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3 僧侶が仲間になった。

楽しんでもらえたら幸いです。

「財田、すまんっ!!」


俺の声に、財田が声を張り上げる。


「・・・アッシュ!!一度回復しますよ!!『仏の慈悲(ほとけのじひ)』!!」


僧侶というより妖しい魔術師にしか見えない灰色のローブを着ている財田がスキルを唱えると、財田の頭上に阿弥陀如来らしき姿が輝きながら現れて、あらしの身体が虹色に輝いた。


「おおっ!!すげー、なんかいろいろパワーがみなぎるー!!」


モンスターと血を流しながら戦っていたあらしも、さすがに自分の身体が光輝いて身体の異変に気付いたようだ。身体が回復しても、中古な防具は血まみれである。


「『水槍(みずやり)』!!」


動きの止まったあつしに襲いかかろうとしたモンスターを俺のスキルで阻む。


「おっ!あらし、サンキュッ!!」


あつしはこちらを向いてにかっと笑うと、また剣を振り回しながら敵に向かう。どういうステータスの振り方をしたのか、やたらの力技で乗り切ろうとする。


「ラシュは大丈夫そうですね。・・・アッシュはこちらでもやっぱりああなんですねぇ。」


「おれは、財田の僧侶の方が驚きだけどな。なんだよ、あの回復力。支援(バフ)もあるよな?」


「ええ。仏の慈悲ですから、いろいろ回復上昇するんですよ。というか、君たちはオンラインゲームをしているんですよ?ちゃんとプレイヤーネームがあるんですから使ってください。『黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ) 』!」


あつしが剣士として前線で防衛してくれるので、おれたち後衛はスキルをとばす傍ら話をしていた。


「いや、必死だと忘れる。『水槍』っていうか、あれ!落とし穴かよっ!」


財田が唱えたスキルで次々に落とし穴ができていき、敵がすっぽりと落ちていく。なんて楽なんだ。ただ、せこい気がする。正々堂々戦っているあつしの方がましだと思う。まあ、相変わらず、剣の使い方が下手でつぶしたり、たたいたり、ときどき斬れたりでしかないけど。


「あつしにはアッシュ、あらしにはラシュって名前をつけたんでしょう?ここでは、僕のことはサイカって行って下さい。身バレはネットゲームでは致命的ですよ。『天罰(てんばつ)』」


「わかったよ。サイカ。なあ、今のスキル何したんだ?」


戦場に変った様子がなかったので、サイカに聞いてみた。


「ああ、黄泉比良坂に落ちたやつらに天罰が下ってるだけだから見えないんです。」


「え?つまり?」


アッシュが最後の一体を倒したところで、サイカのセリフを尋ねる。


「つまり、落とし穴に棘を作って串刺しにしました。」


「・・・えげつねーな。」


にこにこしながら話してくるサイカに、戦慄する。だって笑顔で灰色のローブを着た白髪の細目の男が串刺しとか言ってるんだぞ?やべーやつでしかねーよなぁ。


「ゲームですからね。」


「まあ、味方でよかったよ。本当。」


ほうっとため息をついていると、血まみれになったアッシュが辺り一面のモンスターのドロップ品を集めて回っているのを眺めた。


「でも、ラシュ、君は魔法剣士にしては前にでないんですね。」


僧侶からすれば確かに俺の魔法剣士は中距離型のプレイヤーだと思うけど、そればかりでポジションを決めたわけではない。


「いや、アッシュとのコンビネーションしようにも、危なすぎて近寄れないんだよ。うっかり近づくとこっちが逆にやられてしまいそうになるから遠目でしか剣が使えないんだ。」


「バーサーカーですか。」


「しかたねーだろ。アッシュがあそこまで剣の使い方が下手とは思わなかったんだよ。」


俺の言葉に、うんうんと頷いていたサイカが目を虚空に向ける。


「しばらくはアッシュの剣術の腕前の上達が必要ですかねぇ。・・・ん?オートアシストシステムは使っていないんですか?」


「え?何ソレ?」


サイカの単語に俺の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。そんなの、あったかなぁ。


「あー、アッシュもラシュも最後までチュートリアルの話を聞いていませんね?初めてこのゲームをする方や、運動音痴みたいな人にとって、自由に身体を動かすことが難しい場合があるんです。そのために、規定の身体の動きを勝手にサポートして動かしてくれる機能があるんです。それが、オートアシストシステムです。アッシュはオートアシストシステムを使う事で、正しい身体の使い方や剣の使い方を学んだ方がいいですね。」


「あー、なるほどな。そのほうが身体で動きが覚えられるからアッシュにはうってつけだな!」


財田の話を聞いて納得した俺に、財田が生暖かな目を向けてくる。


「なんというか、二人とも相変わらずですねぇ。アッシュは金髪剣士、ラシュは紺髪魔法使い。見た目が違うからなんだか違う気がしましたが、いつものやりとりでなんだかほっとしました。」


「んー?そうか?まあ、サイカが安心したならいいけどさ。・・・とりあえず、あいつどうにかしてやってくれる?」


「え?」


俺と話しているうちにサイカの視界から消えただろうアッシュの最後の姿を俺は見ていた。そう、アイツはサイカがつくった落とし穴の魔物のドロップアイテムを取ろうとして落ちていた。片手だけ穴の縁をもって耐えてる。


「アッシュー!なんで落ちてるんですか?!」


サイカの叫びを聞きながら、俺はアッシュのもとに走る。


「ん-、なんかやらかすとは思ってたんだけど、綺麗に落ちていったからなぁ。ゲームだから別に気にならないしな。」


のんびりとアッシュに手を伸ばす。


「あらし、助かった!」


アッシュが縁を持っていない逆の手を伸ばしてくるので、それをしっかりと掴むと・・・


「うわあっ!!」


俺の視界が反転した。


「うえぇ?!」


「『千手の導き』!」


ふわっと身体が浮いて、身体が落ちていきかけたとき、俺の身体とアッシュの身体が金色の大きな腕に捕まれた。


「お?え?なんだ?」


俺がきょろきょろしていると、アッシュの喜んでいる声が聞こえる。


「うおー、すげーな、財田!!千手観音が助けてくれたぞ!!」


そうこうしている内に地面に下ろされて、千手観音が消えていく。


「サイカ、助かったー!!」


「ラシュ、ゲームの世界だからこそ、君とアッシュの体力差は開いたと思っておいてください。いつもなら支えられる体重も、こちらの剣士のステータスと魔法剣士のステータスではどうしても剣士の方が重いんですよ。引き上げるには数名必要ですから、覚えておいてください。


「・・・いや、はっきり言ってそこまで考えてなかった。」


「まさか、俺を助けようとしてあらしまで落ちるなんてなー。」


あははと笑う俺達を見て、サイカはがくりと肩を落とした。


こんな感じで続きます。

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