるの?」



 さすがにあれだけシンカリアとサトリマックスが騒げば誰でも侵入者に気づくだろう。


 姿を現したクリハラが、特に警戒もせず二階からロビーへ降りてきた。



 「――――――!? 見つけたぞッ!」



 その宿敵の姿がサトリマックスの視界に入る。



 「クリハラぁぁぁぁッ!」



 サトリマックスがクリハラの姿を確認してから刹那、問答無用の銃乱射開始された。



 「ハイハイハイハイハイハイハイハイィィィィィ!」



 目の前に敵(復讐したい相手)が現れたなら、まずは速攻で手を出すのがサトリマックス流のようだ。こういったシチュエーションでよくある、罵り合いや煽り合いは起こらなかった。


 屋敷内の沈黙は銃撃音で引き破られ、その弾丸の嵐はクリハラへと向かう。



 「つか、撃つんじゃないってコラぁぁぁぁぁぁ! 私を巻き込む撃ち方をするなぁぁぁぁ!」



 「ハイハイハイハイハイハイハイハイハイィィィィィィィ!」



 シンカリアの爆破魔法(ブラスト)が遊びと思える威力がサトリマックスの銃から放たれ続ける。シンカリアの直感は当たっていたようで、常識的な火力をサトリマックスの銃は大きく上回っていた。


 その証拠に屋敷の壁や天井や主柱等々が、豆腐に指を突き入れるような脆さで破壊されていき、サトリマックスの装填技術(リリード)がハイレベルなのもあって、絶え間なく破壊が続けられる。



 「な、なんだとッ!? そんなはずがッ!?」



 だが、これはおかしい。あり得ない事だ。


 なぜなら、サトリマックスの弾丸は全てクリハラへ向かっているからだ。


 乱射しているといっても、その弾丸を四方八方に撃ってるワケではない。しっかりと狙いを定めている。照準は完璧にクリハラを捉えているのだ。



 「命中していないだと!?」



 だが、結果としてサトリマックスの弾丸は全てクリハラから外れている。クリハラが無傷で、周囲のみ破壊されている現状が何よりもの証拠だ。


 疑問しか無い結果だが――――――――――その理由はすぐに判明する。



 「え? 俺、また何か驚かせるような事したの?」



 いつの間にか、薄い虹色のオーラが包み込むようにクリハラを纏っていた。


 このオーラがサトリマックスの弾丸からクリハラを守っており、弾かれた弾丸は跳弾となって屋敷内を破壊したのである。



 「あ、それ銃か。なるほど。何してるのか今理解したよ。俺に向かって撃ってたのか」



 ちなみにクリハラは突っ立っているだけだ。目の前を羽虫が横切っても危機感を覚えないのと同じで警戒すらしていなかった。むしろ銃撃されている事に気づいていない反応そんなワケないがである。



 「ステータスオープン!」



 突如、クリハラは謎の単語を叫んだ。



 「ふーん、銃撃士ってヤツなのか。この世界っていろんな職業があるんだなぁ………………お、ステータスが意外と高いな。その辺の冒険者達の何倍も強いよ。俺じゃなきゃ勝てない能力値だなコレ」



 クリハラは顔を右に向けて何やら独り言をブツブツ呟いている。その方向には何も無いのだが、どうやらクリハラには何か見えているようだった。



 「あー、これがステータスオープンってヤツね。転生者がよく使うって噂のアレか」



 「む!? 知っているのかシンカリア君!?」



 どうやらシンカリアにはクリハラが何を見ているのかわかるらしい。クリハラに対する反応がサトリマックスと比べて落ち着いていた。

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